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建設論評・人材流動化の行方
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>建設産業界では意外に人材の流動化が進んでいるらしい。流動化とは、つまり転職である。
国の行政機関、都道府県庁、大都市の役所、大手の建設会社の職場では他人事の話題だろうが、一般的に約4割が転職の経験があり、約4割が転職を考えているとの調査もある。
建設産業の職場を発注機関、設計事務所や建設コンサルタントなどの建設関連業(以下、設計コンサル)、建設会社の3つに大別し、転職者の流れをかつての同僚や指導した学生たちのその後の動静をもとに、定性的に俯瞰(ふかん)して検証したい。
まず、発注機関について。
設計コンサルとの間では入ってくる者は多いが出ていく者は非常に少ないようだ。建設会社との間では入ってくる者はそれ以上に多いが、出て行く者は寡聞にして聞いたことがない。非常に少ないということだ。だが、同業の発注機関との移動が比較的多い。つまり発注機関の技術者は、移るとすれば同業の発注機関に限られるのだろう。
次に、設計コンサルについて。
この業界はもともと転職の頻度が高い。発注機関との間では入ってくる者は非常に少なく、出て行く者は多い傾向がある。建設会社との間では入ってくる者は多いが、出て行く者は非常に少ない。そして、同業の設計コンサルとの移動が圧倒的に多い。設計コンサルの技術者もまた、同業の設計コンサルへの転職が極めて多いということだ。総じて設計業務への固執感がある。
最後に、建設会社について。
発注機関との間で入ってくる者は非常に少ないが、出て行く者は非常に多い。設計コンサルとの間でも入ってくる者は非常に少ないが、出て行く者は多い。同業の建設会社との移動は非常に多い。つまり、建設会社の技術者は同業の建設会社のみならず、発注機関にも設計コンサルにも転職者が多い。
以上の傾向から転職者の流れは、 直截(ちょくせつ)的には建設会社→設計コンサル→発注機関であり、その逆は少ない。この流れの原因に、発注機関の職場の人気の高さを見る。その人気は、社会的なステータスの高さと他の職場よりも仕事が楽だと思われているからだろう。皮相的に見ると、発注機関の技術者が他業種に転職者が少ないのは、俗に言うつぶしがきかないからかもしれない。流動化の障壁になる恐れがある。設計コンサルも同様のようだ。欧米のように、施工現場でもつぶしのきくことが今後の課題だろう。
建設会社の職場は人気がない。原因は仕事のきつさだ。だが、つぶしがきくことが強みだ。発注機関や設計コンサルでも適応力のあることは人材流動の要になり得るだろう。
最後に、蚊帳の外にある大学の教員たち。欧米の大学人は、人材流動の中心になっている例が多いのだが、わが国の大学の職場は、言い過ぎを承知であえて直言すると、転職は滅多にない。この世界の活性化を強く求めたい。
人材不足が加速している建設産業では、労働市場の流動化が不可欠だ。その適応力が求められる時代になった、ということである。 (小)
残り50%掲載日: 2020年10月22日 | presented by 建設通信新聞