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連載・全建ブロック会議総括(中)/施工余力の根拠提示は責務/“国民理解”への道筋
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【有事対応を業界理解の入口に】
「施工余力が確保されているというエビデンス(根拠)を示していかなければならない」。北陸地区地域懇談会終了後にある建協の幹部が漏らした一言は、国土強靱化対策を含む公共投資予算の安定・持続的確保、地域建設業の持続的発展を実現する上で避けることができない、受発注者双方の新たな責務になり得る。
全国建設業協会が9月に発表した「品確法に基づく運用指針の運用状況等に関するアンケート」の結果によると、傘下建協会員企業が過去3年で人員・機材を「手放した・縮小した」割合は約1割にとどまる。その理由も定年などの「自然減」が大半を占め、縮小が意図したものではないことがうかがえる。
一方、「維持している」が約8割を占め、「拡充・拡大した」は約1割に上る。地域建設企業の大半が厳しい経営環境下で、施工体制を維持・拡充する背景には「インフラの整備・維持管理、有事対応を通じて地域の安全・安心を確保するため」(別の建協役員)とする強い使命感がある。
ただ、施工余力の根拠を明確化するには、このアンケート結果以上に「より広く理解を得られる客観的なデータが必要だ。それを受注者だけでまとめあげるには限界があるのではないか」との見方を示す。
「財政審(財政制度等審議会)は『今後労働力人口が減少する中で建設業の労働力確保がさらに困難になると見込まれる』と指摘するが、労働力人口の減少は建設業だけでなく、全産業に影響する」と続けた上で、「想定を超える大規模な自然災害が毎年のように発生する中で、地域建設企業の体制が現状のままで対応していけるのか」と、激甚化していく災害に対して受注者側の対応力が相対的に低下することを危惧(きぐ)する。
将来の担い手の確保・育成は施工余力の維持・拡充とともに、地域建設業が地域の守り手として存続する上で前提となる。山崎篤男全建専務理事が四国地区ブロック会議で「(地域建設業の)一番のPRポイントは災害対応」と話したように、地域建設業の特徴である有事対応は、国民が業界に対して理解を深める入り口となり得る。
全建の別の幹部は「応急復旧作業の様子を発信する(本来の)目的は、過酷な状況下で国民の安全・安心の確保、社会・経済活動の再開に向け尽力している姿を通して、地域建設業に対する理解を深めてもらうこと。その先に業界のイメージアップがある」とし、「作業に従事する会員企業の社員らが被災状況、作業風景を写真撮影することは難しいケースがあるので、行政機関の協力が不可欠。効果が表れるには時間がかかるが、(理解促進の)確実性は高い。地道に取り組まなければならない」と山崎専務の思いを補足する。
東北地区ブロック会議でも、東北建設業協会連合会が東日本大震災の応急復旧、復旧・復興事業を遂行してきた経験を踏まえ、戦略的広報の必要性を訴えた。
発信だけでなく、有事対応そのものも行政機関との組織的な連携によって成り立つ。徳島県建設業協会の川原哲博会長は自由討議の中で「心のどこかで、地震はすぐに発生しないと思っているのではないか」と発災に備えた心構えについて言及。建設業団体と行政機関が結ぶ災害協定の実効性を高める上で、国や自治体など行政機関間の連携体制の構築、指揮命令系統の明確化を訴えた。
国土交通省は「改正品確法では団体と関係機関だけでなく、関係機関間の連携も明記しており、体制構築に努める」と応じ、戦略的広報も団体側と同じ考えであることを強調した。
有事対応と戦略的広報は地域建設業の理解促進、担い手対策の推進に向け一体不可分の関係にあるが、施工余力の根拠明示を含め「建設業界自らではなしえない」(東北建協連)だけに、官民連携の重要性は一層増している。
残り50%掲載日: 2020年11月4日 | presented by 建設通信新聞