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  • 関西支社新春企画(3)【万博契機に東西軸の復権目指す/府市連携で都市軸を再構築/大阪市副市長/高橋 徹氏】

    【万博契機に東西軸の復権目指す/府市連携で都市軸を再構築/大阪市副市長/高橋 徹氏】

     

     大阪・関西万博を控えた大阪市が未来社会を見据えた都市政策を進めている。万博の開催地となる夢洲をはじめ、うめきたや新大阪、大阪城東部地区など、大規模な面的整備の計画があり、これを支えるためのインフラ整備も着実に動き始めている。高橋徹大阪市副市長に市が目指す都市の将来の姿を聞いた。

     

    --大阪市内の都市政策のポイントについて

     

     「まずは大阪・関西万博を契機に夢洲には、統合型リゾート(IR)を中心とした国際観光拠点を形成していく。大阪のまちを形づくってきた都市再生の取り組みを2025年の万博に向けてさらにステップアップし、臨海部から大阪城東部地区に至る『東西軸の復権』を目指したい」

     

     「JR環状線、地下鉄中央線の森ノ宮駅周辺に位置する大阪城東部地区では、大阪府立大と市立大が統合して誕生する新大学の象徴となる森之宮キャンパスを25年4月に開所する計画である。施設の完成を契機に「大学とともに成長するイノベーションフィールドシティ」として新たなまちづくりがスタートする。大阪城公園や京橋駅周辺、大阪ビジネスパークと連携し新しい東の拠点を形成していく」

     

     「臨海部と大阪城東部地区の中間にある中之島でも新美術館や未来医療国際拠点の整備を進めている。東西軸に沿った拠点の形成によって都市の活力を生み出したい」

     

     「大阪都市圏全体の視点で府市連携して、南北軸のさらなる強化も進めていく。北大阪急行が箕面市まで延伸され、箕面から千里中央、新大阪、梅田、難波、天王寺、中百舌鳥、関西国際空港までを大きな軸としてつなげていく。リニア中央新幹線、北陸新幹線の整備を契機にスーパー・メガリージョンの西の拠点となる新大阪では、国・府等とまちづくりのコンセプトを議論しているところであり、開発の機運を醸成し、開発のプレーヤーを浮き上がらせていきたい」

     

     「万博のテーマ『いのち輝く未来社会のデザイン』と同じ方向性の目標『ライフ・デザイン・イノベーション』でまちづくりを進めているうめきた2期は、万博開催の1年前に先行まちびらきする。プレ万博として未来社会の実現を実証し、大阪の魅力を感じてもらいたい。この新大阪とうめきたは一体の視点で捉えていきたい」

     

    --インフラ整備について

     

     「大阪全体の成長に資するインフラ整備も府市が連携して再構築していく。なにわ筋線は31年春の開業をめざしており、大阪都心と関西国際空港との鉄道アクセスを強化するなど、南北軸を引き立たせる」

     

     「関西の高速道路網は首都圏等に比べて整備が遅れており、大阪は環状リングが阪神高速1号環状線しかない。大阪都市再生環状道路を早期に整備し、都心通過交通の転換等を図り、都市の魅力と活力アップにつなげていく。現在、淀川左岸線の2期と国直轄の延伸部の事業が進んでいる。2期事業は万博時に会場へのシャトルバスのアクセスルートとして利用する予定で現在、鋭意工事を進めている」

     

    --コロナ禍に対応した都市のあり方について

     

     「人と人との接触を制限するなど人の生活様式が変わってきた。これまで進みにくかった行政のスマート化などDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるきっかけにしたい」

     

     「ただ、テレワークで活動範囲が自宅周辺にとどまるような生活様式になると、都市のあり様が問われてくる。文化や芸術・学び・交流などが体験できるような魅力をしっかりとつくり込み、都市の求心力を高め、都心に足を伸ばす動機となるような政策も併せて進めていきたい」

     

    【広域連携進め成長・発展/東西2極の1極として役割果たす/大阪府副知事 田中 清剛氏】

     

     大阪が東西2極の1極として、副首都の役割を果たしていくためには「成長戦略」の推進、それを牽引する社会資本の整備がぜひとも必要だ。一方、激甚化・頻発化する災害に備え、府民の「安全・安心」を確保するための防災・減災対策の推進も、喫緊の課題となっている。

     

     府下では大型プロジェクトが着々と進んでいる。鉄道については、「公共交通戦略」を2019年11月に改定した。なにわ筋線は2030年度末、北大阪急行延伸は23年度、大阪モノレール延伸は29年の開業を目指している。

     

     道路は、「大阪都市再生環状道路」の形成に向け、大和川線が昨年3月に全線供用を行い、淀川左岸線の2期と延伸部が事業中である。また、道路ネットワークの拡充に加え、鉄道との連続立体交差事業にも力を入れており、現在、南海本線・高師浜線など4路線で事業中。なお、「都市整備中期計画(案)」の改定作業を進めており、主な新規事業個所などを公表していく予定だ。

     

     さらに、港湾については、昨年10月に府市の港湾局を統合した「大阪港湾局」を共同設置した。今後、各港の特性を生かし、国際競争力の強化や利用者ニーズに合った使いやすい港づくりを進めていく。

     

     一方、まちづくりについては、「グランドデザイン・大阪」などに基づき、府市連携で拠点開発を進めていく。うめきた2期では、24年夏の先行まちびらきに向け、昨年12月には民間の建築工事が開始された。新大阪駅周辺地域では「まちづくり方針の骨格」を19年3月にまとめ、引き続き、民間開発の機運醸成に繋げるプロモーション活動を行っていく。

     

     また、大阪城東部地区では、昨年9月に「まちづくりの方向性」をまとめ、今後、新大学を先導役として特色あるまちづくりを推進。さらに、夢洲での万博開催・IR誘致を機に、ベイエリア全体の活性化を促進するため、推進本部を設置し、今春をめどにビジョン(案)を取りまとめる予定だ。

     

     大規模自然災害への備えとしては、老朽化が進む3大水門の更新や六軒家川などにおける防潮堤の液状化対策。寝屋川流域では大深度地下を使用した地下河川などの総合治水対策。安威川上流では洪水調整と環境保全を目的とした安威川ダムの整備を進めていく。

     

     万博関連のインフラ整備は、今後、国で関連公共事業が取りまとめられるが、会場周辺だけでなく、広域からのアクセスや安全性、にぎわい・魅力向上の視点も重要。特に輸送に関しては、予約、キャッシュレス、セキュリティーチェックなどが一体となった仕組みで、アクセス・入場・入館の平準化、待ち時間の解消を図るべきだと思う。

     

     地元自治体としても機運醸成を図るために、府民などの寄附金で2025本の桜を植樹する「万博の桜2025」プロジェクトや、地元パビリオンの出展などにも力を入れていく。

     

     このほか、インバウンドの回復を目指した観光戦略、先端技術の活用や大胆な規制緩和などによるスマートシティ戦略、アフターコロナにおける新たな生活様式、これらを推進するためのまちづくりを公民一体となって進めていく。

     

     今後も大阪府・大阪市の連携を一層強化するとともに、市町村が抱えるさまざまな課題に対して地域全体で対応する「広域連携」を進め、大阪全体の成長・発展に向けた取り組みを推進していきたい。 

     

    【うめきた2期・大阪駅周辺/関西最大のターミナルに新たな街】

     

     大阪市の大阪駅北側で都心最後の1等地と呼ばれてきた うめきたの2期開発事業が2020年12月に着工した。同駅前に総延べ55万㎡の施設と、約4万5000㎡の都市公園で構成する新たな街が関西最大のターミナルに誕生する。24年夏の先行まちびらきと、27年度の全体開業を目指している。

     

     事業では「Osaka MIDORI LIFEの創造」を計画コンセプトとして掲げた。これまでの都市づくりのパラダイムを超えて、国籍や年齢、性別、障がいの有無など、多様性を受け入れて知恵を分かち合い、QOL(生活の質)の向上を感じられる社会の構築に貢献していく。

     

     整備する施設は、南街区の賃貸棟(延べ31万4250㎡)と分譲棟(9万3000㎡)、北街区の賃貸棟(6万4200㎡)、分譲棟(8万5000㎡)で構成する。

     

     このうち南街区賃貸棟は、設計を三菱地所設計、日建設計、大林組、竹中工務店、北街区賃貸棟は設計を日建設計、竹中工務店が担当し、両棟とも竹中工務店・大林組JVの施工で工事に着手した。残る施設の設計者と施工者は未定。

     

     一方、大阪駅周辺では、JR西日本と大阪ターミナルビルがJR大阪駅西側エリアに「新駅ビル(西北ビル)」の建設を計画している。設計は東畑建築事務所・ジェイアール西日本コンサルタンツ設計共同体、施工は大林組・大鉄工業JVが担当する。21年2月末から着工し、24年6月の完成、同年秋に開業させる。

     

     規模はS・SRC造地下1階地上23階建て延べ6万0095㎡。うち約2万3000㎡をオフィスとし、中層部には商業ゾーンを配置して、にぎわいや憩いの場を創出する。低層部には広場空間を設け、うめきた2期地区開発と連携し、周辺地区での歩行者の回遊性を向上する。

     

     新ビル隣接部の高架下開発や新改札口設置も進める。西側高架下に整備する新改札口は各ホームからのアクセスが可能で、大阪環状線ホームを西側に延長するとともに、ホーム上の設備を高架下に移転集約する。

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    掲載日: 2021年1月4日 | presented by 建設通信新聞

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