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連載・前例なきコロナ対応(上)
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、4月に政府が緊急事態宣言を出してから半年が経過した。この間、感染症という新しい脅威に直面した地方自治体は、感染拡大の防止に奔走した。影響は公共工事にも及び、人と人の接触を抑えるために一時的に進捗が停止する事業などもあった。4-6月の工事開札件数が前年同期よりも落ち込んだ東京都は、7-9月に件数を回復しつつあるが、前年度並みには至っていない。工事量確保を求める都内の建設業団体からは、下期に発注が増加した場合、工期へのしわ寄せを懸念する声も上がっている。
【都 上期開札24%の減/第2四半期で回復示す/ずれ込みの工期影響懸念】
日刊建設通信新聞社の調べによると、2020年度上期(4-9月)に東京都が実施した特殊工事を除く工事の開札件数は1755件だった。前年同期の2318件と比べ24.3%のマイナスとなったが、4割近い落ち込みを見せた第1四半期(4-6月)と比べ、回復傾向にある。
主な発注部局の上期の推移は、財務局が33.2%減の149件、建設局が33.8%減の182件と件数の多い2局で3割台のマイナスだった。一方、ライフラインに関わる部局は第1四半期も発注を継続していたことから、件数のマイナスが比較的少ない。水道局は10.5%減の376件、下水道局でも16.8%減の356件だった。
都の公共工事が回復傾向にあるのは、東日本建設業保証がまとめている前払金保証実績からみた公共工事動向からも読み取れる。20年度上期の東京都単体の件数は、前年同期比17.6%減としたものの、3割以上落ち込んでいた第1四半期累計と比べて改善している。
ただ、発注量は回復しつつあるものの、前年度並みに戻っていないことも事実だ。東保証によれば都内市区も件数が15.3%減、請負金額は12.4%減とともに2桁のマイナスだ。
工事発注の現状について建設局は「コロナの影響で発注が遅れている案件はある」と明かす。「緊急事態宣言に伴う対応で工事の前段階にあたる設計、調査などで進捗を一時停止するケースがあった」。工事でも、関係者との協議の中止・延期などで工程が遅れる案件が出ている。
こうした状況に、都内の建設業団体のある幹部は「前年度並みの工事量は確保してほしいが、発注の遅れを取り戻そうと急げば工期にしわ寄せが来かねない」と懸念を示す。コロナ対応などで遅れた工事発注が、ただでさえ工事量が増加する下期にずれ込めば、稼働する現場の過密化や年度末工期の増加につながるおそれがあるからだ。
東京建設業協会も都財務局と建設局に前年度並みの工事量を確保するとともに、工期への配慮などを求める要望活動を実施した。
業界が懸念する施工時期の平準化について、建設局と財務局は「目指すことは責務」と口をそろえる。財務局の契約担当部署は「これまでのゼロ都債を含む債務負担行為に加え、繰り越し対応などの活用も視野に入れている」と話すなど、平準化につながる取り組みの強化を検討している。
工事量をめぐっては、今年度の当初予算で必要な事業費は確保されている。「コロナの影響で発注予定の工事を中止することはない」と建設局も強調する。
ただ、コロナに対する医療体制の構築や経済対策による新たな支出が予想される中、工事量が21年度も同様に確保されるかは不透明だ。9月に都がまとめた予算編成方針では、財政環境が「厳しくなる」との見方を示している。
とはいえ19年に関東を襲った台風19号(東日本台風)の被害は記憶に新しい。近年、激甚化している自然災害に備えることも急務だ。これから都を始め、地方自治体で21年度の予算編成が本格化する。新型コロナ下で景気動向が見通せない中、工事関係予算がこれまでどおり確保されるかに注目が集まる。
残り50%掲載日: 2020年10月26日 | presented by 建設通信新聞