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フォーカス・安全基準の確立が急務/建設ロボット一般化の障壁
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【全基準の確立急務/普及へ法令制定が不可欠】
建設機械の自動化を含め、建設ロボットの普及に向けた企業間の協調領域の構築が進展する一方、ロボット技術を活用する上で前提となる安全に関するルールづくり(法制化)が急がれている。安全基準が不明確な現状下で建設ロボットの導入が進めば、生産性向上という利点を阻害しかねない“過度な安全対策”が各現場で画一的に求められる可能性があるからだ。協調領域の構築と安全基準の確立は、建設ロボット一般化の両輪であり、並行して取り組むべき喫緊の課題となっている。
日本建設業連合会(山内隆司会長)の土木工事技術委員会土木情報技術部会情報利用技術専門部会は、建設業団体で初めて「建設業のためのロボットに関する調査」を実施し、2020年3月に報告書をまとめた。土工機械の自動化を始め、「自動かつ自律可能な機械」をロボットと定義した上で、建設業のロボットに関する技術開発、活用事例のほか、技術水準、導入実績などを整理した。
この調査を通じて、建設ロボットの技術開発の障壁が膨大な開発投資と費用対効果にあるとの見解に達し、「開発分野の重複回避、技術基準の標準化・共通化による開発・運用コストの削減などに向け、企業間の協調領域を明確化し、同業者だけでなく、産学官連携を視野に入れた技術開発体制を整備する必要がある」と指摘する。
協調領域の構築については、建設業が持続的な発展を遂げる上で不可欠なことから、日建連の幹部は20年5-6月に実施した国土交通省各地方整備局などとの意見交換会でもその重要性を訴え続けた。
こうした中で、土木研究所と東京大学は建設機械の自動化の根幹となる制御信号を統一・共通化したオープンプラットフォームの構築に着手、協調領域の実現が現実味を帯びている。日建連や建設コンサルタンツ協会などの建設産業団体を寄付者とする、東大のi-Constructionシステム学寄付講座もこの事業に一役買っている。
一方、建機自動化に携わるある研究・技術者が「建設ロボットの導入に合わせ、安全面の法整備が絶対に必要」と強調するように、関係者からは異口同音に建設ロボットの現場活用に向けた安全ルール明確化の必要性を指摘する声が上がる。
組立・搬送ロボット、溶接ロボットなどの産業(工業)用ロボットは、労働安全衛生法などに基づく安全基準、技術指針が整備され、法的な裏付けが開発や利用の促進につながっている。
ただ、建設ロボットには、産業用ロボットのような法令上の規定は存在しない。そのため、工事現場でロボットや自動化技術を活用する場合は、労働基準監督署などの関係機関と協議しながら、仕様、安全などを考慮した現場ごとの独自ルールを設定しなければならない。
安全ルールの不明確さは生産性向上の阻害要因となり得る。例えば、対人への危険性が低いロボットであっても、関係機関との協議の過程で作業上の安全性が過小評価されれば、現場従事者との距離を必要以上に確保しなければならず、ロボット活用で得られる生産性向上の効果は限定されてしまう。
当然、建設ロボットの現場導入に伴うさまざまな課題は土木工事だけでなく、建築工事にも共通する。日建連は20年度に「建築ロボット専門部会」を新設。課題解決の方策を探りながら、建築工事のロボット技術開発を後押ししていく。
生産年齢人口の減少に加え、コロナ禍に伴うニューノーマルへの対応によって建設ロボットの必要性はより一層増すとみられる。大手・中小を問わず建設業全体の将来を見据え、協調領域の構築だけでなく、安全面のルールづくりも急務となっている。
残り50%掲載日: 2021年2月4日 | presented by 建設通信新聞