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  • 2021年 展望(2)

    【菅政権誕生+2050CN表明/建設業にも求められる取組み】

     

     2020年9月の自民党総裁選で勝利した菅義偉前内閣官房長官が、第99代内閣総理大臣に就任し、菅政権が誕生した。前政権が最重要政策とした経済再生を継承しつつ、50年カーボンニュートラルによる脱炭素社会の実現や、デジタル化などの独自色も打ち出し、日本の成長に貢献する新たな分野の改革に乗り出した。特に脱炭素化は、あらゆる産業や国民のライフスタイルに影響を与える政策で、建設現場のさらなるCO2排出削減や、省エネ性能の高い住宅・建築物の建設など、建設業も取り組み強化が求められることになる。

     

     50年カーボンニュートラルは、20年10月に開会した臨時国会の所信表明演説で菅首相が表明した。「菅政権では、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力する」と切り出し、「わが国は、50年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち『2050年カーボンニュートラル』、脱炭素社会の実現を目指すことをここに宣言する」と力を込めた。

     

     「温暖化への対応は経済成長の制約ではない。積極的に温暖化対策を行うことが産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要」と指摘した上で、次世代型太陽電池、カーボンリサイクルなど、社会実装を見据えた脱炭素化技術の研究開発を革新的イノベーションによって加速化する姿勢を鮮明にした。

     

     民間企業による脱炭素技術の開発を10年間にわたって継続支援するため、政府は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に基金を創設する。20年度第3次補正予算案で、基金に積む2兆円を確保した。

     

     また、新型コロナウイルス感染症の拡大でデジタル化の遅れが浮き彫りになったため、デジタル庁を新設し、同庁を司令塔としたデジタル改革を進める考えを所信表明演説で表明。「役所に行かずともあらゆる手続ができる。地方に暮らしていてもテレワークで都会と同じ仕事ができる。都会と同様の医療や教育が受けられる。こうした社会を実現する」と、デジタル改革で目指す社会の姿を明示した。政府はデジタル庁を9月発足にさせるため、IT基本法改正などの関連法案を18日召集の通常国会に提出する。

     

     菅首相は国土強靱化にも触れ、「水害や地震などの自然災害が相次ぐ中で、防災・減災、国土強靱化は引き続き大きな課題。省庁、自治体や官民の垣根を越えて、災害の状況を見ながら、国土強靱化に取り組み、災害に屈しない国土づくりを進める」と力を込めた。政府は20年12月に策定した「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の下、21-25年度に事業費15兆円程度を確保し、事前防災対策、インフラ老朽化対策、国土強靱化施策のデジタル化を集中的に進める。

     

     東日本大震災からの復興については、「例え長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域のすべてについて避難指示を解除する決意は揺るがない。福島の復興なくして、東北の復興なし。東北の復興なくして、日本の再生なし」と強調し、全力で復興に取り組む姿勢を改めて示した。

     

    【50年カーボンニュートラルへ/発想の転換で強力に推進/】

     

     政府は2020年12月、菅政権として初の成長戦略実行計画をまとめた。同10月の所信表明演説で菅義偉首相が打ち出した“50年カーボンニュートラル”を目指しつつ、経済成長を図る「グリーン成長」を第1の柱に掲げ、脱炭素化へとかじを切った。地球温暖化への対応を制約やコストと考える時代は終わり、成長の機会と捉える時代に突入した。社会・経済の変革にいち早く適応した者が、成長の果実をつかむ。

     

     実行計画は、ポストコロナ時代を見据え、グリーン成長、企業の事業再構築、人への投資強化、デジタル化、国土強靱化、地方創生などを政策の柱に設定。グリーン成長の項目には「積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要」と記述し、革新的イノベーションによる脱炭素技術の加速度的な促進、グリーン投資の普及、環境関連分野のデジタル化などを政府として強力に進める姿勢を示している。

     

     これを具体化するため、20年12月にグリーン成長戦略を策定した。成長が期待される産業として、土木インフラ産業や住宅・建築物産業など14分野を選定。温室効果ガスの排出削減や脱炭素技術の需要拡大・コスト低減などの高い目標を分野別に設定し、50年カーボンニュートラルに向けた取り組みの工程表も明示した。予算、税制、金融、規制改革などあらゆる政策を総動員し、脱炭素化の挑戦に取り組む民間企業を全力で支援する政府の決意を明確に示している。

     

     建設関係は、建設施工で50年カーボンニュートラルを目指す。短期の取り組みとして中小建設業にICT施工を普及させ、30年のCO2排出を3万2000t削減する。中長期では、直轄事業で使用を原則化することで革新的建設機械(電動、水素、バイオなど)の導入を拡大するとともに、革新的建設機械の基準を策定する。

     

     住宅・建築は、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の取り組みを一層進める。建築物省エネ法に基づく住宅トップランナー基準をZEH相当水準に引き上げる。ZEBは実証事業を行うとともに、事業者への支援で導入を拡大する。こうした取り組みにより、30年に新築住宅・建築物の平均で1次エネルギー消費量の収支ゼロを目指し、21世紀後半の早期にはストックの平均でも実現する。

     

     カーボンリサイクルでは、CO2吸収型コンクリートについて、30年に既存コンクリートと同水準の価格を目指す。50年には防錆性能を有する新製品を開発し、建築物やコンクリートブロックに用途を拡大。これらの目標達成に向け、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)にCO2吸収型コンクリートを登録し、国と地方自治体が公共工事に活用することで需要を創出する。アジアへの販路拡大に向けた国際標準化にも取り組む。

     

     大手や準大手のゼネコンが参画している洋上風力は、国が40年までに3000-4500万kWを導入する。国の導入目標の下、産業界は大規模に投資して工場を建設するなど国内でサプライチェーンの形成を進め、40年にサプライチェーン(供給網)の国内調達率60%などを目指す。

     

     洋上風力を含む再生可能エネルギーは最大限導入することとし、50年発電量の50-60%を再エネで賄うことを参考値として、目標値の議論を今後深める。

     

    【経団連カーボンニュートラル/実現に不退転の決意】

     

     経団連(中西宏明会長)は昨年12月、「2050年カーボンニュートラル(Society 5.0 with Carbon Neutral)実現に向けて-経済界の決意とアクション-」とする提言を発表した。菅義偉首相が宣言した「2050年カーボンニュートラル」を受け、産業革命以来の人類とエネルギーとの関わりの抜本的変革、主要産業の生産プロセスの革新、運輸・民生部門での革新的製品などの大規模な普及や生活様式の転換について、経済界は政府とともに不退転の決意で取り組む。

     

     提言ではカーボンニュートラルの実現に向けて「経済と環境の好循環」を前提とし、イノベーションの創出とその内外市場への展開、ゼロエミ・エネルギーの安価・安定供給による産業競争力強化、次世代電力・水素供給システムなどの大規模インフラ、脱炭素化に資する生産設備・輸送機器・住宅などへの投資促進を通じた需要刺激を推進する。

     

     具体的には、▽イノベーションの創出▽投資循環による電力システムの次世代化▽サステナブル・ファイナンスの推進▽イノベーションの海外展開--を柱に各種施策を展開する。経団連はエネルギー基本計画、地球温暖化対策計画などに関する政府の議論に対応しながら、今後の提言活動や「チャレンジ・ゼロ」などに主体的に取り組んでいく。

     

    【中小企業支援/コロナ後見据え経営基盤を強化】

     

     政府は昨年12月、新たな成長戦略の実行計画を決定した。その中で打ち出す“足腰の強い中小企業の構築”に向け、ポストコロナを見据えながら、中小企業の経営基盤を強化することで、中小企業から中堅企業へと成長し、海外で競争できる企業を増やす。また、地域の経済や雇用を支える小規模事業者の持続的な発展を重視。中小企業の経営資源の集約化による事業の再構築やデジタル化などで中小企業の生産性を高めるとともに、創意工夫する企業を応援していく。

     

     具体的には、経営資源の集約化(M&A)に伴って譲り渡しを受ける中小企業の税制面の支援、中堅企業への成長途上にある企業への補助金や金融支援、中小・中堅企業の規模拡大、新分野展開、業態転換などを通じた事業再構築の支援などを検討する。

     

     このほか、大企業と中小企業の連携促進に向け、「パートナーシップ構築宣言」企業を600社から1000社への拡大を目指す。スタートアップ企業と出資者との契約の適正化に関する方策も検討する。中小・中堅企業の経営を担うことができる人材の裾野を広げるため、中小企業診断士制度のあり方を検討する方針だ。

     

    【5次社会資本整備重点計画/賢く投資・賢く使う】

     

     国土交通省は、今春の閣議決定を目指して、第5次社会資本整備重点計画の策定作業を進めている。インフラのストック効果を最大化し、国民生活や社会経済活動を支える基盤とする観点から、整備の取り組みは方向性を変えず、「賢く投資・賢く使う」の徹底を強く打ち出す考え。そのため、管理の取り組みを深化させるとともに、従来の計画になかった利活用の視点を取り入れる。

     

     予防保全への本格転換、新技術活用、集約・再編などによって管理を最適化することで、維持管理費を縮減し、将来のインフラ投資余力を確保する。

     

     利活用の面では、第5次計画を一気通貫する原則にデジタル化とスマート化を位置付け、社会資本整備のデジタルトランスフォーメーションを進めるとともに、インフラ空間を多面的・複合的に利活用することで、インフラの新たな価値を発現させる「経営的管理」に取り組む。

     

     管理の深化と利活用の推進に取り組むことで、ストック効果を拡大させ、新たに整備する際にも将来の利用を見据えた質の高い整備を行う「正のスパイラル」を生み出す。それにより、幾世代にもわたって国民が豊かで安全な生活が実感できる国土づくりを実現する考えだ。 

     

    【洋上風力発電/大規模導入を約束/産業界は投資で応える】

     

     政府は、四方を海に囲まれた日本にとって、再生可能エネルギーの中で特にポテンシャルが高い洋上風力発電を再エネ主力電源化のかぎに位置付け、アジア展開を見据えて産業として育成する方針を打ち出した。2020年には、再エネ海域利用法に基づく発電事業者の公募を始めたほか、大規模導入に取り組むことを産業界に約束した。国内での工場建設に向けた大型投資や、施工を含む導入コストの低減など、政府の期待に対する産業界の行動が注目される。

     

     公募は、20年6月の長崎県五島市沖を皮切りに、同11月には秋田県能代市・三種町・男鹿市沖など4区域でも始めた。五島市沖は6月ごろ、その他4区域は10-11月ごろに発電事業者を選定する。

     

     20年12月には、政府が40年までに3500万-4500万kWの大規模導入に取り組むことを産業界に約束。これに対して、産業界はサプライチェーンの国内調達比率を40年までに60%とするなどの目標を設定した。政府が案件形成を支援し、産業界が大規模投資することで、世界で戦える洋上風力産業に育てる。

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    掲載日: 2021年1月4日 | presented by 建設通信新聞

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