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  • 建設論評・情報連鎖型BIMへ

     政府は国のデジタル化の遅れを取り戻すため、「デジタル庁」を設置し、行政サービスのあらゆる分野でデジタル化を強力に推進しようとしている。

     

     デジタル先進国のエストニアでは、全国民にIDを付与し、役所に行かなくても行政手続きができ、選挙もオンライン上でできるシステムを構築している。インドでも「アーダール」というマイナンバーを全国民に付与し、顔認証、指紋認証、虹彩認証を組み合わせて、デジタルID基盤を構築している。このシステムが画期的なのは、簡単に民間の開発したアプリに連動でき、どんな田舎でも携帯電話があれば簡単に医者を予約できるなど、国民の利便性が具体的に高められている点だ。

     

     さて、建設や不動産の分野でもデジタル化はさらに加速するはずで、そのためには、建設の生産性を向上させるための「生産者側デジタル化」と施設や建物を使う発注者や利用者の「需要者側デジタル化」の2つの要素を同時に動かすことを考えるべきだ。

     

     いま官民ともにBIM/CIMを推進しているが、日本のBIMは生産者側の設計者、施工者間の情報ギャップを埋め、生産効率を向上させることが目的となっている。その結果、生産者側と需要者側の間で、BIMへの取り組みにギャップが生じている。

     

     一方、欧米では、温度・人感センサーだけでなく大量のIoT(モノのインターネット)センサーから生じる大量のデータをAI(人工知能)で分析する仕組みを構築している。そのデータ活用のためには、維持管理段階で有効となる位置情報に必須となる「BIMデータ」とFMで活用される「ビル管理データ」を組み合わせることで、SDGs(持続可能な開発目標)時代に求められるエネルギー使用量の削減を図る取り組みが積極的になされている。不動産オーナーにとっても、エネルギーの効率化は、ダイレクトにエネルギーコストの削減につながることから、その注目度はとても高い。生きたBIMデータの活用が実際行われている。

     

     さらに、ここで得られたデータをベースに次の新たな不動産開発や設計、工事へ反映しつなげることができるなど、生産情報としてのBIMデータを需要側で活用し、そこで得られた知見を生産者側にフィードバックし、さらに使いやすいBIMとしてデジタルデータの受け渡しがうまく回るような仕掛けまでつくっている。

     

     事実、英国のBIM基準である「BS1192」では、BIMデータを川上の設計者や施工者から、川下のビル管理者、発注者、利用者へ引き渡すイメージではなく、設計者、施工者、発注者が共有し、全員で次のプロジェクトにおける必要なBIMデータを定義し直す「情報サイクルマネジメント」として定義している。

     

     使いにくいと評判の悪い「マイナンバーカード」も、政府は利便性改善に向けて取り組むそうだ。日本のBIMも、生産者側から一方的にデジタル情報を流す「河川型BIM」から、情報が川上から川下へ、川下から川上へフィードバックし、建設プロジェクトの改善につながるスパイラルアップする「連鎖型BIM」であってほしいものだ。(隆)

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    掲載日: 2020年11月26日 | presented by 建設通信新聞

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