建設技術者向けNEWS
建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!
-
3か年緊急対策後の国土強靱化/正念場を迎えた21年度予算編成
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>例年より1カ月遅い9月末での締め切りを迎えた概算要求から2週間が過ぎ、国の2021年度の予算編成作業が静かに正念場を迎えている。“3年で7兆円”とした「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」を含む臨時・特別の措置の20年度での終了を前に、国土交通省は継続した当初予算での財源確保に心血を注ぐ。防災への国民的な関心が高まる中で、「金額」と「期間」を明示した必要・十分な事業費の確保が焦点となる。
【迫る災害、臨特超える措置を】
財務省が7日に公表した21年度予算の各省概算要求の合計額は103兆4886億円。臨時・特別の措置分を除いて対前年度と同額要求を基本とし、新型コロナウイルス感染症や防災・減災、国土強靱化への対応など「緊急的に要する経費(緊要な経費)」は別途要望することとした。
緊要な経費のうち、概算要求段階で金額が明示されたのは1兆9185億円。通常要求分と合計すると105兆4071億円となり、過去最大となった20年度予算(臨時・特別の措置含む)102兆6580億円を既に上回る。この額に新型コロナ対策など緊要な経費を上乗せする。
国交省は、緊要な経費の主要項目に「3か年緊急対策後の激甚化・頻発化する自然災害への対応」を位置付けた。激甚な災害が続発していることを鑑みれば、防災・減災対策を継続して進める必要があり、そのための予算・財源が不可欠だからだ。
同省の3か年緊急対策の予算は累計約2兆円で、公共事業関係費は各年度6000億-7000億円だった。国交省の概算要求の記者会見で予算担当者は、「これまでの実績を上回る必要で十分な規模となるよう検討する」と強調。その上で「国土強靱化や流域治水に関連する施策を進めるために21年度以降は最低でも6000億-7000億円が必要。1兆円という思いもある」と言い切った。
政府全体の予算額からすれば1%程度の金額だが、強靱化投資には大きく効いてくる。河川整備を例に取ると、戦後最大規模の洪水に対応するには国管理河川だけで約7兆円の事業費が必要となる。これに対し、臨時・特別の措置を含む河川・ダム事業の20年度当初予算は約5300億円。単純計算で、臨時・特別の措置と同程度の予算規模を継続すれば、約13年で事前防災に必要な水準が確保できる。
一方で、臨時・特別の措置規模の予算が確保できなければ、必要水準の確保は約5年以上遅れることになる。近年の災害の頻発化を鑑みれば、5年という期間は長い。直近の例でも、12年九州北部豪雨、17年九州北部豪雨、20年7月豪雨など同じ地域で3-5年おきに激甚な災害が発生しているからだ。
加えて、激甚な災害が頻発すれば、多くの予算を復旧・復興に割かねばならず、早期に事前防災を進めるためには、臨時・特別の措置以上の規模の予算を継続的に確保する必要があると言える。
国民の目線からも、金額・期間を示した公共投資は重要視されることになる可能性が高い。避難経路や気候変動を考慮した住まい方を考える上で、防災に関連した施設整備への関心はこれまで以上に高まることが予想できる。
国民の声を受ける形で、政治も動き出している。9月27日に開催した与党・公明党の全国大会で 竹内譲公明党政務調査会長は「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策を継続し、21年度から新たに5年間を1つの目安としてインフラ老朽化対策も含め、必要十分な予算を確保し計画的に推進する」と説明した。
もちろん、建設業界にとっても予算確保は重要な問題だ。国土強靱化の担うプロフェッショナルの立場から、金額・時期を明示した投資計画の提示を強く求めていく必要がある。
残り50%掲載日: 2020年10月14日 | presented by 建設通信新聞