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変革の時機・制度改正を読み解く〈改正建設業法編〉3
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【建設業の働き方改革推進の象徴/工期適正化に2つのアプローチ/産業界の意見集約で共通指針に】
改正建設業法で焦点となったのは工期に関する位置づけだ。1つは著しく短い工期による請負契約の禁止規定、もう1つが中央建設業審議会で作成した「工期に関する基準」だ。いずれも、コストと同様に工事の品質を大きく左右する工期の適正化が目標だが、そのアプローチの違いを理解する必要がある。
著しい短工期の禁止は違法な長時間労働を前提とするような受発注者間、元下間の請負契約の締結を禁止する規定。この規定の趣旨は、現場で働く人の犠牲の上に成り立つような工期短縮は認めないという不良・不適格業者排除の姿勢を示すものだ。
他方、「工期に関する基準」は処分のための基準ではない。建設工事での適正な工期を確保するために必要な事項について、中建審にワーキンググループ(WG)を設け、学識者、公共・民間の発注者、元請け、下請け、行政など建設産業に関わるすべての者の意見を集約した“共通指針”と言える。
作成に至る過程のWGでは、発注者の責務についての議論が白熱した。民間発注者の立場を代表する不動産協会は「発注者は適正な工期かどうかを確認する能力もなく、工期について受注者が提案したり、工事請負契約において合意した以上、特別な事情のない限り適正な 工期であると理解せざるを得ない」との主張を展開。古阪秀三座長は「誰かに頼むというのは発注者の責任であり、価格は発注者が決める。工期も発注者が決めるということが本来」と説明した。
これに対し、不動産協会は「ゼネコン側にも断る自由がある。発注者側が一方的に決めているというのは、昨今の請負工事契約締結における実態には必ずしも合っていない」と応じたが、古阪座長は「発注者が能力があるとか何とかじゃなく契約上、発注者がイエスと言わない限り、仕事はできない」と断じ、発注者にも工期の適正化に負うべき責務があることを結論付けた。
議論を踏まえ、工期基準には「公共工事、民間工事を問わず、建設工事の請負契約を締結するに当たっては、適正な工期を設定できるよう、契約の当事者が対等な立場でそれぞれの責務を果たす必要がある」ことが明記された。
もう1つの争点は、元下間の問題だ。受発注者間で当初、適正な工期が確保されていたとしても、ある工程の作業期間が短くなることは考えられるケースだ。WGでは、後工程の職種から「前工程が遅れたなら、工期を延ばしてほしい。工期が延ばせない時は適切に契約変更しなければならないとしてほしい。変更ができないと、仕上げ工程の長時間労働で対応している」としわ寄せの問題が訴えられた。
工期基準には「下請契約に係る工期の適正化、特に前工程の遅れによる後工程へのしわ寄せの防止に関する取組等を行う」ことなどが工期設定において受注者の果たすべき責務として規定された。
工期のすべての問題を短工期の禁止規定と工期基準で対応できるわけではないが、「適正工期の確保」の位置付けが明確に示された意味は大きい。受発注者、元下の各者が協力し合って建設業の働き方を進めることの象徴として掲げられた。
残り50%掲載日: 2020年10月5日 | presented by 建設通信新聞