建設技術者向けNEWS
建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!
-
関西支社新春企画(2)【日本の良さ生かしたPM探る/人と人が交流する世界つくりあげる/山下PMC社長/川原 秀仁氏】
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>コロナ禍に見舞われた1年だったが、大阪では2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)が開催される25年をターゲットイヤーとした大規模開発プロジェクトが目白押しで、これを支える大型の道路・鉄道インフラの整備も活発となってきた。3氏のインタビュー・寄稿とともに、進行中のビッグプロジェクトを紹介する。
【日本の良さ生かしたPM探る/人と人が交流する世界つくりあげる/山下PMC社長/川原 秀仁氏】
関西では2025年大阪・関西万博の会場整備に向けた動きが進んでおり、昨年5月にはそのプロジェクトマネジメント(PM)業務の受託者が山下PMC・阪急コンストラクション・マネジメントJVに決まった。注目のビッグプロジェクトだけに「責任とプレッシャーを感じる」という山下PMCの川原秀仁社長に意気込みなどを聞いた。
--受託業務の内容は
「2025年日本国際博覧会協会が推進する各種検討と設計・施工などの業務のプロジェクトマネジメント戦略を検討・立案し、さらに20年度に必要となる発注図書などの整備を支援するもの。プロジェクトマネジメントの体系を構築し、開催までの5年間のロードマップをつくりながら発注戦略や運営の調整、基本インフラとの調整、総合的な工事計画の作成や工事関連車両の予測など多岐にわたる業務を手掛けることになる」
「当社には大規模スポーツ大会を含む数々のPM業務の実績があり、その経験やノウハウを注ぎ込みたい。5年という期間は長いようで短い。発注者のビジョンをくみ取りながら合理的・効率的に物事を進めなければならない」
--PM業務、ひいては万博を成功に導くポイントは
「遅延させずに万博を開催するという観点では、ジャストインタイムで工事を発注していくことが重要だ。例えばパビリオンは、主催者が参加者に敷地を渡して参加者がパビリオンを建設するタイプA、主催者がモジュールパビリオンを建設するタイプB、主催者が共同館を建設するタイプCに分かれる。このうちBとCはこちらが工事をコントロールするが、工事が輻輳しないよう参加者それぞれが建設するAの動向を見ながら総合的に判断しなければならないだろう」
「より地域に根付き、市民のマインドと行政のマインドをバランス良く融合することも不可欠だ。当社はこれまで関西に拠点はなかったが、近年は関西圏の業務が増えていることもあって、この業務の中継基地ともなるサテライトオフィスを設置した。当初は20人体制でスタートするが、必要に応じてスタッフは増やしていくことになる。大阪に本社を置く阪急コンストラクション・マネジメントと一丸となって業務に取り組んでいく」
「この万博は日本が先進国を維持できるかを問われるものだと考えている。世界にどう日本をPRし、新たなビジネスの場を提示し、人と人が交流する世界をつくりあげられるか注目されている」
「また、万博の運営におけるポイントは交通動線だと思う。海上運送という手もあるが、これを実現するにはさまざまなハードルがある。やはり陸上交通をどうプログラムするかが重要となる」
--こうしたビッグプロジェクトも含めてPMやCM業務が増えてきた
「PMやCMは売り手(発注者)よし、買い手(受注者)よし、社会よしの三方よしが基本となる。日本よりも契約社会の欧米などの方が適しているように思うが、日本の技術者は全員がきちんと顧客の方を向き、方針が決まれば一丸となって進んでいくことができるなど、日本の良さを生かしたPMがあるはずだ。万博の業務で日本の商習慣に合うマネジメント手法をつくり出したいと思っている」
【大阪・関西万博/準備活動が本格化 来年度から実証実験も】
2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の開催準備が着実に進んでいる。20年は新型コロナウイルスの影響を受けながらも、7月にプロデューサーを選定し、8月にはロゴマークが決定、9月には内閣府に国際博覧会推進本部が設定され、井上信治元環境副大臣が国際博覧会担当大臣に任命された。そして12月には博覧会国際事務局(BIE、本部パリ)の総会で登録申請書が承認され、万博に必要な要素や方針が盛りこまれたマスタープランとなる基本計画もまとまった。21年は準備活動がいよいよ本格化する。
会場デザインを担当するプロデューサーには建築家の藤本壮介氏、会場運営にはプランナーの石川勝氏が就任した。このほかにも各テーマ事業ごとに担当プロデューサー8人が決まり、連携をとりながら万博を成功に導く。
20年末には会場の基盤設計にも着手した。万博会場予定地のうち92haを、A-Dの区分に分け、整地、排水、汚水、給水、道路の各設計を実施する。B区域(20.1ha)とC区域(34.6ha)は22年度、A区域(7.3ha)とD区域(30.0ha)は23年度から工事に着手する。21年9月までにすべての設計を完了し、工事明細書作成に着手する。
会場の整備費は、当初の1250億円から1850億円に引き上げた。内訳は利用者の快適・安全のための施設整備が320億円、技術展示や多様な事業者の参加を募るための取り組みが110億円、構造設計を見直した大通りの大屋根設置などが170億円となる。
万博会場では会場整備までの期間を利用した最先端技術の実証実験も計画されている。実験は▽先進的なまちづくり▽IoT(モノのインターネット)、ロボットテクノロジー▽自動運転▽ドローン▽AI(人工知能)▽ヘルスケア▽オープンデータ、ビッグデータ--の7分野から10件を選考し、21年度当初ごろから22年夏まで実施する。
開催地となる大阪府と大阪市では、パビリオンの出展に向けた検討を進めている。構想案によると、パビリオンはエントランスゾーン、展示・体験ゾーン、イベント・交流ゾーン、サービス・食体験ゾーン、バーチャル大阪館(仮称)などで構成する。
施設の具体化に向けては20年11月から出展についてのアイデアを募っている。出展のテーマは新たな1歩を踏み出すという意味を込め「REBORN(リボーン)」と設定した。出されたアイデアは2月にも公開するとともに、有識者懇話会で検討し、今後策定する出展基本計画に反映させる。22年度からの設計着手を予定している。
【スーパーメガリージョンの拠点に/新大阪の開発】
現在、東海道新幹線と大阪メトロが発着し、将来的には北陸新幹線とリニア中央新幹線の全面開業によるスーパー・メガリージョンの形成に向けた拠点となることが期待される新大阪駅では、これら動きに合わせた駅周辺地域の再開発が検討されている。
まちづくりの検討組織となる新大阪周辺地域都市再生緊急整備地域検討協議会(大阪府・市と国、経済界などで構成)が、これまでに4回の会合を開き、都市開発や公共施設整備に結びつけるまでの道筋について検討を重ねている。
2020年3月に公表した「まちづくり方針の骨格」によると、新大阪を世界一の広域交通ターミナルのまちづくりを実現するため、▽交流促進(スーパーメガリージョンの西の拠点)▽交通結節(広域交通ネットワークの一大ハブ拠点)▽都市空間(関西・西日本・アジアから人を迎え入れる国際都市のゲートウェイ)--の3つの都市機能を持ったまちづくりを進めることとした。
20年10月の第4回会合では、交通結節機能や周辺地域のプロモーションについて協議した。交通結節機能強化に向けては、関係基盤整備の連携や新大阪駅交通広場での立体的な空間利用の促進、地域内の回遊性を高めるシームレスな交通システムの実証などが提示された。協議会メンバーを中心に、管理者、関係事業者、学識経験者の協力を得ながら検討を進めている。プロモーションについては、最終的には民間都市開発などの機運醸成や実現につなげることを狙いとして、国内外への情報発信手法などを検討する考えだ。
【大学と連携したまちづくり 民活整備も導入/大阪城東部地区】
大阪の都心に残された最後の大規模用地と呼ばれる大阪城東部地区(エリア面積約53ha)で大学を核としたまちづくりの検討が進んでいる。大阪府立大と市立大が新たに設置する大阪公立大学の新キャンパス整備に併せ、エリア全体のまちづくりを段階的に進めていくビッグプロジェクトとして注目されている。
大阪府・市が設置したまちづくり検討会(会長・田中清剛大阪府副知事)がまとめた同地区の方向性案によると、「大学と共に成長するイノベーション・フィールド・シティ」をコンセプトとして設定し、土地利用を▽イノベーション・コア▽親水空間+立体活用▽多世代居住複合▽拡張検討--の4ゾーンに分けた。このうち、イノベーションコアに大学の森之宮キャンパスを整備する。整備に向けてはCM(コンストラクション・マネジメント)業務の委託者選定手続きを進めており、2021年1月中旬にも特定する。25年4月の開校を目指している。
キャンパス整備後は、大学施設の関連機能を中心とした施設整備を1.5期事業として誘発させる。民間活力の導入を想定しており、対象となる施設や対象範囲、事業スキームなどの検討にも着手している。インフラ関連では鉄道施設上部で東西移動の導線確保に向けた事業手法を検討する。
府・市では土地の高度利用を図る手法として、都市再生緊急整備地域における容積緩和の特例措置や都市計画手法の活用なども想定している。
残り50%掲載日: 2021年1月4日 | presented by 建設通信新聞