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連載・競争激化の足音〈下〉公共工事に影響波及/問われる業界の姿勢/“くじ引き”全国で散見
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>民間市場での受注競争激化は、ゼネコン各社の公共工事の応札行動にも変化を及ぼす。先行きへの不安から早期に受注高を積み上げておきたい各社の心理からすれば、一定規模の公共工事は売り上げ規模を確保する絶好のチャンスだからだ。そうしたゼネコン各社の意識の変化が全国的に散見され始めた公共建築での“くじ引き”を招いている可能性は高い。
象徴的な事例は、4社が同額の最低札を提示した青森県平川市の「新本庁舎建設工事」や、同じく2社の入札額(最低札)が並んだ香川県多度津町の「多度津町新庁舎等建設工事」といった地域の目玉プロジェクトでのくじ引きだ。
「新型コロナウイルスの影響で民間市場での受注環境はかなり厳しい。ゼネコン各社はそうした状況に向き合っている。だからこそくじ引きや低入札の案件にも手を出し始めている」(業界関係者)ことは想像に難くない。
「民間市場に案件があふれていれば競争をしてまで公共建築を取りに行く必要はない。民間市場が厳しいからこそ、一定の受注額を確保できる庁舎など地域の目玉案件は確実に受注しておきたい」という各社の心理(受注戦略)とくじ引きが決して無関係ではないことを如実に示す。
もともとの“傾向”として「民間市場での受注競争が激化すると、参加資格さえ満たせば、応札することができる公共市場に流れるきらいはある」とする業界関係者の声は、民間市場での競争激化の影響が公共市場に確実に波及していることの証左だ。
実際にある準大手ゼネコンの幹部は都内で10月に発注された3件の土木工事を例に「普段なら準大手クラスが競争する1件当たり10億円以下の案件を大手ゼネコンが受注した。明らかに大手が準大手クラスの工事に降りてきている」と自嘲気味に話す。
現下の情勢を推し計る「建築を中心に先が見えないだけに支店として早く目標をクリアしておきたい思いがあるのだろう」という見立ては、競争激化の影響が公共建築だけでなく、土木を含む市場全体に及んでいることを示す。
コロナ禍での経済低迷や先行きの不透明感といったネガティブ要因は、平成不況の記憶が拭い去れないゼネコン各社に必要以上の競争をあおる結果になっている。
その結果は数字になって現れることになる。ここ数年、大手・準大手ゼネコンの建築の完成工事総利益(粗利)率は10%弱、土木は10%強で推移してきたが、このまま競争激化の構図が続けば、好調さの指標となってきた2桁の粗利が下降線をたどっていくのは確実だろう。
そうした過度な競争は技能者の処遇や働き方へのしわ寄せを招く。かつてそれが建設業の魅力を大きく低下させる結果となったことは言うまでもない。“潮目”が変わり始めたいま、大手・準大手ゼネコン各社がどういった姿勢を示せるか。そのビヘイビア(行動)が問われている。
(赤間政彦、竹本啓吾、濱野貴之)
残り50%掲載日: 2020年11月6日 | presented by 建設通信新聞