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建設論評・土地利用のルール
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>土地を利用する時に守らなければならないルールは数多い。相隣関係のルールは民法だけでなく慣行によるものもある。農地法は、農地の転用だけでなく取引も強く制限しているし、市街地では、都市計画法や建築基準法によって、土地の区画形質変更、建物用途、容積率、高さなどに関するさまざまな規制がある。さらには、立地適正化計画のような政策的な誘導も働く。
それだけではない。宅地建物の取引仲介に際しては重要事項について説明しなければならないとされているが、その対象となる法令制限事項は、60種類もある。宅造規制法の制限などよく知られているものもあるが、土地の条件に応じて多数のルールが定められているのである。
一方で、法令で許されている場合も、マンション建設や景観保全をめぐる紛争のように、土地利用と地域の環境とのあいだに齟齬(そご)が生じることもある。あるいは、公共的な施設の必要性は認めるが、近隣での建設には反対するという例も多い。日常生活に異物が入り込むことへの抵抗感が地域社会の暗黙のルールを形成しているのであるが、その現れ方は不透明である。
このように、土地利用のためには他種多様な調整が必要で、その基準や手続きは一律ではなく、相互に整合しているとは限らない。
対処には2つの方向がある。1つは、明確な基準のもとで土地利用を調整するための制度を整備することである。例えば、60種類以上ある土地利用制限をすべて都市計画に組み込み、都市計画に適合する土地利用は法的に保護される仕組みを整えるのである。膨大なデータベースが必要となるが、BIMの土地版を構築すればよい。不動産登記と結びつければ、都市空間情報を基盤に、土地利用のルールを安定的に運用できるのではないか。
もう1つは、土地利用をケースごとに総合的に調整することとし、そのための仕組みを整えることである。例えば、地区を単位に調整のための組織を設置し、個々のケースごとにその影響を予測・審査・調整することにする。その組織が合意形成の場となるのであるが、その運営は地区が自治的に担うのである。対立する立場の調整などが必要になるが、専門家の助言など組織運営に対する公的な支援があれば、その機能を果たすことができる。そして、具体的な調整の積み重ねがルールに結実していく。
適切な土地利用を実現する上で、どちらの方向が有効か。前者の最大の問題は、計画という方法に原理的な限界があることである。後者は、強制力なしで調整できるのかという根本的な問題に直面することになる。
しかしながら、現在の土地利用ルールはあまりに雑多かつ不安定で、住みやすい場所を形づくる役割を果たし得ない。必要に応じて規制や誘導策が対処療法のように実施された結果、土地利用の総合性や土地特性に即した倫理の確保が難しくなっているからだ。
最近起きた大深度地下利用による事故もその帰結であると考える。また、重要施設周辺の土地取引を規制する法律が提案されようとしているが、土地利用のルールが明確であればその必要はないのである。 (羅)
残り50%掲載日: 2021年1月13日 | presented by 建設通信新聞