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炭鉱のカナリア4〈市場〉
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【広がる事業領域 誰の手に/脱業務・請負 社員教育が貢献】
デジタル革新を追い風に建設プロジェクトの枠組みは近年、急速に変わりつつある。急激な変化は一方にとってチャンスと映るが、もう一方には脅威となる。代表例が、民間建築事業だけでなく最近では公共建築物にも適用され始めた「デザインビルド(DB、設計施工一括)」を筆頭にした多様な入札・契約方式、いわゆる調達手法の変化だ。さらに財政ひっ迫が理由の制度変更やPPP市場拡大は、これまで公共が担ってきた業務の民間委託につながる。拡大する事業領域は、これまでの企業規模や設計と施工といったすみ分けさえも超えた競争領域になりつつある。
測量大手のパスコは各事業部で管理していたデータを一元化、他事業部からもデータにアクセスできるなど生産工程を改革する。また同社は地質調査最大手の応用地質とリスク情報プラットフォーム構築を協業で進めている。地上と地下の3次元データを融合することで新たなビジネス領域を創出する。「インフラのアセットマネジメント、超小型衛星ビジネス、リスク情報プラットフォームサービスの提供」(島村秀樹社長)と業務の受託・請負の領域拡大だけではなく、新たに継続型サービスが加われば主力の国内公共の裾野はさらに広がる。
詳細設計付き入札の拡大で一時は自らの領域が狭まったように見えた全国展開する大手建設コンサルタントも、デジタル革新をてこに地域コンサルと連携し、事業領域を確実に拡大しつつある。従来の仕事である土木設計だけにとどまらず、地域コンサルとの連携で約1800すべての自治体でそれぞれの事情にあったサービスを提供する素地が大手各社それぞれででき上がりつつあるからだ。
コンサル大手の日本工営の有元龍一社長は、「世界共通の課題に加え、ネットワーク化や分散化、エネルギーの地産地消などさまざまな組み合わせと事業形成を各地域で行うためにはコンサルタントの出番となる。足りないラストワンマイルの役割がわれわれにはある」と胸を張る。
事業の川上、設計からさらに上流の構想・計画段階からの参画も視野にするゼネコンは組織と意識改革を急ぐ。特に急いでいるのが社員の中長期にわたる教育と、協力企業組織の将来にわたる維持・強化だ。社員教育に力を入れる過程で、経験重視のこれまでの人事評価変更のケースも。
大手・準大手企業は過去、発注者別・工事種類別、現場規模ごとに技術者要件や経験を積ませる目的で戦略的な受注も重ねてきた。しかし今後の土木市場はリニューアル中心で新設案件そのもので過去のような技術者の育て方は期待できない。一方、建築工事は大型化によって、大手企業でさえ規模ごとに受注して技術者を大型現場の所長まで育てる枠組みを維持することは難しい。大規模現場に配属されれば与えられる役割は狭いからだ。産業の構造転換に備え、これまでのような土木・建築という縦割りの技術者意識を転換させる必要もある。
さらにゼネコン各社が強い意思で取り組んでいるのが、自社の建設生産システムの維持・強化を目的とした協力企業へのさまざまな支援。生産労働人口の減少が確実な中、これまでのような労働集約型生産は維持できない。技術革新を含めた徹底的な生産性向上によって元請各社は建設業従事者数が今後減少しても自社の施工力、言い換えれば供給力を維持するのが狙い。事業承継アドバイスや青年組織活動強化などもその一環だ。
大林組の蓮輪賢治社長は「しなやかで柔軟、多様性ある人材と技術を育てていきたい」と今後のさまざまな変化に備える。この先予想される産業構造の転換に協力企業と一体となり備える全国ゼネコンや設備、事業領域拡大が自治体財政ひっ迫によって今後さらに拡大が見込まれる建設関連業を横目に、地域工事で元請けを担う中小企業も自らの存続をかけ、行政を相手に反転攻勢をかけ始めている。
残り50%掲載日: 2021年1月8日 | presented by 建設通信新聞