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  • 学び直し、工学系改革で追い風/インフラメンテ特化の技術者教育/ME、道守養成開始から10年

    【コンサル、ゼネコン 重なる事業領域 課題も浮き彫り】

     

     岐阜大学が行政、地域建設産業界、地元経済界などと連携してスタートさせた「社会基盤メンテナンスエキスパート(ME)養成」が10年を迎えた。インフラメンテに特化した社会人土木技術者の学び直しでもあるME養成の取り組みは、10年で岐阜大を含め5大学1高専まで拡大した。安倍政権がリカレント教育(社会人の学び直し)や、大学の工学系教育改革による人材育成を成長戦略の柱に据えるなどMEの環境には、さらに追い風が吹いている。ただ、2月27日に岐阜県高山市内で開かれたME養成取り組みのシンポジウムでは=写真、課題も浮き彫りとなった。

     

     現在「ME」「道守(みちもり)」の名称でインフラメンテに特化した社会人土木技術者の教育講座を行っているのは、長崎大、岐阜大、愛媛大、山口大、長岡技術科学大、舞鶴工業高専。

     

     道路や橋梁などの公物管理者である県や市町といった地方自治体は、厳しい財政と土木系職員の減少の中でインフラの老朽化対応が遅れる問題を抱え、一方地域の建設産業界は公共事業減少と技術力低下が大きな不安となっている。

     

     ME、道守の取り組みは、自治体と地域の建設産業界が相互協力できるための人材育成を地域の大学が担うことで、インフラメンテに特化した高度な技術者を輩出し、最終的には地域の活性化と地域再生を目的としてきた。

     

     その過程で、2014年4月の道路法施行規則改正によって公物管理者に5年に1回の点検業務が義務付けられたほか、地方自治体に対してすべてのインフラ長寿命化計画策定とその実行が求められていることが、ME、道守養成の関心を高めることにつながった。県職員はMEを取得しても自らが点検業務をすることはないが、MEを取得した市町職員は外部委託費を軽減する効果もあるため、職員自身が点検業務に携わるからだ。

     

     さらに昨年11月には「社会人の学び直しに関する政府方針」が閣議決定され、AI(人工知能)やビッグデータなどを使った新たな時代をつくる人材輩出のための工学教育改革も進むなど、いまの流れを先取りする形で先行したME、道守養成には追い風が増している。

     

     同日のME養成講座修了者らによるワークショップでは、橋梁点検業務の応札でME取得を要件に義務付ける一方、出先事務所には必ずME取得者を配置する岐阜県は別にして、課題も浮き彫りになった。

     

     ある県職員は「資格の位置付けが不明確で資格を取得しても存在感が薄い」ことを指摘。一方、民間企業出身者からは、「民間は売り上げや利益を上げてナンボ。その意味で受注につながるインセンティブ(優遇措置)が必要」とした上で、「そのためにはME、道守が(応札要件として)選ばれる必要がある。強みは、点検、診断、設計、施工すべてに精通した技術者であることだ」と強調、公共発注者には一括発注、包括発注採用を提案した。

     

     民間企業もコンサルタントと地元ゼネコンが参加しており、微妙な関係であることも浮き彫りになった。具体的には「新設を対象にしていた土木屋(ゼネコン)が、これまで点検業務をしてきたコンサルの領域に参入することの障壁は大きい。対等の立場で双方にメリットがあることが必要だ」との指摘があった。

     

     このほかシンポジウムでは、ME新潟が18年度以降、ME養成講座をインフラメンテナンス講習会と名称変更し、北陸地方整備局が実施することや、MEの認定試験と認定証授与を行う協議会の事務局を新潟大に設置するなど、新たなスタートを切ることも紹介された。

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    掲載日: 2018年3月1日 | presented by 建設通信新聞

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