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  • 回想2020/産業再生 コロナで加速/働き方、CCUSにも影響

     2020年が暮れようとしている。日本だけでなく世界が新型コロナウイルス感染拡大への対応に追われた1年だった。こうした中、政府は今月、8日に21年度予算編成の基本方針と国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策、11日に防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策、15日に20年度第3次補正予算案、21日に21年度予算案をそれぞれ閣議決定、15カ月予算による21年へ向けた“弾込め”は整った。建設産業界にとって新型コロナはどのような影響を与えたのか。行政や業界、企業、担い手などそれぞれの1年を振り返る。

     

     世界各国は、感染防止対策と経済下支えのため財政支出を拡大させている。日本も同様で、20年度第3次補正予算案は、▽新型コロナ感染拡大防止▽ポストコロナへ向けた経済構造転換・好循環の実現▽防災・減災、国土強靱化推進など安全・安心の確保--の3施策の追加歳出額は19兆1761億円。21年度予算案の一般会計総額106兆6097億円を加えた15カ月予算は、125兆7858億円まで拡大する。昨年12月の19年度補正と20年度当初予算を合わせた昨年の15カ月予算よりも19兆円弱ほど多い。

     

     また今年度で終了する「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」の後継施策として、事業規模15兆円程度の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」も決定、20年度3次補正予算案には5か年加速化対策分で公共事業関係費として国費1兆6500億円、事業費2兆3973億円が計上された。強靱化加速化対策の初年度となる21年度予算分が、3次補正予算として手当されたことに建設業界は胸をなで下ろした。

     

     一方、建設産業の構造転換を阻む最大の課題と言われながらこれまで解決への道のりが遠かった「生産システムの重層構造」。その解消に向け大きく前進しそうな予感をさせたのもことしのトピックスだ。

     

     11月30日、国土交通省と建設業4団体との間で行われた意見交換の席上、建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用促進へ向け赤羽一嘉国交相はこう言い切った。

     

     「本気でシステムを回さなければならない。そのためには国交省として自治体への仕掛けを検討してアプローチする」

     

     立ち上げの資金拠出など民間主導の形を取ってきたCCUSの拡大へ黒子役に徹してきた国交省だが、自治体のシステム活用へ向けより強く関与する姿勢を大臣が見せた形となった。

     

     そもそも建設産業界の構造転換は、特に平成時代に入って市場が大きく落ち込むたびに浮上しては消える話題の代表格だった。近年、人口減少と高齢化が日本の構造問題として大きくクローズアップされ、中長期的にこの問題が建設業経営と生産システムに大きな影響を与えるとして建設業界自体が構造転換を模索した。

     

     その1つが、日本建設業連会が過去に提案した「元請けの取り引きは原則2次まで(設備工事は3次まで)」を明記した要綱。重層構造改善への狙いもあった。その後、市場拡大に合わせながら社会保険加入促進を行政と業界が最優先したことで、構造改善への大きな動きは影を潜めることになる。

     

     しかしIT化、BIM・CIMの浸透など建設DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みは、新型コロナ感染拡大を契機に一気に拡大する。1つは中小企業支援策としてIT機器購入がしやすくなったことと、24年4月からの時間外労働時間上限規制適用で課題だった現場についても、書類削減や工期平準化といった行政支援に加え、コロナ対応として業務効率化に中小企業も取り組み始めたことが背景にある。

     

     もう1つ、建設DXへの取り組みと関心が一気に高まったのは、菅政権が打ち出した脱炭素などグリーンを柱にした新成長戦略を進める上で、生産性が低い産業に対し、労働生産性の向上を見える形で求める動きが進み始めたことも理由だ。

     

     そもそも人口減少下、これまでと同じ生産システムを続けることは生産性向上の視点からもできない。ただ一品生産が特徴の建設構造物のすべてを工場生産で賄い、省力化や自動化を進めることは不可能だ。部材の取り合い部で職人が関与することは避けられず、一定の技能労働者を今後も確保しなければならない。

     

     AI(人工知能)やITを使った自動化やプレキャストなどの工場制作といった生産システムを順次効率化していっても、技能労働者の確保・育成は欠かせない。そのためには、これまで以上の処遇改善を実現するためには課題だった産業構造も転換させなくてはならない。

     

     だからこそ、国交省と日建連や加盟企業トップだけでなく、地方建設業が加盟する全国建設業協会や全国中小建設業協会、さらには専門工事業界の全国組織である建設産業専門団体連合会の4団体が、今後の建設産業再生へ向けた一歩であり産業構造転換につながるCCUS活用拡大に期待を寄せる。

     

     いま、強靱化加速化対策が決まり、一定の工事量確保に安堵感が建設業界に広がる一方で、企業トップにはある警戒感も漂い始めている。

     

     「15カ月予算により今後、業務・工事の発注が広がるのは確実。赤字など無理な受注は避けるべきだが、人手不足を理由に入札不調が起きることは避けなければならない」

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    掲載日: 2020年12月28日 | presented by 建設通信新聞

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