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建設論評・インフラ投資で生産性向上を
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>安倍晋三首相は、今国会の目玉となる働き方改革関連法案について、裁量労働制の対象業務拡大を切り離して提出する方針を決めた。裁量労働制の拡大をめぐっては、厚生労働省が実施した調査のデータに不適切な点が見つかったことが発覚し、野党側が反発を強めていた。
関連法案には、時間外労働の上限規制を盛り込んだ改正労働基準法も含まれている。政府・与党は裁量労働制を切り離すことで事態の収束を図ろうとしているが、法案提出をめぐっては野党のさらなる攻勢も予想され、予断を許さない状況が続きそうだ。
既に建設業界では、時間外労働の罰則付き上限規制適用を見据えた下地づくりが進み、いよいよ2018年度から具体的な取り組みが始まろうとしている。日本建設業連合会を始めとする業界団体は、19年4月の改正労働基準法施行と、5年間の猶予期間を経た24年4月からの適用を想定した段階的な時間外労働の削減方針を組み立てている。
法案審議の遅れに伴う施行時期の先送りは、実質的に猶予期間が延びるだけなので大きな影響はないだろうが、法案をめぐるごたごたは、せっかく盛り上がっている改革の機運に水を差しかねない。
罰則付き上限規制の適用で、否応なしに長時間労働の削減を迫られている建設業界にとって喫緊の課題となっているのが、さらなる生産性の向上だ。休日拡大の原資を生み出すために、ゼネコン個社の努力や、それを後方支援する団体の動きも活発化しているが、現場レベルでの生産性向上にはおのずと限界がある。
現場にばかり目が行きがちだが、少し視野を広げれば生産性向上を阻むさまざまな要因が浮かび上がってくる。例えば資機材の搬入1つとっても、運搬車両がひとたび渋滞に巻き込まれれば作業が滞り、生産性は大きく低下することになる。生産性向上策の1つであるプレキャスト化も、スムーズな工場生産品の運搬があってこそ効果を発揮する。現場の生産性向上には、円滑な物流の実現といった視点も欠かせない。
少し古いデータになるが、国土交通省によると計画延長に対する東京首都圏の環状道路整備率(11年4月1日現在)は47%にとどまる。パリは09年7月時点で85%、ソウル、北京はそれぞれ07年12月、09年9月時点で100%を達成しているのに比べて進捗が遅い。
また、都市の中心から1時間で移動できるエリアを示す主要都市の1時間アクセス圏(面積)を見ると、東京の約4200km2に対し、パリは約9100km2、ロンドンは約7800km2、ニューヨークは約9300km2、ベルリンは約9900km2というデータもある。
各都市とも東京に比べ1.9-2.4倍の移動面積があり、これだけ見ても道路インフラの未整備によるさまざまな損失が読み取れる。
ICT技術の発達による情報処理・伝達能力は、一昔前に比べれば飛躍的に向上しているが、現場にモノが届かない限り工事は進まない。さらなる生産性向上に向けては、活発なインフラ投資による後押しが不可欠だ。
(音)
残り50%掲載日: 2018年3月2日 | presented by 建設通信新聞