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  • 建設論評/抗菌・抗ウイルス

     新型コロナウイルス対策は、いまや世界全体の喫緊の取り組みとなっている。このような環境下において、建築的にできることは何であろうか。

     

     まずは、細菌とウイルスの違いを理解しておく必要がある。細菌は細胞を持ち自ら増殖できるのに対し、ウイルスは細胞構造を持たず細菌よりも小さく、自力では増殖できず、人や動物の細胞に侵入して増殖する。それゆえ、抗菌・抗ウイルスはその仕組みや構造が異なることになる。片方には有効でも、もう片方には効かないとか、両者に有効とか、きちんとした見極めが求められる。

     

     抗菌の定義は、JIS(日本産業規格)において、加工されていない製品の表面と比較し、細菌の増殖割合が100分の1以下(抗菌活性値2以上)である場合、その製品に「抗菌効果」があると規定している。

     

     エスカレーターの手すりに「抗菌」という表示を見るが、あくまで菌を増やさないようになっているだけであり、いわゆる「殺菌」とは違うらしい。繊維評価技術協議会の抗ウイルス加工「SEKマーク」も、感染・病気の発症を抑えるものでもなく、「繊維上のウイルスの数を減少させる効果がある」ということだ。

     

     そこで、建築的な抗ウイルス対策では徹底してウイルスを減らすよう、住宅やオフィスの仕様を変えることが求められる。

     

     建築的に、抗菌・抗ウイルスともに作用する材料として有望なのは「漆喰(しっくい)」と「光触媒」だ。

     

     「漆喰」の主原料が消石灰であることから、水に混ぜると強アルカリ性となり、弱アルカリ性までのPH領域でしか生きられないウイルスや細菌の対策に有効という。くしゃみや咳などの飛沫も、漆喰壁が吸収して消石灰が溶けることで、強アルカリ性化し、ウイルス増殖を防ぐ仕組みだ。

     

     「光触媒」もウイルス対策には有効だ。光エネルギーにより、酸化チタンや焼成ホタテ貝粉末などの表面に活性酸素が発生し、これにより細菌やウイルスを分解して有効に機能する。

     

     さらには、よく言われる「非接触、3密回避、換気の徹底」も建築的な対応が求められる分野だ。

     

     例えば、接触機会の多い「手すり・ドアノブ」への抗ウイルス機能付き材料の適用、さらには、そもそも接触せずに住宅扉やオフィス扉を開けることができる「あと付けのドア自動開閉装置」の導入も進めるべきだ。また、これまでのタッチパネルから赤外線センサーやホログラフを利用したタッチレスへの移行も進む。

     

     顔認証とエレベーターシステムを連動させ、自動でその人の居住階にタッチレスで行く仕組みは既に実現している。さらには、紫外線で空気中に浮遊している菌やウイルスを不活化させる空気殺菌装置機能も一般的になろう。

     

     現状、建設業界における新型コロナ対策は、自社の社員や現場の対策が優先されている。しかし建設業界全体で、建築や施設そのものの設計標準仕様を、ウイルス対策仕様に 早急に見直す必要があるのでは なかろうか。近い将来、漆喰技術が 標準になる日も近いかもしれない。(司)

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    掲載日: 2020年9月14日 | presented by 建設通信新聞

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