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  • 関西・四国の20年重大ニュース・新型コロナ影響も事業着々

     新型コロナウイルスの対応に追われた2020年が間もなく終わる。関西では近年、好調なインバウンド(訪日外国人客)に支えられ建設需要は堅調に推移してきたが、その流れに大きく水を差された形となった。しかし、一方で大型事業は着々と動いており、今後も建設業界の活躍が期待されている。関西・四国地区の建設産業に関連した20年の主なニュースを振り返る。

     

     

    ■プロデューサー決定/万博開催へ手続き着実

     万博開催に向け、必要な手続きを1つずつ着実に進めた1年となった。2020年の前半は「People's Living Lab(ピープルズ・リビング・ラボ)促進会議」で企業・団体からの提案を募集した。1000件を超える応募があり、万博への関心の高さをうかがわせた。

     

     7月にはプロデューサーを選定し、8月にロゴマークが決定、9月に内閣府に国際博覧会推進本部が設定され、井上信治元環境副大臣が国際博覧会担当大臣に任命された。そして12月には博覧会国際事務局(BIE、本部パリ)の総会で登録申請書が承認された。万博に必要な要素や方針が盛りこまれたマスタープランとなる基本計画も20年内にまとまった。

     

     会場デザインを担当するプロデューサーは建築家の藤本壮介氏、会場運営にはプランナーの石川勝氏に決まった。このほかにも各テーマ事業ごとに担当プロデューサー8人が就任した。

     

     会場の整備費は、当初の1250億円から1850億円に引き上げる。快適・安全のための施設整備や技術展示、多様な事業者の参加を募るための取り組み、構造設計を見直した大通りの大屋根設置などが理由となる。

     

     インフラ関係では大阪市が埋め立て・造成を進めるとともに・20年末には会場の基盤設計にも着手した。

     

     開催地となる大阪府と大阪市もパビリオンの出展に向けた検討を続けている。20年11月から出展についてのアイデアを募っている。アイデアは2月にも公開するとともに、有識者懇話会で検討し、今後策定する出展基本計画に反映させる。施設は22年度からの設計着手を予定している。

     

     

    ■うめきた2期着工/大阪駅の周辺開発

     

     大阪、ひいては関西の玄関口となるJR大阪駅周辺では、12月から「(仮称)うめきた2期地区開発事業」の工事がスタートした。2024年夏ごろの先行まちびらきと、27年度の全体開業を目指す。

     

     開発エリアの中央部に敷地面積4万5000㎡の都市公園を配置し、同公園を挟んで北街区と南街区にそれぞれ分譲棟と賃貸棟からなる総延べ約55万6500㎡の複合施設を整備する。

     

     開発事業者は三菱地所、大阪ガス都市開発、オリックス不動産、関電不動産開発、積水ハウス、竹中工務店、阪急電鉄、三菱地所レジデンス、うめきた開発特定目的会社。

     

     南街区賃貸棟は設計を三菱地所設計、日建設計、大林組、竹中工務店、北街区賃貸棟は設計を日建設計、竹中工務店が担当し、竹中工務店・大林組JVで先行的に着工する。残る施設の設計者と施工者は未定。事業地は大阪駅北大深西地区の土地区画整理事業区域内6街区ほか。

     

     大阪駅西側エリアには、JR西日本と大阪ターミナルビルが「新駅ビル(西北ビル)」を計画する。21年2月末から着工し、24年6月の完成、同年秋の開業を目指す。設計は東畑建築事務所・ジェイアール西日本コンサルタンツ設計共同体、施工は大林組・大鉄工業JVが担当する。

     

     規模はS・SRC造地下1階地上23階建て延べ6万0095㎡。

     

     あわせて新ビル隣接部の高架下開発や新改札口設置も進める。西側高架下に整備する新改札口は各ホームからのアクセスが可能で、大阪環状線ホームを西側に延長するとともに、ホーム上の設備を高架下に移転集約する。

     

     

    ■大和川線が開通/ミッシングリンク解消

     

     ミッシングリンク解消に大きな動きがあった1年だった。阪神高速道路会社と大阪府、堺市が整備していた「阪神高速6号大和川線」が3月に開通したほか、11月には近畿地方整備局が整備する北近畿豊岡自動車道のうち、「日高豊岡南道路」が開通した。NEXCO西日本管内の高速道路では、4車線化などの拡幅事業も最盛期を迎えている。

     

     大和川線は三宝出入口~三宅中までの9.7㎞。三宅西~三宅中までの0.6㎞は2013年に、三宝~鉄砲区間の1.4㎞は17年に開通しており、3月に残る7.7㎞が完成したことで全線開通となった。大阪都市再生環状道路の一部を構成し、渋滞の緩和や災害時の緊急車両通行路としての機能が見込まれる。

     

     大部分がトンネル区間となり、地震時に敢えて一部が破損することで全体の崩壊を防ぐ損傷制御型鋼製セグメントや矩形シールドトンネルなど最新の技術を盛り込んだ。

     

     日高豊岡南道路は日高神鍋高原IC~但馬空港ICまでをつなぐ6.1㎞の自動車専用道路。但馬地域には城崎温泉や神鍋高原などの観光資源があり観光の活性化や救急医療機関である豊岡病院とコウノトリ但馬空港へのアクセス向上などの整備効果がある。

     

     NEXCO西日本は、新名神高速道路や京奈和自動車道の新設路線以外にも「高速道路における安全・安心実施計画」に基づき拡幅事業を推進中。舞鶴若狭自動車道大飯高浜IC~小浜西IC間の3.6㎞や阪和自動車道印南IC~みなべIC間の6.5㎞などの優先区間を整備する。湯浅御坊道路の付加車線事業でも舗装工事が始まっている。

     

     

    ■低入多く競争激化/予定価格と応札金額乖離相次ぐ

     

     2020年は、昨年に引き続き入札の予定価格と応札金額の乖離(かいり)が相次ぐ1年だった。大阪府や大阪市では大型案件を中心に低価格入札が目立ち、特に大阪市では秋以降のWTO対象案件が軒並み基準価格調査の対象となった。11月に開札した「淀川左岸線(2期)トンネル整備工事-3」では予定価格と入札価格が100億円以上乖離しており、競争が激化しているのが見て取れる。

     

     一方、京都エリアでは全入札参加者の応札金額が予定価格を超過するケースが多く見られる。京都市が9月に開札したWTO対象の「京都市立芸術大学移転整備工事ただし、C地区建築工事」が価格超過のため不調となった。その後参加資格を見直し、10月に再公告している。3月に開札し同様に価格超過となっていた京都府済生会の「済生会京都府病院新築工事」では、最低札者と不落随契した。一方で、長岡京市では「長岡京市新庁舎等建設工事」が基準価格調査の対象になった。

     

     このほか、入札参加者がなく不調に終わるケースも散見される。各発注機関ではその都度工事内容や予定価格を見直しているが、抜本的な解決に至っていないのが現実だ。

     

     こういった流れの中で、NEXCO西日本は入札不調対策を強化している。4月1日以降に手続きする工事から価格超過の際に、最低札者と協議し妥当性を審査したうえで契約できる「協議合意方式」の対象をWTO対象未満の工事まで拡大。入札者と技術的協議を実施した上で妥当な予定価格を再算出した後、全入札参加者を対象に再度の見積もり競争を実施して落札者を決める「不落札協議」の対象はすべての工事に拡大した。さらに、低入札対策として価格評価基準額を見直している。

     

     

    ■鉄道NW構築前進なにわ筋線、大阪モノレール着工

     

     広域鉄道ネットワークの構築に大きく貢献する各種事業が大きく動いた1年となった。(仮称)北梅田駅とJR難波駅、南海本線の新今宮駅をつなぎ、大阪の都心部を南北に縦貫する都市高速鉄道なにわ筋線は2月に国から施行認可を取得した。2020年度は駅舎やトンネルなどの詳細設計に着手し、シールド区間や駅部の土木工事の受注者も決まった。30年度末の開業を目指し、整備が加速する。

     

     開業からことしで30年の節目を迎えた大阪モノレールの延伸事業も、4月に施行認可を取得。延伸区間は門真市新橋町から東大阪市若江西新町までの8.9㎞で、大阪メトロ長堀鶴見緑地線など4線と新たに結節し、ネットワーク機能を拡充する。ことし後半には支柱建設工事4件や車両基地工事などが発注されている。このほか、北陸新幹線(敦賀・大阪)も環境影響評価の手続きを鋭意進めている。

     

     

    ■トップ交代相次ぐ/井上万博大臣など官民の組織・団体で

     

     9月に井上信治国際博覧会担当大臣が就任するなど、官民の組織・団体でトップ交代が相次いだ。近畿地方整備局長に溝口宏樹国土交通省水管理・国土保全局水資源部長、NEXCO西日本の社長に前川秀和同社代表取締役副社長執行役員広報CS推進本部長、阪神高速道路会社社長に吉田光市損害保険ジャパン日本興亜顧問、都市再生機構西日本支社長に田中伸和東日本都市再生本部長が就いた。

     

     井上大臣は就任会見で2025年大阪・関西万博について、「国を挙げて取り組み、絶対に成功させる」と意気込みを示した。

     

     溝口局長は防災・減災とインフラ整備による近畿の活性化、地域建設業の発展などの施策に触れ「安全で夢のある関西であるように貢献したい」と所信表明した。

     

     民間団体では、兵庫県建設業協会の会長に松田隆松田組社長、建設業労働災害防止協会大阪府支部の支部長に蔦田守弘鴻池組社長、日本建築家協会近畿支部(JIA近畿)の支部長に津田茂T―Square Design Associates代表、滋賀県建築士事務所協会の会長に大村修大村建築設計事務所社長、兵庫県建築設計監理協会の会長に佐川圭創建設計事務所社長、大阪空気調和衛生工業協会の会長に池田隆之ダイダン取締役専務執行役員西日本事業部長兼大阪本社代表、兵庫県建築会の会長に山本康一郎山本設計社長、大阪府建団連の会長に山本正憲山本組社長、近畿建設躯体工業協同組合の理事長に山岡丈人山岡建設社長、大阪府土木建築協同組合理事長に三原金一三原組会長が選任されている。

     

     

    ■新型コロナが猛威/過去最大級の影響与える

     

     新型コロナウイルス感染症の拡大は、関西の建設業界に過去最大級の影響を与えた。自治体の発注関係では手続きの延期や事業自体を凍結するケースも見られ、IR事業でも、大阪で事業者公募を延期し、2025年の大阪・関西万博前の開業を断念したほか、和歌山でも事業者選定の審査途中でストップしている。

     

     業界団体の活動にも大きな打撃を与えた。緊急事態宣言が発令された4-5月は各種関係団体の総会シーズンだが中止や書面審議に切り替えるなど、対応を余儀なくされた。

     

     宣言解除後も自粛の空気感を拭うことはできず、イベントが軒並み中止となった。一方で、オンラインでセミナーや講習会、公開審査会が開かれるケースも多く見られた。

     

     このほか、各ゼネコンの安全大会も軒並み中止となった。21年は元に戻るのか、新たな方法を確立するのか、業界の知恵と工夫が問われる。

     

     

    ■三宮駅で再開発進む/22年度に解体・新築着手

     

     兵庫県下では、複数の交通機関の結節点となる三宮駅周辺と、その隣接駅で県庁舎に近い元町駅周辺でさまざまなプロジェクトが進められている。三宮駅周辺では雲井通5丁目再開発会社が延べ約9万6700㎡の複合ビルを建設する再開発を進めており、11月に特定事業参加者として三菱地所・三菱倉庫・神鋼不動産グループ、特定業務代行者として大林組を選定している。22年度から解体・再開発ビル新築工事に着手する。

     

     民間ビルでは阪急電鉄が「神戸阪急ビル東館建替計画」の工事を進めている。公共施設でも神戸市が本庁舎2号館の建て替えを計画するほか、本庁舎3号館跡地では新中央区総合庁舎の建設工事も行われている。JR元町駅の北側エリア(元町山手地区)では老朽化した兵庫県の本庁舎や県民会館などの公共施設を一体的に再整備する。3月には基本計画の骨子案が公表され、その後も検討委員会での議論が続けられている。

     

     

    ■四国の建設業界の動向

     

     新型コロナウイルスの影響は、大型公共事業の行程見直しという形で表面化した。

     

     香川県がサンポート地区に計画中の「新県立体育館」は、23年度だった開館時期を24年度に先送りすることを決めた。同体育館は中四国最大級の最大1万人収容のアリーナを要する。設計者との協議が進まないほか、感染症対策を取り入れた設計変更の必要が生じたことが理由だ。約181億円の工事費が膨らむ可能性が出てくる。

     

     高知県の「高知龍馬空港国際線ターミナルビル」もその1つ。基本・実施設計委託業務のプロポーザルを実施中だったが、審査委員会が開催できない状況が続いていたため、取りやめた。国際的な航空需要減少への対応も事業見直しに踏み切った背景の1つ。

     

     8月には新庁舎建設工事2件が相次ぎ“くじ引き”となった。土佐市新庁舎は、予定価格29億2800万円(税別)に対し、2JVが26億9376万円(同)で応札。香川・多度津町新庁舎は、34億5290万円に対して2社が28億3500万円(同)で同額になった。ともに延べ床面積6000㎡前後の“中規模”の部類だが、大手ゼネコンが狙わざるを得ないほど受注競争は激化している。あるゼネコン担当者は「新型コロナで海外案件がなくなった。国内を見ても、ここ1-2年で民間需要が急激に減った。支社・支店の存続をかけ、(規模は)そこそこでも参加条件に入っていれば手を出す」と口にする。

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    掲載日: 2020年12月28日 | presented by 建設通信新聞

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