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連載・前例なきコロナ対応 変化の兆し(下)
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【働き方改革、現場で加速/公共空間 変革期待の議論活発/遠隔臨場導入が急増】
建設産業界にも大きなインパクトをもたらした新型コロナウイルスの感染が国内で確認されてから約1年が経過した。業界では感染流行以前から働き方改革と生産性向上の取り組みを進めてきたが、くしくも新型コロナ対応がその流れを加速させている。代表例の1つが公共工事の「遠隔臨場」導入件数の急増だ。また、まちづくり分野では、道路空間の使い方にも転機が訪れている。日常生活に根差した公共空間は、その活用方法をめぐってさらなる変革を期待する議論が巻き起こっている。
遠隔臨場は、工事現場で監督・検査の立ち合いなどを映像配信する方法だ。国土交通省が2020年度から全国展開している。試行活用は、20年9月末時点で各地方整備局などの実施件数が合計560件に上る。当初想定していた各整備局10件程度という目標件数を大きく上回っている。
中でも関東地方整備局は125件と最も多く、管内工事の発注件数の1割を占める。同局の担当者によると、導入件数は前回調査以降さらに増えているという。
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、感染症対策として実施する場合は試行にかかる費用を100%計上していることも件数増の要因として挙がるが、人との接触機会を減らせる上、受発注者双方の働き方改革にもつながっており、21年度も引き続き同様の措置として、導入したい考えだ。
“新しい生活様式”への対応を求められる中、道路などの公共空間をまちの活性化に生かす取り組みも出てきた。国土交通省は20年6月、“3密回避”に努める飲食店の緊急的な救済措置として、道路利用の規制緩和を通達し、全国の道路管理者(地方自治体)にも同じ措置を求めた。
商店街を形成する飲食店などの店舗は、店先の道路を活用していすやテーブルを設置できる。適用には道路幅員や清掃実施など条件を満たす必要があるが、新たな売り上げを見込めるとして店舗の経営者や不動産などまちづくりの関係者からは関心や歓迎の声が上がった。
20年9月1日時点で、国と同様の特例措置を導入したのは約420自治体で、占用許可件数は約240件となった。足元の感染拡大状況や自治体からの要望を受けて、20年11月末までとしていた占用期間は21年3月末までに延期している。
ただ、課題も顕在化している。ある東京23区の職員は、緩和を受けるために必要な幅員を確保できている区道は「当区内には存在しない」と断言する。建物や人口が過密の都内区道では、申請に至らないケースが多いのだ。警察との協議や、申請を目指す商店街内部での合意形成にも時間を要することから「現場の実態に即していない」という意見も少なくない。
道路という公共空間の活用をめぐって、さまざまな主体による再検討が進んでいる。20年11月、政府は「歩行者利便増進道路」(通称ほこみち)制度創設を含む改正道路法を施行した。制度を活用すれば、公募により占用者として選定された場合は最長で20年の占用が可能となる。区部の職員は「国の説明会などを活用して、歩行者や沿道店舗の関係者が最大限道路の利益を享受できる環境を整えたい」と期待を示す。
通勤方法にも変化の波が及んでいる。政府は感染予防の観点から、公共交通機関での通勤を避けて自転車通勤を推進している。国交省は新型ウイルスによる行動変容を契機に、東京23区をモデルケースとして、専用通行帯など自転車通行空間の整備を拡充する方針を打ち出した。
新型コロナは、道路を始めとした公共空間のあり方を改めて問い直している。23区の職員が「道路を整備する段階から、にぎわい機能を考慮した構造が求められる」と指摘するように、新しい生活様式を見据え、まちづくりの川上段階から公共空間のポテンシャルをさらに高める検討が始まっている。
(高木友季、武内翔、中村達郎)
残り50%掲載日: 2021年1月22日 | presented by 建設通信新聞