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  • 原子力災害に即した法制度を/国家行政組織創設も提言/建築学会/福島の復興・再生へ課題示す

     日本建築学会(竹脇出会長)は、原子力災害からの本格的な復興・再生に取り組むため、長期にわたって放射能汚染の被害が続く原子力災害の特質に即した法制度の制定や原子力災害からの復興を担う独立した国家行政組織の創設などを提言する。14日に日本学術会議と防災学術連携体が開いた防災学術連携シンポジウム「東日本大震災からの十年とこれから」の中で明らかにした。3月6日に同学会が開くシンポジウム「東日本大震災10周年を機に頻発する複合災害を考える」ではこれを含め、震災からの教訓と復旧・復興支援などの活動の成果を踏まえた将来の建築・まちづくりについて、幅広く提言していく考えだ。

     

     14日のシンポジウムでは、川崎興太福島大准教授と糸長浩司日大特任教授が「原子力災害からの復興を問う」として、現状の課題に対する認識を示した。この中で川崎准教授は、福島の本格的な復興・再生を図るには総合的な検証を行うことが不可欠と強調。少なくとも、▽福島原発事故の発生に伴う被害実態の包括的・総体的な把握▽被災者の生活再建と被災地の復興・再生に関する到達点の解明▽原発事故の再発防止策と再発した場合の被害の最小化策の合理性に関する確認--に関する検証が必要とし、その上で復興に向けた課題の抽出とともに道筋を描くべきだと求めた。

     

     これを前提に今後の検討課題では、現在の災害対策基本法などわが国の災害・防災法令が主として自然災害を想定して構築されており、被害が長期にわたる原子力災害に対しての法制度が「不十分または欠落している」(川崎准教授)として、新たな法制度制定の必要性を挙げるとともに、いまなお全国各地に避難する被災者の生活再建を行うには市町村や都道府県の限界を超えていると指摘。国が「支援」ではなく「主体」となって原子力災害からの復興を担う防災・復興省や原子力防災省といった国家行政組織の創設が必要だと提起した。

     

     同学会地球環境委員長を務める糸長特任教授も、森林の汚染土壌は放置されたままで残存する量は中間貯蔵施設に搬入される除染済み土壌の8倍を超えるとして、現行の放射能対策特措法の早急な改正が必要との認識を示したほか、長期汚染に対応した災害対策法や土地利用の規制を含む「放射能汚染のある都市及び農村地域の長期復興計画法」の制定などを求めた。

     

     日本建築学会は、東日本大震災後、復旧・復興支援とともに282調査団・2500人を超える調査員による学術調査・報告・提言などの活動に取り組んできた。その10年間を総括する3月6日のシンポジウムは、オンラインでの開催とし、第1部では震災後6人の歴代会長が基調講演。第2部は「災害から何を学び、災害の経験をどう生かすか」をテーマに、5つのワーキンググループが「人口減少・高齢化に対応した災害につよい建築・まちづくり」「科学技術的アプローチによるレジリエントな建築・まちづくり」「災害を意識したエネルギー消費と健康に配慮した建築・まちづくり」「原発事故による 長期的な放射能汚染被害地域での建築・むら・まちづくり」「災害の記憶を継承するまちづくり」についてそれぞれ成果を発表する。

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    掲載日: 2021年1月18日 | presented by 建設通信新聞

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