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  • 変革の時機・制度改正を読み解く〈改正中退法編〉5

    【確実な掛け金納付を実現/キャリアアップと連携で相乗効果/カギ握る技能者登録の進捗】

     

     1日から改正中小企業退職金共済法(中退法)が施行され、建設業退職金共済(建退共)制度に電子申請方式が追加された。インターネット上で建退共掛け金が納付できるため、共済証紙の受け渡しや共済手帳への貼り付けが不要となる。従来の証紙貼付方式で課題だった煩雑な納付手続きの大幅な軽減が見込まれることから、確実な掛け金納付と建設労働者が受け取る退職金の充実が期待される。

     

     証紙貼付方式では、元請業者が金融機関で共済証紙を購入し、建設労働者を雇用する下請業者に直接交付する。その上で、下請業者は各労働者の就労実績に応じて、共済手帳に証紙を貼り付ける。

     

     ただ、手帳を持たない労働者が多いことや証紙の受け渡しや貼り付けに伴う事務負担、下請業者が元請業者に証紙を請求する上で前提となる就労実績報告の未提出などを背景に、証紙が建設労働者に行きわたらないケースが散見され、建退共制度の適正運用を阻害してきた。

     

     勤労者退職金共済機構はこうした課題の解消に向け、2016年4月に有識者らでつくる「建退共制度に関する検討会」を設置した。検討報告書に電子申請方式の導入が盛り込まれたことを受け、18年1月から実証実験を開始。実用性を確認した上でシステム開発を進め、10月の改正中退法施行で電子申請方式が可能になった。

     

     同方式では、就労実績報告作成ツールの利用と、そこに記入された被共済者番号・被共済者名の機構による事前チェックが前提となる。元請企業は工事を受注した後、下請事業者などと連携しながら、就労実績報告作成ツールを使って工事情報ファイルを作成し、電子申請専用サイトに登録する。続いて、被共済者の人数に合わせて退職金ポイント(電子化された掛け金)を購入する。支払いはペイジーか口座振替となる。施工中は被共済者の就労実績を就労実績ファイルとしてまとめ、元請企業がサイトに登録する。就労実績に基づいて退職金ポイントが被共済者に充当され、掛け金納付が完了する。証紙貼付方式と比べて、金融機関での証紙購入や交付、貼り付けなどが不要となるため、納付手続きが簡略化される。11月2日から電子申請システムを試行的に稼働する予定で、中小、大手の建設企業を合わせて計67社(9月29日現在)が参加する。

     

     12月1日には、建設キャリアアップシステム(CCUS)との連携も開始する。具体的には、労働者が現場の入退場時に実施するカードリーダーのタッチ実績を事業者が同システムから取り出して、就労実績報告作成ツールの「被共済者就労状況報告書」に取り込むことで、掛け金納付に反映する。

     

     納付手続きはより合理化されるものの、カードタッチすると自動的に掛け金が納付される仕組みではないため、勤退共理事長代理で、建設業退職金共済事業本部長の稗田昭人氏は「さらに簡便な方法を検討していく」考えを示す。

     

     ただ、被共済者数が218万人(8月末現在)を超える一方で、CCUSの技能者登録数は36万人(9月末現在)にとどまり、被共済者がシステムメリットを十分に生かせる状況とは言えない。このため、「技能者登録が進むことで、電子申請方式との相乗効果がより明確になる」と強調する。

     

     電子申請方式は21年3月1日から全面・本格運用に向けた参加企業の募集を始める予定。同月中に本格運用に移行する。証紙貼付方式は廃止とせず、21年度以降も存続する。

     

    (おわり・西山和輝 中川慎也)

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    掲載日: 2020年10月7日 | presented by 建設通信新聞

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