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  • 連載・全建ブロック会議総括(上)予算抑制圧力と対峙/“国民理解”への道筋/安全・安心へ官民協働

     全国建設業協会(奥村太加典会長)と国土交通省などとの2020年度地域懇談会・ブロック会議が10月30日の北海道地区で全日程を終えた。「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」が20年度に最終年度を迎えることもあり、9地区ではいずれも公共投資予算、防災・減災、強靱化対策の今後のあり方に議論が集中。国民の安全・安心を確保する自然災害に強い国土づくりの推進と、それを支える地域建設業の持続的な発展は自治体を含む発注機関、全建、47都道府県建協の総意であることを確認した。一方、財政制度等審議会では社会資本に関する「予算規模の量的拡大の抑制」という方針が示され、21年度以降の公共事業、強靱化投資の動向は混沌としている。

     

     全国各地で団体側から要望された強靱化対策の延長に対し、国交省は3か年緊急対策終了後も「激甚化・頻発化する自然災害を鑑み、これまでの実績を上回る必要で十分な(予算)規模が確保できるようにしっかりと取り組む」考えを示した。21年度予算の概算要求では、別枠扱いの「緊急的に要する経費(緊要な経費)」で「3か年緊急対策後の激甚化・頻発化する自然災害への対応」の継続を要望する。

     

     国交省側の前向きな回答は、強靱化対策を含む積極的な公共投資が国土の発展や大規模災害への備えになり、社会資本の整備・維持管理や有事対応を担う地域建設企業の安定経営につながるとする、全建側の思いに応えるものだった。

     

     自然災害に強い国土形成に向けて受発注者の認識が一致する中で、財政審が10月19日に示した社会資本整備の基本的方向性は水を差す格好となる。「社会資本が概成しつつある」との従来の見方に加え、「足元で建設労働需給がひっ迫し、今後労働人口が減少する中で建設業の労働力確保がさらに困難になると見込まれる」ことなどを理由に「予算規模の量的拡大の抑制」を打ち出したからだ。

     

     ある建協の幹部は「地域の守り手としての社会的使命をまっとうするため、地域の建設企業は経営が苦しくても人材や資機材を維持してきた。にもかかわらず、『概成』の次は『抑制』。自然災害が頻発・激甚化しているのに、現状を踏まえた判断とは到底思えない」と肩を落とす。

     

     もっとも予算抑制の動きが懸念されていなかったわけではなく、財政規律を重視する財務省を意識したやりとりは今回の意見交換会でも散見された。国交省の天河宏文官房審議官は10月13日の四国地区ブロック会議で、「建設業界には“施工余力”があることを積極的にPRしてほしい」と要請。安定・持続的に予算を確保する上で、円滑に公共事業を執行する意義は受注者も理解しており、香川県建設業協会の朝倉一郎副会長は「施工余力は十分にあるので、事業量を確保してほしい」と応じた。

     

     ただ、財政審の主張は、中国地区から始まった後半戦の議論に少なからず影響を与えた。別の建協の役員は「(財政審の主張を受けて)受発注者とも『人手不足』という言葉は使えなくなった。人手不足の意味合いは足元ではなく、将来の担い手を見据えたものだが、曲解して伝わっているのであれば配慮せざるを得ない」と明かす。

     

     三重県の鈴木英敬知事が「経済活動活性化の観点からも、社会資本整備をしっかりと進め、日本のどこにいても安心して希望を持って住めることが重要」と話すように、強靱化対策は社会的要請と言える。「社会資本や建設業が国民のためにやるべきことはまだまだ残されている」(中筋豊通島根建協会長)以上、官民が連携して公共事業や地域建設業への理解促進に努め、業界が社会的使命を果たすための体制維持が求められる。

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    掲載日: 2020年11月2日 | presented by 建設通信新聞

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