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協調領域実現で自動化加速/建機の制御信号を統一/土研・東大が開発着手
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【来年度にもプロトタイプ完成】
建設機械の自動化を加速させる上で、以前からニーズが高かった建設企業と建機メーカー間の“協調領域”の構築が現実味を帯びている。土木研究所と東京大学は、自動化技術の根幹となる制御信号をルール化したオープンプラットフォームの開発に着手。コンピューターが出力した電気信号を建機の物理的運動に変換する、アクチュエーター動作の基本指令などの制御信号を統一・共通化することで、建機の機種に合わせたソフトウェアの開発という従来の制約に縛られずに、1つのソフトウェアを異なる機種に横断的に活用できる。オープンプラットフォームがもたらす協調領域の実現によって、建機自動化は大きな一歩を踏み出す。
建設機械の電子制御に関するシステム(ハードウェア)は、それぞれの建機メーカーが独自に研究・開発していることから、制御信号も各メーカーで異なる。
建設企業が建機の自動化に関するソフトウェアを開発する場合は、特定の建機メーカーと提携し、制御信号などの内部情報の開示を受けた上で、その機種のみに適したソフトウェアを開発しなければならない。
研究・開発体制は事実上ブラックボックスのため、開発成果の汎用性は限定され、業務上の広がりも制限される。また、建設企業もしくは建機メーカーを変更し、新たなパートナーと提携を組んでも、メーカーによって制御信号が異なることや守秘義務の観点から、同種の開発成果の転用が難しく、白紙の状態で研究・開発を進めなければならず、開発内容や作業の重複が生じ、自動化促進の大きな足かせとなっている。
実際、日本建設業連合会が実施した「建設業のためのロボットに関する調査」では、「開発分野の重複回避、技術基準の標準化・共通化による開発・運用コストの削減などに向け、企業間の協調領域を明確化」が改善点として挙がっている。
こうした現状を踏まえ、土研は、制御信号のルール化によるオープンプラットフォームの構築に乗り出している。オープンプラットフォームは、ハードウェアを抽象化し、ソフトウェアの再利用性・連携性を高める、ミドルウェアのような位置付け。
統一・共通化した制御信号を活用することで、機種ごとの制御信号に拘束されなくなるため、建設企業は建機のどの部分を自動化するかといったソフトウェアの開発に注力できる。一方、建機メーカーとしても内部情報の開示が不要となり、複数の建設企業とのビジネスチャンスが生まれる。建機の性能向上が同業他社との差別化につながっていくとみられる。
また、ソフトウェア開発では大学などの研究機関やベンチャー企業が参入しやすくなるため、開発競争が活性化し、開発速度・精度が格段に高まる可能性がある。そのプロトタイプとして、土研は東大と共同でオープンプラットフォームに適合した自動運転プログラムの開発にも着手している。
協調領域を創出し、競争領域が明確化されることの波及効果は大きく、土研技術推進本部先端技術チームの橋本毅主任研究員は「運用して気付くこともあると思うが、現段階で(建設企業、建機メーカー双方の)デメリットはほとんどないと考えている」との見方を示す。
オープンプラットフォームの構築には、ロボットシステム開発のデファクトスタンダード(業界標準)となりつつある、ミドルウェアの一種であるROS(Robot Operating System)を採用する。
ROSはオープンソースのライブラリー(画像処理、動作計画)を内包するとともに、物理シミュレーターとの連携が容易なほか、多くのロボット用センサーに対応しており、さまざまなセンサーを試すことができる。
東大大学院工学系研究科総合研究機構i-Constructionシステム学寄付講座の永谷圭司特任教授は、制御信号のルール化は「画期的なもの。(建機自動化に関する)研究開発が非常に早く進むだろう」とし、「自動化に関心のある中小建設企業にもかなりのメリットがある」と加える。
オープンプラットフォームにはシミュレーターを組み込む。3次元の仮想空間でオープンプラットフォームを搭載した建機を試運転し、その性能を事前に確認できるようにする。
オープンプラットフォームのプロトタイプは2021年度内にも完成する見通し。具体的な提供方法は検討中だが、橋本主任研究員は「まずは利用者に実効性を確認してもらいたい」と明かす。将来的な規格化や業界全体のルール化を見据え、オープンプラットフォームは今後も改良を続ける方針だ。
残り50%掲載日: 2021年1月15日 | presented by 建設通信新聞