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  • 建設論評・発注者と建築のマネジメント

     近年、建築事業において基本計画、設計、施工以外にも、発注者のマネジメントを支援する業務が第三者に委託される事例が増えている。新しいやり方が工夫されるのは、従来のやり方は十分に機能しなくなったと認識されるからだ。

     

     発注者の立場からその要因を考えた。外部環境の変化として、建築市場の価格変動が激しくなったことなどがある。結果として当初計画どおりの事業発注が困難となる事例、発注後にも事業費や工期の大幅な変更が必要となる事例が増えているという。また建築事業が多様化、複雑化する一方で、内部環境の変化として、発注体制の効率化、技術力の低下などが進んできたことも指摘される。それらの変化に対して、発注者だけでは的確なマネジメントが困難になってきたということだろう。

     

     発注者のマネジメントには、設計や施工に関する発注方式や選定方法の決定、発注後の管理なども含まれる。いずれも本来、発注者が行う業務であるが、事業特性や発注体制などに応じてそれらに関する支援業務が委託されているのである。

     

     それにより専門的な検討や技術的な助言が得られ、発注者のマネジメントは改善されているようだ。しかし、支援業務を委託しても発注者の中核の責務は変わらない。例えば、設計や施工の契約条件となる工事費、工期、建物仕様などの決定や変更指示は、契約の当事者である発注者の責務である。一方の支援業務受注者は委託された範囲内の業務を行うのである。だから、発注者が「受注者にすべてを任せた」と考えたり、受注者が「発注者になり代わって、直接設計者や施工者に変更指示する」と考えたりすることは適切ではない。

     

     事業全体を的確にマネジメントするためには、発注者は自らが果たすべき責務や役割を再認識し、発注者自らが行うことと、支援業務受注者や設計者、施工者などの専門家に委ねることとの分界点を明確にすることが重要だ。そして適切な契約条件を定め、的確な運用に努めることである。

     

     その大前提であり、発注者自らが行うべき重要な事柄について主なものをまとめた。

     

     まず、どのような建物をつくりたいのか、それを考え抜き発注者の理念や建築観として取りまとめることだ。それらは事業の根幹であり、要求水準や設計条件の骨格や判断基準となる重要なものである。

     

     次に、発注者の理念や建築観に合致する専門家を選ぶことだ。専門家とのベクトルが一致すればさまざまなシナジー効果が期待され、事業にも好循環が生まれるだろう。そのためにも自らの手で多くの専門家を調べ確認することを勧めたい。

     

     3つ目は、発注者の理念や建築観を専門家と常に共有し、必要な意思決定を速やかに行うことだ。専門家は発注者の理念や建築観を実現する大切なパートナーである。専門家の高い能力が十二分に発揮されるように、発注者にはより主体的で積極的な対応が求められる。(侑)

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    掲載日: 2020年11月17日 | presented by 建設通信新聞

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