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  • 連載・次世代建設経営戦略研究講座(2)~激変の時代に向け経営戦略の再構築を考える~

    【寄稿・次世代建設産業モデル研究所所長 五十嵐健氏/菅政権の目玉政策、デジタル庁への期待/ITを全体最適型に統合する好機】

     

     菅新政権が始まったが、その政策の目玉はデジタル庁の創設だという。いよいよ5G(第5世代移動通信システム)時代、つながる情報社会の時代が到来する。建設産業でもi-Constructionの流れが加速し、生産性向上や国土強靱化が飛躍的に進むことが期待される。

     

     一方、建設業における課題としてはその足もとで、建設キャリアアップシステムの料金改定やBIM/CIMの実装推進などがある。

     

     この講座の4・5月の連載でも述べたように、日本の建設産業のデジタル化は国内の実情に合わせて発展してきたため、世界の流れから見ると跛行した進化をしており、いわゆるガラパゴス化の状態にある。確かに菅新首相が言う、海外に比較して高い携帯電話などの利用料金も問題だが、日本における実務面での利活用の幅を広げるためには、海外との規格の統一や実装面での推進策の一層の強化が重要である。

     

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     7月22日のこの欄で述べたように、日本のITシステムはそれぞれの現場で作業効率や精度向上を目的に開発されてきたものが多い。これに対し欧米のITシステムは、企業活動全体の生産性や精度向上を目的につくられている。いわば日本のシステム開発が現場からのボトムアップ方式で進められてきたのに対し、欧米型はトップダウン方式でつくられてきた。

     

     AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の活用が進む5G時代には、全体最適型の欧米システムの方が産業効率の面から効果が高まる。その結果がGAFAMの成長のスピードに現れている。

     

     今後は世界規模でのビッグデータの解析による使用価値向上時代を迎えるが、そうしたシステムの優劣がコロナ過での緊急施策の実施によく表れている。中国や韓国などアジアの近隣諸国の対応は迅速なのに対し、日本のそれは各所に目詰まりが生じ、その対応に担当者は不眠不休の努力をしている。

     

     こうした事例はBIM/CIMの開発・活用にも表れている。現在日本のi-Conや働き方改革の推進は、企業や部門での開発・活用が基本になっているため、設計や生産の各段階での生産性は向上しているが、産業トータルでの生産性は欧米より劣る。さらにその活用効果が期待されるストック利活用分野では、内外格差がさらに著しい。

     

     先日、台風10号の予想および避難警報発令の際に気象庁と国交省の合同記者会見が開かれ、その際映像モニターを多用した広報活動が行われた。これを見ると、河川氾濫や道路被害の現状や予想が具体的にわかり、かつ細部にわたっているため、対象地域の住民が具体的な行動を起こす際の参考になることもわかった。幸い今回の台風では大きな被害には至らなかったが、今後の防災活動への貢献が期待できる。

     

     個々の要素技術やシステム開発を見ると日本の技術水準が劣っているわけではなく、むしろ進んでいることの方が多い。日本の遅れは、まさに日本型経営の特徴である全員参加型の経営風土にあり、全体最適とスピードを重視するシステム統合を目指すためには一段目線を挙げた視点でのシステム構築が必要になる。

     

     そうした人材は日本にも多くいる。その人材が1つの体制に結集し、思う存分腕を振るうことで状況の改善を図るためには、マネジメント層によるシステム開発や利活用に関する全体システムの指示・指導が重要になる。要は全体を俯瞰してマネジメントを行う人材が必要になるがそれもすでに育っている。新政権によるデジタル庁の構想が固まれば順調に動き出すだろう。

     

     それによって国土交通省が進めているデジタルインフラであるBIM/CIMの構築が進むだけでなく、i-Conの流れが加速し、生産性向上や国土強靱化が飛躍的に進むことが期待される。今後が楽しみである。

     

     こうした状況に鑑み、早稲田大学理工学研究所では春に予定していたBIMによる建築生産と施設運用の高度化に関するシンポジウムの10月開催を急きょ決定した。その詳細、参加方法については本紙9月29日付2面を参照いただきたい。

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    掲載日: 2020年9月30日 | presented by 建設通信新聞

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