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フォーカス・包括的担保権
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【実現へ金融庁、法務省に秋波】
金融庁が設置した研究会で不動産などの担保や、経営者が返済保証をする経営者保証によって金融機関などが企業に融資するこれまでの枠組みに加え、従来、担保にはなりにくかった、のれん、ノウハウや人材、顧客基盤などの無形資産も含めた事業全体に対する包括的な担保権の導入を視野に入れた議論が進んでいる。ただ、米国など海外で導入済みの「包括的担保権」を日本でも一般的な融資の選択肢にするためには、法務省の法制度審議会(法務相の諮問機関、法制審)の担保法制見直し結論が必要。年内に成果をまとめ来年、主役の法制審に期待をかけることになる。
包括的担保権をバランスシートから見たイメージ(金融庁資料より作成)
◆地域貢献の建設業に追い風/ノウハウ、顧客基盤「見えない資産」を担保に
昨年12月、金融庁は検査マニュアル廃止後の融資の検査・監督の考え方の中で「国内の資金不足で資金ニーズが高く、金融機関が貸出先を選択することができた時代から、低金利環境長期化などの変化に伴い、金融機関が貸出先から選ばれる時代になった」とし、金融機関の新たな取り組みの必要性を強調。さらにことし8月には事業者と金融機関の緊密な関係構築を今年度金融行政方針として打ち出していた。
こうした流れの中で、金融庁が11月に発足させたのが「事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会」だ。25日までに2回の会合を開き、年内にはまとめを行う予定となっている。
議論の成果を急いでいるのは、「われわれとしては包括的担保について法務省に提案し法制審で議論してほしい」(金融庁)からだ。そのため、「法制度の詳細を固めるのが目的ではない。考え方を整理することだ」「制度について詰め切れないことも十分ある」(同庁)と、担保法制見直し議論の主役である法制審への配慮と、議論生煮えの可能性に対して予防線を張る。
包括的担保権の議論の背景として、日本のGDP(国内総生産)の産業別割合でシェアが年々拡大し近年7割以上となった「サービス産業」の存在があったとしても、建設業にとっても悪い話ではない。多くの地元建設企業は、災害発生時や防災・減災への対応、地域インフラの維持などに貢献、こうした地域住民や地域行政など顧客からの評価といった無形資産(見えない資産)が、包括的担保権の対象となり、融資や経営悪化時の早期支援や最悪の場合の事業再生にもつながるからだ。
これまで担保権の対象は、土地や不動産など個別資産だけで、企業の将来性はほとんど考慮されていない。過去、バブル崩壊後の景気低迷時の資金繰りが厳しい時期、地域の中小建設業は「受注」が融資の担保として競争激化に陥った苦い経験がある。地域で評価される「見えない資産」も担保になれば、経営安定化の好循環が期待できる。
*包括的担保制度 企業または事業の財産を一括して担保に入れることができる制度は、プロジェクトファイナンスや企業および事業の収益力に着目した融資のためには便利。1958年にできた「企業担保法」は不動産だけでなく、商品や原材料などの棚卸資産や債権一般も含む総財産(ただし、のれんやノウハウなどは含まない)を対象とすることができるか、社債(担保付き社債)の担保としてだけ使われるものである。〈出所・高木新二郎『事業再生-会社が破綻する前に』(2006年1月)、金融庁参考資料から抜粋〉
残り50%掲載日: 2020年12月4日 | presented by 建設通信新聞