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建設論評・顕彰するからには
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>10月に入って、わが国では年中行事のようにノーベル賞の行方が話題に上った。受賞決定の報は、ニュースの劈頭(へきとう)を飾る。この高揚ぶりは日本固有の風景であるようだ。
欧米諸国に滞在中、たまたまその滞在国にノーベル賞の受賞者が出たが、地元の報道は地味で人々も平然としていた。同じ白人国の1つが主宰する1つの賞として、特に意識しないのかもしれない。その点で日本人には、ノーベル賞受賞は白人崇拝の念を刺激するのだろう。
ノーベル賞の価値は、世界で最も権威が高いことにある。ということは、受賞者よりも高い業績を有する者が存在しないことを意味するのだが、この本旨は、言うはやすく実証は非常に難しい。応募や推薦に頼って顕彰者を決定する方法では、その本旨が堅持できないからだ。
そのために、ノーベル賞の授賞にかかわる機関は応募や推薦の網から漏れた、より高い業績の者を探し出すことに、極めて綿密に神経と精力を払って活動しているそうだ。
時には、当人が預かり知らないうちに探索の網に捉えられて授賞に至ることもあるという。この仕組みがノーベル賞の権威の高さにつながっているわけである。
諸外国はともかくとして、わが国の顕彰制度のほとんどは応募や推薦からの選定を原則としている。ノーベル賞のように主宰者自身も顕彰の対象者を探す仕組みは、管見(かんけん)の限り稀有のようだ。
それ故に、日本人研究者が文化勲章に先駆けてノーベル賞を受賞するということも起きる。お膝元の日本が補足し得なかった業績を北欧の彼の国が捉えたということだ。そこで遅ればせながら文化勲章を授けるわけである。
研究者や技術者を顕彰する国内の学会賞も、自薦他薦の応募者たちの中から表彰委員会が選定して授賞を決めている。ノーベル賞のように委員会自身の手で、応募者以外のより高い業績の探索に努めたら権威はもっと高まるだろう。
そもそも受賞を最も素直に喜ぶのは小学生のような若年者である。通信簿の成績につながるからだ。中学や高校の生徒の関心は表彰よりも進学が優先だ。大学では、学費免除の特典や志望する企業の内定の方が当人には重要だろう。先立つものは実利なのだ。
このことは社会人でも同じである。顕彰が実利に結びつかない上に実態が普遍性を欠いているような制度では、その権威が揺らぎ、顕彰者は尊敬されるどころか誇示することもはばかられることになる。
顕彰するからには、まずは実利、さもなくば実利を超える権威があってこそ意味があると考えたい。
そう考えると昇級昇格につながる企業内表彰の方が、モチベーションを喚起することになるだろう。
最近、海外で活躍する技術者を評価する画期的な「技術者認定・表彰制度」が創設されたと業界専門紙が報じている。
所管の行政機関が期待しているモチベーションの向上や働きやすくなるメリットにつながるような効果があるのか、運用の実態を追跡・検証する必要があるだろう。
(康)
残り50%掲載日: 2020年10月12日 | presented by 建設通信新聞