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  • 建設論評・メリット実感は2割

     建設業界団体が、建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及に向けてモデル工事を実施している傘下の会員企業33現場のアンケート結果を公表した。

     

     それによると、実際の活用を通じて「メリットがある」と感じた割合は2割程度だったと報じられている。これを2割しかないのか、それとも2割もあると見なすのか、いずれにしても、関係者には刺激的な調査結果であろう。

     

     たまたま米国でユニオンを使って工事を行った際に、現場作業員のキャリアに関わった経験がある。ユニオンとは全米建設労働組合総連合と邦訳される団体で、その州本部に加入している建設作業員の権利擁護と人材開発を活動の目的としている。

     

     作業員を雇用する前に、雇用する側の建設会社は、ユニオンとの間で労働協約を締結することになっていた。協約の最低限の要件は、キャリアの資格とそのキャリアに応じた賃金を規定することだった。

     

     協約には、州本部傘下の各工種の支部が日給または時給の賃金と手当の金額など、作業員の処遇の決定に参画する。その金額は、土工、大工、鉄筋工など各工種のすべてのキャリアについて具体的に決められる。

     

     キャリアは見習いクラスから支配人クラスまで10前後の階層で構成されており、作業員はユニオンが主催する試験や講習を通じてキャリアアップを図ることになっている。協約に違反すると罰則が科せられる。賃金のピンハネは違法行為として、法廷闘争になるだろう。デジタル時代になっても、作業員の処遇とキャリアの機能が守られている点は変わりがない。

     

     実は、当時日本から多くのお歴々が視察に訪れた。だから、米国のこうした事情は周知の上で、システム作りがされたに違いないと思われる。

     

     発展途上国で工事を行った経験もある。応募してきた作業員たちは、それまでに就業した就業証明書の束を手にしている。その証明書に明記される賃金の額を参考にして雇用の交渉を行う。工事が終わって彼らを解雇する際には、就業証明書を発行する。証明書には、当人の氏名、年齢、工種、雇用期間、賃金、評価などを記述して現場所長が署名する。

     

     彼らはそれを大事にしている証明書の束の中に加えて、次の職場に去っていく。この束をひも解けば、当人のキャリアパスとキャリアアップの履歴が分かるというわけである。デジタル化には程遠い環境だが、キャリアの最低限の要件は満たされている。こうした事情も、ODA(政府開発援助)事業を通じて日本の関係者には周知のことだろう。

     

     この2つの例から、キャリアの意義は現場作業員当人が享受する処遇にあることがわかる。

     

     だから、CCUSが規定している要件に、キャリアに見合う賃金という即物的要素に乏しいことが、現場作業員に魅力を感じさせない理由であり、現場で不評をかっている原因であろうと思われる。

     

     CCUSは、関係者たちが衆知を集めてつくり上げた折角(せっかく)の労作なのだが、現場作業員たちが期待するメリットが実感できる制度設計が求められているということである。(康)

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    掲載日: 2020年11月24日 | presented by 建設通信新聞

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