当サイトについて 採用ご担当者様
会員登録はこちら 求人検索

建設技術者向けNEWS

建設技術者の方が知りたい情報を絶賛配信中
会員登録いただくと無料で閲覧可能です!

  • 「後継者いない」 市場撤退相次ぐ/元請けの供給網・施工力に影響も/東京商工リサーチ20年休廃業調査

     破たんする前に自ら建設市場から撤退する「休廃業・解散」企業数が、依然として高水準で推移していることが東京商工リサーチの2020年休廃業・解散企業動向調査で浮き彫りになった。余力を残しながら市場から退出するのは、「トップの高齢化」「後継者がいない」ことが要因の1つ。中小・零細企業の市場撤退は、産業の新陳代謝という側面もある一方で、全国企業から地場に至るまでの元請けにとって無関心ではいられない問題でもある。撤退する企業が協力企業だった場合、元請けの施工能力や生産システムの供給網維持に影響を与えかねないからだ。

     

     休廃業・解散企業は、債務超過などで破たんに追い込まれるわけではなく、経営的に余力がある段階で市場から撤退するもので、信用調査機関が公表する倒産(法的・私的倒産)統計に表れない。

     

     20年(1-12月)に全国で休廃業・解散した企業は、前年比14.6%増の4万9698件。これまで最多だった18年の4万6724件を抜き、調査を開始した00年以降で最多となった。休廃業企業の従業員数(判明分)は26.4%増の12万6550人で、12万人超の従業員が失業・勤務先変更を余儀なくされた。

     

     休廃業した企業の41.7%が、代表者の年齢が70歳代だった。80歳代以上も17.9%と2割弱を占めた。60歳以上で見ると84.2%と8割を超えた。60歳以上の比率は前年から0.7ポイント上昇した。休廃業企業の経営者年齢と件数の関係について東京商工リサーチは、「事業承継が進まず、社長の高齢化が休廃業・解散を加速させる要因」と分析している。

     

     一方、休廃業企業の16.5%と2割弱を占める建設業では、全国企業を筆頭に元請け各社が全国各地で進む中小・零細企業の「静かな市場撤退」を事業承継問題と絡めて強い関心を寄せている。

     

     休廃業する企業が、元請けの協力業者で建設生産システムを担う専門工事業だった場合には最悪、元請けの施工能力・供給力低下につながりかねない。全国企業を筆頭に元請各社が自社の担い手確保や生産性向上だけでなく、協力企業を含めた全体の施工や安全・品質担保能力を維持、向上することを目的に、協力企業の事業承継、担い手確保、技能承継など幅広い支援を進めているのは、協力企業のスムーズな事業承継と担い手確保・育成が元請けの施工力担保に直結しているからだ。

     

     ある全国企業トップは全国各地で行った協力企業との意見交換で愕然(がくぜん)とした。判明したのは「協力企業の半数近くに後継者がいない。さらに自分の代で(会社を)たたむことを覚悟している」だった。

     

     元請けが建設業の休廃業の高水準での推移に危機感を抱くもう1つの理由は、手厚い政策支援が、後継者がいないことを理由に自分の代で市場退出を決意する企業トップに響いていないことだ。安倍前政権は、中小・零細企業の事業承継が進まないことが日本経済に 深刻な影響を与えるとして、18年から親子や親族間の事業承継で重荷になっていた税負担を実質ゼロにするなどのさまざまな優遇措置を期間限定で始めていた。

     

     にもかかわらず、協力企業からは「自分の代でおしまい」との話が後を絶たない。後継者そのものがいないからだ。

     

     ただ一方で、新たに設立される新設法人で最も数が多いのも建設業だ。東京商工リサーチが20年5月に公表した「2019年全国新設法人動向調査」で建設業は前年比7.0%増の1万4624社と産業別で最も多かった。19年建設業倒産数と休廃業数を合わせた数と新設法人数の差は6000社超。これが建設産業の新陳代謝を表しているのか、それとも事業承継問題の方がより深刻なのか、見方は分かれる。

    残り50%
    ログインして続きを読む 会員でない方はこちらよりご登録ください

    掲載日: 2021年1月25日 | presented by 建設通信新聞

前の記事記事一覧次の記事