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  • 2021年業界を読む・ゼネコン㊦

    【問われる好況時の蓄積/“川上シフト”がポイント】

     

     アプローチは違えど、顧客に対する提案力の強化や付加価値を追求する姿勢を示すゼネコン各社の受注戦略は明確だ。かつての過度な価格競争の弊害を知っているからこそ、過度な価格競争を忌避するゼネコン経営陣の意志は強い。厳しい受注環境で、各社の対応の成否が今後の建設産業の行方を左右することになる。

     

     清水建設の井上和幸社長は「規模を求めるのはもちろんだが、1つの努力として生産性の向上でコスト競争力を上げる、あるいは調達力・提案力で単純なコスト競争だけではない状況をつくり出すことが重要」とし、大林組の蓮輪賢治社長も「生産システムそのものを変革して働き方・労働環境を変え、協力会社の技術力を上げて競争が厳しくても利益を上げる」と話す。『エンジニアリング事業の強化』を打ち出す大成建設の相川善郎社長は「例えば、工場の生産ラインを含めたトータルでの改良提案が可能になれば、単なる建築・設備だけでなく、本当の意味で全体最適の提案ができる」と見通す。

     

     まさに「各社がデザインや調達、技術のあらゆる面で切磋琢磨している」(鹿島の押味至一社長)という状況であり、竹中工務店の佐々木正人社長が「従来の地域事業部制を維持しながら、より全国レベルで柔軟な運営を進めて利益を確保できる、あるいは受注できる確率の高いプロジェクトに経営資源を集中投資していく」とするのも、その狙いは顧客に対する提案力・付加価値の追求にほかならない。

     

     付加価値競争を勝ち抜くためには、 事業者側により近づくことがポイントになる。その意味で前田建設の前田操治社長は「“脱請負”に取り組んだ結果、請負だけやっていては知り得ないノウハウや技術を得られ、本業の安定顧客も増えた。70%を目標とする設計・施工比率も60%まで上がってきた。川上からつくり込むことで、 価格競争を避け、契約につなげる。先行きの受注情報も5年先まで相当数確保している」と手応えを口にする。五洋建設の清水琢三社長も過去の鋼材価格値上がり時に損失を出した反省から、 「フロントローディングに取り組んできた。設計・施工一括でプレキャスト化や型枠の変更などを発注者に提案できれば勝てる」と自信を深める。 フジタの奥村洋治社長が「土地提供や再開発・区画整理事業での提案に力を入れる。事業者の視点に立って特定地域・エリアの防災まちづくりを提案していく」とするのも、“川上シフト”の1つだ。

     

     決して一部ゼネコンの動きではなく、「得意の冷凍冷蔵倉庫で差別化のための外壁部材を研究開発しており、大きな武器になる」(東亜建設工業の秋山優樹社長)「適地情報を集めて事業者に入り込みたい」(青木あすなろ建設の●(しんちょうの点が1つの辻)井靖社長)など、新技術、土地提供、購買のあらゆる面で各社が総合力を示そうとしている。

     

     コロナ禍で見えてきたのは、一変した建設市場の競争の形だ。問われるのは、旺盛な建設需要に支えられた時代に何を蓄え、何を育んできたかだ。それこそが付加価値競争における強みになる。手にした武器で勝てるのか。2021年は勝負の年になる。

     (赤間政彦、竹本啓吾)

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    掲載日: 2021年1月7日 | presented by 建設通信新聞

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