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業界を読む・セメント
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【セメント系固化材を積極展開/国土強靱化 需要回復に期待】
2020年度のセメントの国内需要は3900万t程度になると見込まれており、4000万tを下回るのは1966年以来、54年ぶりになる。当初は、19年度と同レベルの4100万t程度が見込まれていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大による工事中断や天候不順の影響を受け、予想を下回った。21年度になって需要が急激に回復するとは考えにくい。
20年12月に「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が閣議決定され、21年度から5年間でおおむね15兆円の事業規模が計画されている。このうち、「激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策」として約12兆3000億円が措置された。流域治水対策として、1級河川で戦後最大規模の洪水が発生しても対応できるよう堤防強化やダム整備など災害への備えを促すなど、セメント産業とも関わりが深い。昨今、猛威をふるい激甚化・頻発化する風水害、いつ発生してもおかしくはない首都直下地震、南海トラフ巨大地震といった自然災害、老朽化対策が喫緊の問題になっている社会インフラの長寿命化への対応が進むことで、セメント産業の需要回復につながることが期待される。
リニア中央新幹線建設工事、25年大阪・関西万博関連工事といった目玉工事も追い風になるものとみられる。 また、東京五輪の関連工事を優先して計画的に手控えていたプロジェクトが着手されており、これらがセメント産業にとって需要の増加となることは間違いないだろう。
一方、近年需要が堅調に伸びているセメント系固化材も注目されている。セメント系固化材の販売実績は、12年度に700万t、17年度に800万tを超え、18年度は過去最高値の845万tだった。19年度は過去4番目の792万tを記録。社会資本整備の資材として着実に浸透している。セメント協会(小野直樹会長)も、適用事例調査の継続、河川堤防の強化に着眼した防災・減災への貢献、動画配信による基礎知識講座の開設など、より積極的な普及を目指している。
限りある資源の有効活用や環境負荷を低減するため、廃棄物、副産物を受け入れ、再資源化を推進しているほか、大量の災害廃棄物を受け入れることで、被災地における早期の復旧・復興を支えるだけでなく、防災・減災のための材料を生み出すセメント産業は、循環型社会の形成に対する社会貢献度が高い。
しかしながら、こうした取り組みに対する社会的認知度が決して高くはないことも事実だ。セメントは社会資本整備の基本となる資材であり、業界を挙げて広く社会に訴え、その役割を分かりやすくアピールする工夫も求められている。
(おわり・川合秀也)
残り50%掲載日: 2021年1月21日 | presented by 建設通信新聞