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カナリヤ通信・第52号/女性管理職登用増加へ
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【第5次男女共同参画計画 12月に閣議決定】
政府が「2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする」(20年30%)との目標を掲げたのは、17年前の03年のことだった。男女共同参画基本計画にこの目標を盛り込み、その後、官民で取り組みが進んだものの、現時点で目標にはまだ到達していない。ただ、働き方改革の推進や女性活躍推進法に基づくポジティブ・アクション(積極的改善措置)の実行などによって、建設産業の企業でも女性就業者数や上場企業の女性役員は増えている。今後の政府の取り組みの方向と、建設企業が男女共同参画やワーク・ライフ・バランス(WLB=仕事と生活の調和)を進める上で動機付けにもなる自治体の公共調達の取り組み、上場企業の女性役員の状況をみる。
■あらゆる分野に女性の就業・定着促進
政府は、第5次男女共同参画基本計画を12月に閣議決定する予定だ。既に男女共同参画会議(議長・内閣官房長官)の下に設けた「第5次基本計画策定専門調査会」(会長・佐藤博樹中央大大学院教授)が第5次計画策定の「基本的な考え方」案をまとめている。基本的な考え方は同会議に答申する。
基本的な考え方の案によると、ウィズ・ポストコロナのニューノーマルの基盤となることも含めた基本的な方針を示した上で、経済分野を始めとしたあらゆる分野で女性の参画拡大など3つの政策領域で11分野を掲げた。分野ごとに施策の基本的方向と、「公共調達でWLB等推進企業を加点評価して受注機会を増大」といった具体的取り組みを示した。
また、20年の30%到達が困難なことを踏まえ、「30年代には、誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指す」を新たな旗印として掲げた。その通過点として「20年代の可能な限り早期に30%程度」の実現へ、施策の取り組みを進めるとした。
具体的な取り組みでは、▽企業でのダイバーシティー経営促進▽建設産業など女性の参画が十分でない業種で女性の就業・定着促進▽企業による理工系女性人材育成の促進――などを盛り込んだ。
建設業の女性の雇用者割合は19年時点で18%と、主要産業の中では最も低い。産業全体でコロナ禍では男女とも就業者数が大きく減り、4月は男性の37万人減に対し、女性は70万人減だった。
国土交通省が建設業5団体などとまとめた「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画~働きつづけられる建設産業を目指して」では、女性の入職者数に対する離職者数の割合を前年度比で減少させるとともに、入職者数に占める女性の割合を前年度比で増加させることを掲げている。
女性が働き続けることができ、女性に選ばれるための環境整備が進めば、建設産業が女性雇用の受け皿にもなり、雇用者数が増えて、採用・雇用から管理職・役員への「パイプライン」の構築につながっていく。
■建設産業界へのメッセージ/内閣府男女共同参画局長 林伴子/働きやすい職場へ広がり期待
1月に「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」が策定されるなど、建設産業界では、女性活躍に向けて官民一体となった取り組みが進められていると聞いている。こうした取り組みによって、女性技術者は2014年の1万1000人から19年には2万2000人へと倍増、女性技能者は14年の8万7000人が19年に11万2000人へと1.3倍増になるなど、大変目覚ましい成果が上がっており、関係者のご尽力に敬意を表したい。
女性活躍に向けて取り組むことは、いまや人材と投資を集めるために不可欠である。資本市場ではESG(環境・社会・企業統治)投資が広まっており、内閣府の調査によれば、7割近くの機関投資家が、女性活躍情報は「企業の業績に長期的に影響がある情報」と考えているとの結果であった。また、女性役員の登用は、多様な価値観の企業経営への反映、企業のイノベーション促進につながる。内閣府が運営している「女性リーダー人材バンク」の活用も検討していただきたい。
さらに、女性活躍推進法に基づく認定など(えるぼし、くるみんなど)を取得した企業を「ワーク・ライフ・バランス等推進企業」として、国や独立行政法人などの公共調達のうち、総合評価落札方式と企画競争方式において加点評価する取り組みも実施している。いまや国や独立行政法人が行う取り組み対象調達の約35%(金額ベース)に加点評価が取り入れられている。認定取得を通して、こうした取り組みも活用してほしい。
現在、急速に進展しているリモートワークやデジタル化は、柔軟な働き方を可能とするものであり、女性がさらに活躍できる環境が整ってきている。男女がともに働きやすく、より生産性の高い職場が広がっていくことを期待している。
■都道府県・政令市の公共調達/男女共同参画とWLBを評価/資格審査に97%65自治体設定
自治体の公共調達で、企業の男女共同参画とワーク・ライフ・バランス(WLB=仕事と生活の調和)の取り組みを審査項目に設定して評価する動きが着実に広がっている。公共工事の競争参加資格審査で審査項目を設定している都道府県・政令市は、2019年4月1日時点で、67自治体の97.0%に当たる65自治体だった。調査業務などの役務提供や物品購入では11自治体となっている。工事などの個別案件で総合評価落札方式一般競争入札を適用する際には、46.3%の31自治体がWLB関連を評価項目に設定している。総合評価方式以外の調達で、評価項目を設けているのは55.2%の37自治体。うちプロポーザル方式で評価項目の設定は13自治体であった。
公共工事の競争参加資格審査で、具体的に設定した審査項目は、政府が「WLB推進等企業」と位置付ける女性活躍推進法(女活法)などに基づく「えるぼし認定」「くるみん認定、プラチナくるみん認定」「ユースエール認定」のいずれかの取得が栃木、神奈川、福井、山梨、岐阜、滋賀、高知、長崎、大分の9県、仙台、さいたま、千葉、川崎、相模原、広島、北九州の7政令市の計16自治体となった。
女活法に基づき努力義務となっている中小企業の行動計画策定を審査項目としているのは、北海道、岩手、秋田、茨城、栃木、埼玉、富山、福岡、鹿児島の9道県と、仙台、さいたま、千葉、横浜、川崎、相模原、静岡、広島、北九州の9政令市を合わせた18自治体だった。
また、1つの自治体が複数設定している場合も含め、「次世代育成支援対策推進法に基づく努力義務対象企業の行動計画策定」は23自治体、「自治体独自の男女共同参画やWLBの企業認定・認証などを取得」が26自治体、「WLB関連表彰の受賞・認証実績」が8自治体、「仕事と育児・介護を両立するための取り組み」が12道県(政令市はゼロ)などだった。秋田、福岡、長崎の3県は、管理職に占める女性の割合を評価項目に設定していた。ノー残業デーの設定など、労働時間短縮に向けた企業の取り組みは、茨城と福岡の両県が評価している。
役務提供・物品購入の競争参加資格審査では、10県1政令市が審査項目を設定。うち4県が仕事と育児・介護両立の取り組み、6県1政令市が次世代支援法の行動計画策定を審査項目にしている。「WLB推進等企業」を審査項目としていたのは神奈川、長野の両県と北九州市だった。群馬、長野、岡山、福岡の4県と北九州市は、女活法に基づく中小企業の行動計画策定を審査項目に設定していた。
個別案件の総合評価方式での評価項目設定は、19都道県と12政令市の計31自治体。東京都と秋田、新潟、愛知、滋賀、高知、長崎の6県、さいたま、横浜、堺、神戸、広島、福岡、北九州の7政令市の計14自治体が「WLB推進等企業」を加点評価している。中小企業による女活法の行動計画策定を評価しているのは、北海道と愛知、三重の両県、横浜、川崎、相模原、堺、広島、福岡、北九州の7政令市を合わせ10自治体あった。
総合評価方式以外の個別案件調達で評価項目を設けているのは25道府県、12政令市の計37自治体ある。「WLB推進等企業」の加点評価は、長野、愛知、滋賀、香川、高知、熊本、宮崎の7県、横浜、新潟、広島、福岡、北九州の5政令市の計12自治体だった。群馬、富山、長野、愛知、岡山、香川、宮崎の7県、仙台、横浜、新潟、広島、福岡、北九州の6政令市の計13自治体は、中小企業の女活法行動計画策定を審査項目に設定している。
プロポーザル方式では、山形、岐阜、愛知、滋賀、京都、奈良、鳥取、香川、熊本の9府県、横浜、新潟、浜松、大阪の4政令市の計13自治体がWLB関係を評価項目に設けている。この自治体での取り組みは内閣府がまとめた。
■上場建設企業171社/63社に女性役員、比率10%以上は28社
有価証券報告書などに基づく建設業上場企業171社の2019年7月末時点での女性役員(取締役、監査役、指名委員会等設置会社の代表執行役と執行役)比率は、3.8%となっている。データのある15年4月期―16年3月期は1.7%、16年4月期―17年3月期が1.8%、17年4月期―18年3月期が2.4%と、徐々にその比率は上がっている。ただ、19年7月末時点でも全33業種3740社の女性役員比率5.0%と比べ1.2ポイント下回っている。
建設業の上場企業で女性役員がいる企業は、19年7月末時点で36.8%に当たる63社となっている。171社の平均役員数については、男性の11.4人に対して女性は0.5人。全業種でも男性10.4人に対して、女性は0.6人にとどまる。
女性役員がいる63社のうち、49社は女性役員が1人だった。女性役員が2人は14社となっている。女性役員が3人を超える企業はなかった。
全上場企業3740社のうち、女性役員比率が10%以上の上場企業は23.7%に当たる887社ある。
建設業の上場企業で同10%以上は16.3%の28社(表)となっている。28社のうち、女性役員比率が30%以上の企業はなく、25%が1社、20%は4社だった。
※女性役員比率の高い順。同率の場合は女性役員数が多い順。女性役員数が同数の場合は証券コード順(内閣府のリーフレットなどをもとに作成)
残り50%掲載日: 2020年10月29日 | presented by 建設通信新聞