当サイトについて 採用ご担当者様
会員登録はこちら 求人検索

建設技術者向けNEWS

建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!

  • 復興係数 復興歩掛 継続が焦点/交通脆弱でコスト増懸念/熊本県豪雨災害

     2016年の大地震から復興を遂げつつあった熊本県をことし7月、豪雨災害が襲った。県内全域で土砂災害や河川の氾濫が発生し、特に球磨川とその支川である川辺川の合流点付近から球磨川中流部では多数の浸水被害や家屋倒壊が発生。発災直後から地元建設企業が中心となって応急復旧を確実に進め、今後は本格的な復旧・復興へと段階が移る。そこで焦点となるのが、熊本地震の被災地域に適用してきた復興係数・復興歩掛の取り扱いだ。熊本地震に起因する施工効率の低下などに改善が見られれば、復興係数などの措置は役割を終えることになる一方で、新たな災害である20年7月豪雨による施工への影響が懸念されている。

     

     復興係数は、東日本大震災の被災地域である岩手県、宮城県、福島県の3県に対して14年2月から導入。工事量の増大に伴う資材やダンプトラックの不足により作業効率が低下し、直接工事費だけでなく間接工事費についても現場の実支出が増大したことから、運搬費などの共通仮設費と労務管理費などの現場管理費を補正している。

     

     熊本県における 復興係数は、17年2月から適用を開始した。共通仮設費と現場管理費を当初、それぞれ1.1倍に補正。同年11月には交通条件の悪化が著しく、不調・不落の発生リスクが高い状況にあった阿蘇・上益城地域を対象に、共通仮設費を通常の1.1倍から1.4倍に割り増すエリアを限定した引き上げ措置を実施した。

     

     作業効率の低下に対応した復興歩掛は、土工の1日当たり標準作業量を20%低減する補正を導入している。

     

     実態的なコスト増加に対応する形で、適切に予定価格を積み上げることができる復興係数と復興歩掛による施工確保対策は、早期復旧・復興のための円滑な施工の確保に大きな役割を果たしてきたことは間違いない。熊本県からも導入以降、毎年度、継続が要望されてきた経緯がある。

     

     ことし1月、国土交通省へ要望に訪れた蒲島郁夫熊本県知事は「1日も早く被災地の安全・安心を取り戻すためには、実勢を踏まえた適正な工事価格の設定が必要だ」と力説。赤羽一嘉国交相は「被災地の実態に合わせて前に進めるのが使命と責任。しっかりと継続させていただく」と応じていた。

     

     20年7月豪雨の被災地域をみると、熊本地震と同様、交通アクセスの悪い地域に大きな被害が及んでいることが分かる。八代市から芦北町・球磨村を通り人吉市に至る国道219号などは球磨川沿いを走るルートで、豪雨により球磨川にかかる10橋が流出するなど交通が寸断された。

     

     国の権限代行により8月11日に啓開ルートが整備され、仮復旧できたが、いまだ交通の脆弱性リスクは高く、運搬コストの増加は否めなない。今後の本格復旧段階では、不調・不落として円滑な施工の支障となる懸念がある。

     

     21年度以降の継続の可否あるいは新たな復興係数・復興歩掛の適用などいずれにしても、被災地の実態を踏まえた対応が求められる。

     

     災害時の対応強化を盛り込んだ改正公共工事品質確保促進法(品確法)の運用指針にも「市場の変化を的確に把握し、必要に応じて復興係数や復興歩掛を設定または活用する」ことが明記されており、今後の復興係数・復興歩掛の行方を注視する必要がある。

    残り50%
    ログインして続きを読む 会員でない方はこちらよりご登録ください

    掲載日: 2020年9月15日 | presented by 建設通信新聞

前の記事記事一覧次の記事