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来春提言へ現状共有/ パンデミック特別検討会/土木学会全国大会in中部オンライン
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【社会・インフラ転換】
土木学会(家田仁会長)の「2020年度土木学会全国大会in中部オンライン」の2日目に当たる8日には、家田会長自らが委員長を務める「パンデミック特別検討会」が開かれた。先に公表した「COVID-19災禍を踏まえた社会とインフラの転換に関する声明」に基づいて、各ワーキングループなどが進めている議論の現状を共有した=写真。
冒頭、あいさつした家田委員長はコロナ禍の長期化によって「当初は想定していなかった、新しい(社会的)事象が分かってきた」とし、同検討会が来春にもまとめる提言には広範な視点での分析が求められるとの認識を示した。
続いて、衛生工学や感染症と複合した自然災害、建設産業・建設生産システム、暮らしとモビリティーなどのテーマ別に、産学の有識者が研究、調査内容を発表した。
金沢大学の本多了氏は「下水監視による感染症流行検知の展望と課題」と題し、下水疫学調査を活用した新型コロナウイルス感染症の感染拡大予防策を説明した。
下水疫学調査では、下水中の病原微生物などを監視し、下水集水域の健康情報を収集する。少ない検体数で一定の地域の感染状況を把握できるとともに、集計が不要で個人の感染の有無を特定しないことから、「(特定の)地域の流行状況の把握と早期検知、感染症対策の効果検証、病院や介護施設、学校などのクラスターの検知への応用が考えられる」と紹介した。
京都大学の大西正光氏と大成建設の太田誠氏は、建設現場と生産性に関する実態と改善の方向性を解説した。
緊急事態宣言下で建設工事を継続することについて、一般から「工事を継続する必要が本当にあるのかという声が聞かれた」と紹介した。ただ、建設業がエッセンシャルワーカーである以上、万全の感染症対策を講じながら、「アフターコロナの『シビルニューノーマル』を構築しなければならない」と強調した。
呉工業高等専門学校の神田佑亮氏はコロナ禍による減収で危機的状況にある交通・モビリティーの改善に向けて、公共交通が国民の生活、経済活動を支える重要なインフラであることを前提とした科学的根拠に基づく対策と需要回復、旅客・物流事業のサービスを継続するための迅速かつ多様な支援などが必要との考えを示した。
九州大学の塚原健一氏は2020年7月豪雨に基づくボランティア派遣の状況などを説明した。甚大な被害を受けた熊本県では、コロナ禍の影響で県外からのボランティアの受け入れを制限していたため、ボランティアが不足したが、熊本大が独自でボランティア参加希望者にPCR検査を実施。費用は同大が負担し、検査作業は同大付属病院が担当したことを紹介した上で、有事のボランティア受け入れのモデルケースになり得るとし、「こうした対応を公的に支援することが必要」と述べた。
神戸大学の小池淳司氏は「国土・インフラ政策への提案」をテーマとした。「社会基盤整備のストック効果の定義と計測手法、つまり経済的効率性と人間の権利を満たすという側面から議論を進めている」と前置きした上で、交通事業者への補助政策、地方と地域間のインフラ政策の充実、資源制約下での計画・評価制度、長期ビジョンの策定が求められるとの認識を示した。
また、「地方も大都市も、ともに人間らしい生活が送れる状態につくり変えられてこそ、人々は自分の住む町や村に誇りを持ち、連帯と協調の地域社会を実現できる」と指摘。日本各地で同じ便益と発展の可能性が見いだせる結果が郷土愛につながり、「祖国・日本への限りない結びつきが育っていくに違いない」と加えた。
最後に総合討論で、家田委員長は「コロナ禍による不確実性は未知とも読み取れる。(未知に対峙する上で)ハード、ソフトの両面から垂直展開(質の向上)の視点が必要ではないか」と述べた。
同委員会では「ポストパンデミック時代」に向けて、積極的なパラダイムシフトの推進と「防疫」社会の具体的実現に向けた新しい認識と提言をまとめ、安全で強靱な社会づくりに求められる質的な「転換」を幅広い視点から提示する。
残り50%掲載日: 2020年9月10日 | presented by 建設通信新聞