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  • 誤算の行方・CCUS財源問題 下/登録行動の喚起は運営責任/利用者の主体的活用も必要

     料金改定が合意されたことで、建設キャリアアップシステム財源問題は開発費用の追加負担(出捐金)を残すだけとなった。運営側からの追加負担の要請は、建設業団体が「最初で最後の負担」との約束の下、当初のシステム開発費用(10億5000万円)を捻出した過去があるだけに、「運営体制に対する不信感が拭い去れない」(ある団体の役員)結果を招いている。

     

     国土交通省は当初のシステム開発費用以外に、2019年度だけで12億6000万円、20年度にはさらに7億4000万円の追加開発費が必要になると試算、団体側に計20億円の出捐を要請した。

     

     その後、20年度の開発分を改正建設業法の対応などに限定することで、16億円まで圧縮するとともに、追加開発費は「当初に行われておくべき初期開発投資に相当するもの」と説明し、団体側に対して追加負担への理解を求めた。

     

     一方、各団体は計画・見通しの甘さが運営悪化を引き起こしたという疑念に、料金改定の過程で生じた試算(数字)に対する信頼性の低下が加わったことで、料金改定にも増して、追加出捐には慎重な姿勢をみせる。

     

     そうした状況下で、日本建設業連合会は先んじて追加負担額の半分に当たる8億円の出捐を表明。全国中小建設業協会も出捐を容認する方向で調整を進める。他団体の動向は今後明らかになるが、料金改定と同様に「システム存続のためには、結果的に協力しなければならない」ことが団体側の共通認識である以上、出捐金についても自ずと結論は見えてくる。

     

     「1度きりの出捐」を反故にされた団体側の立場を考慮すれば、運営者としては「最後の出捐」を確約しつつ、再発防止の徹底を念頭に置いた体制構築が求められる。建設キャリアアップシステム運営協議会運営委員会を3カ月に1回のペースで開き、システムの収支状況などをフォローアップしていくことは、その第一歩と言える。

     

     また、団体側は技能者・事業者登録数とカードタッチ数の目標設定、公共工事の積算でシステムにかかる経費の可視化、「建設キャリアアップシステム義務化モデル工事」の自治体への導入などを料金改定、追加出捐に合わせて要望している。負担を受け入れる交換条件としてとられがちだが、システムの普及促進と運営安定化のための前向きな提案と言えるだけに、運営側はこれらに適切に対応し、利用者のシステム活用行動を喚起、誘導することも新たな責務となる。

     

     ただ、運営側の今後さらなる努力によって団体側が抱く不信感を払拭(ふっしょく)できても、それだけでは持続可能なシステム運営は実現しない。システムの財源問題を通じて、運営側は過去の責任を認め、新たに生じた責務と向き合う意思を示している。ある団体の幹部が「運営者側だけでなく、利用者側にも一定の責任が課せられることを忘れてはならない」と話すように、団体側にも申し合わせ事項に従ってより主体的にシステムを活用する責任が生じる。

     

     それぞれの責任を全うし、“全員体制”が構築できたときに禍根が取り除かれ、今回の誤算を建設技能者の処遇改善、建設業の持続的な発展という勝算に変えていくことができる。

     

    (中川慎也)

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    掲載日: 2020年9月14日 | presented by 建設通信新聞

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