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  • 治水新時代・防災協働への転機4/団体間の広域連携が加速/国土強靱化は「価値ある投資」

     多発・激甚化に加え、広域化する風水害や地震に備え、建設業団体同士が連携し、広域的な応急復旧体制を構築する動きが加速している。毎年のように大規模な自然災害が発生する中で、被災地での有事対応を補う広域連携は地域の枠を超えて、日本全体の安全・安心の確保に寄与する。一方、災害に強い国土形成の根幹がハード対策である以上、防災・減災、国土強靱化対策はより一層の推進が求められる。

     

     全国建設業協会の傘下では静岡県・山梨県・神奈川県の3建協が2005年2月に「相互支援(応援)に関する協定」を締結したことが、建協間の広域連携の先駆けとなった。07年11月に新潟県・山梨県・長野県の3建協が続き、08年3月には静岡県・愛知県・三重県・岐阜県の4建協が地方ブロック単位で初めて協定を結んだ。その後、東日本大震災を契機として、地方ブロック単位の協定締結が加速する。12年10月には東北6県の建協と東北建設業連合会、四国4県の建協、13年8月に関東甲信越の1都9県の建協が協定を結んだ。仙台建設業協会と浜松建設業協会との協定締結を始め、都道府県建協単位だけでなく、より地域に近い建設業団体間でも連携が進む。

     

     19年の台風19号(東日本台風)でも広域連携の枠組みが生かされ、全国建設業協会傘下の18協会、会員企業2710社から延べ5万7268人の作業員と、2万7256台の建設機械が出動。関東・東北地方を中心に応急復旧活動を展開し、“あらゆる関係者が協働した治水”の実践に当たり、建設業が果たす役割の大きさを改めて証明した。

     

     一方、20年度には「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」が終了し、ハード面の事前防災は岐路に立つ。

     

     大半の建設業団体が「国土強靱化は3年で終わるものではない。国民の生命・財産を守る防災・減災対策はこれから」と口をそろえる背景には、社会インフラが老朽化と自然災害の外力増大に直面し、実質的にも相対的にも“守る力”が低下していく中で、国民の安心・安全と、その先にある「生活の豊かさ」の確保にまで波及する国土強靱化対策が停滞しかねないとの危機感がある。動き出した「高台まちづくり」も前進できなくなる可能性がある。

     

     国土強靱化対策の持続的推進は、社会インフラの整備・維持管理を担う建設企業にとっての社会的使命だが、新型コロナウイルス感染症に対応した経済対策、ひいては企業経営を下支えすることにもつながる。広域連携を含め、流域治水のための発災時の応急復旧体制は、建設企業個社の人材、資機材が安定的に確保されることで成り立つ。全建の調査によると、傘下協会の会員企業の約5割が事業量の先行き不透明さなどを要因に、今後5年で有事の応急復旧に必要な「人員が不足している」ことを見込む。「機械が不足している」も約2割に達し、発災時の応急復旧体制の弱体化とともに、広域連携の形骸化が懸念される。有事体制の確立や流域治水の実現には一定の事業量確保が前提となる。

     

     政府は「激甚化し、頻発する自然災害を鑑み、3カ年緊急対策後も中長期的な視野に立って、これまでの実績を上回る必要で十分な(予算)規模が確保できるように取り組んでいく」との方針を示す。防災・減災、国土強靱化対策が国民にとっても、建設業にとっても「価値ある投資」である以上、自然災害に強い国土づくりの歩みを一時も止めてはならない。

     

    (おわり・柿元瞬、中村達郎、武内翔、中川慎也)

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    掲載日: 2020年10月15日 | presented by 建設通信新聞

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