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変革の時機・制度改正を読み解く〈改正建設業法編〉1
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【“働く人”処遇改善が焦点/担い手確保へ新3K実現/長時間労働是正を明確化】
10月から建設工事や建設業に関する具体的なルールが大きく変わる。2019年の通常国会で成立した改正建設業法の大部分の規定が施行となることに加え、建設業退職金共済制度(建退共)の電子申請方式の試行が開始される。働き方改革や生産性向上を軸に進む制度改正は、短期的には時間外労働の罰則付き上限規制が建設業に適用開始されることへの対応だが、中長期的には人口減少下の国内における担い手の確保・育成を見据えたものだ。規制の強化も緩和も、建設業で働く人の新3K(給与・休暇・希望)の実現を目指したものであり、企業はこの時機を捉え、自らを変革しなければならない。
19年の通常国会で、建設業法を含む、公共工事品質確保促進法(品確法)、入札契約適正化法(入契法)の改正が成立し、「新・担い手3法」が制定された。前回、14年の担い手3法が歩切りの根絶やダンピング(過度な安値受注)対策の強化など事業者が適正な利潤を確保できる環境整備に重きを置いていたことに比べ、今回は“働く人”の処遇改善をターゲットとした制度改正となった。
一般論で言えば、就業者の長時間労働の是正は、企業努力で成し遂げる取り組みだ。しかし、発注者の事情に左右されることが多い建設産業の特性や公共工事などで年度末に工期が集中することが多いこと、災害対応など地域の守り手としての期待があることなどを理由に、今回、政策による働き方改革の後押しを図った。
その最たる例が、工期の適正化へのアプローチだ。公共工事については、改正品確法で発注者の責務として適正な工期設定や施工時期の平準化が必要であることを明記。あわせて、改正入契法によって自治体などの状況を“見える化”し、他省庁も巻き込んで取り組みを促進できるスキームを整えた。
また、改正建設業法では、著しく短い工期による請負契約の禁止規定を創設。違反者を勧告・公表できる規定を設け、民間の発注者も含めて建設業で働く人の長時間労働の是正が必要であることを明確に打ち出した。元請けなど建設業者も発注者になるため規制の対象で、工期ダンピングなど長時間労働の上に成り立つ受注競争を認めない姿勢を鮮明に示している。
社会保険加入の許可要件化や建退共の電子申請化と公共工事での履行強化(21年度から)も同様に、保険や退職金など労働者が安心して働ける基礎となる環境整備を企業に要請している。
人口減少、少子高齢化、デジタル化の進展などいずれの側面から見ても、優秀な人材の獲得競争はすべての産業の最重要課題となっている。企業の競争力の源泉である「働く人」を生かす企業を伸ばし、不適当に扱う企業は退場してもらうというメッセージを理解し、制度改正を変革のチャンスにできるかが今後の転機となることは間違いない。
残り50%掲載日: 2020年10月1日 | presented by 建設通信新聞