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鹿島/4月から下請2次に限定/重層構造改善に本腰/次数増は支店長許可
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>鹿島は、4月からスタートする次期中期経営計画(2022年3月期-24年3月期)中に、建築工事の設備業を含む協力会社の請負次数を2次までに限定する。既に協力会・鹿栄会と協議を進めており、4月からは3次が必要な場合、理由を明示して支店長許可制とする。押味至一社長は「この3年で何としてでもやる」と実施に強い意志を示している。建設業界では、重層構造の改善の必要性が以前から指摘されており、鹿島の取り組みが業界全体での取り組みの呼び水となる可能性がある。
押味社長が、日刊建設通信新聞社などとの新春インタビューで明らかにした。
下請次数を2次に限定する理由について、「建設キャリアアップシステム(CCUS)で技能者の処遇を改善する仕組みは、重層構造をやめない限り、絶対に成り立たない」と強調した。CCUSは、技能・実績が高い技能者ほど高い処遇を受けられるという制度設計になっているものの、下請次数が3次より多い状態になると労務費がどの程度技能者本人に行きわたっているか把握できない。本当にCCUS上の評価に応じた処遇になっているかが不明で、技能者がCCUSに登録する理由付けが薄れるという考え方だ。
具体的には、「これまで、1次が材料などを手配して2次が施工する中で、足りない労務分を2次が3次を集めて契約していた。これを今後は、2次が連れてきた協力会社と1次が請負契約を結ぶ」。1次は、技能者を管理する職長を増やす必要があり、「そのための経費は当社で対応する」とした上で、「もし1次との契約が難しい特殊技能を持つ3次の場合は、当社が1次として契約する」という。
労務費については「契約時に価格の内訳を明示してもらう」。CCUSで現場ごとの1日の技能者数が分かれば、「2次までであれば、元請けとして支払った労務費が十分だったのか、不十分なのかがある程度分かる」とした。元請けが支払った労務費が 十分であれば、CCUSの能力評価に応じて処遇されていることが確認できるとの考えだ。
1次が2次に支払っていた管理経費がなくなることになり、2次から一定の反発も想定されるが、「鹿栄会会員に協力を仰ぐしかない。いつまでも重層構造を続けていたら、本当に3次の担い手がいなくなってしまう」と強い危機感を表した。
■解説/2次限定方針は理想実現の壁を破る
技能労働者の就労状況や技能を把握して、その評価に応じた処遇が受けられる仕組みをつくる構想は、過度な価格競争によって建設業全体が疲弊していた2010年に国土交通省内部で議論されていた。実際に国交省が12年7月にまとめた『建設産業の再生と発展のための方策2012』には、そうした考え方が縷々(るる)綴(つづ)られている。元請けの価格競争によって技能者にしわ寄せが生じる流れをどこかで止めなければ建設業が崩落するという強い切迫感の中での議論だった。だが、当時は結局、民民契約と重層構造という壁にぶつかり、理念を記載するにとどまった。
その後、この思いが「建設キャリアアップシステム(CCUS)」という形で具現化された。東日本大震災後の需要増加で建設業が息を吹き返した中で、需要増による労務単価の上昇というスパイラルアップを定着するためのシステムがCCUSの位置付けだった。
ところが、普及段階になり、「技能者が登録のメリットを感じられない」という議論が巻き起こるようになった。もともと建設工事価格の下落圧力の中でも、技能者が実績と能力に応じた処遇を受け続けられるようにするための仕組みであり、それ自体がメリットであるはずだったが、費用負担からメリットが感じられるようになるまでのタイムラグが大きかった。その上、「本当に評価どおりの処遇が受けられるのか」という潜在的な懐疑心が根源にあるとみられる。その懐疑心が晴れない限り、建設業退職金共済との連携といった“にんじん”をぶら下げても大きな進展は期待できなかった。
懐疑心の背景にある最も大きなポイントが“重層構造”だろう。これを理解している日本建設業連合会は、生産性向上推進を決めた際に、あわせて重層構造の改善方針も示していた。ただ理念先行の感が否めず、実際に方針どおりになったとは言い難い。多くのゼネコン幹部が「CCUSによる技能者の処遇改善には重層構造の改善が不可欠」との認識を持っていながら“解”を見つけられないでいた。
そうした中で、鹿島の押味至一社長が、日建連がかつて示した重層構造改善方針である建築の次数「3次」をも超える、全職種「2次限定」の方針を示したことは、業界にとって大きな一歩になる可能性がある。CCUSによって構築しようとしていた世界の実現を阻む壁を突き抜けようという強い意志を感じる。今後、業界がこの取り組みにどういう反応を示すのかが、建設業の未来にとって大きなポイントになる可能性がある。(竹本啓吾)
残り50%掲載日: 2021年1月4日 | presented by 建設通信新聞