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国際標準化・JIS開発テーマ/SDGs、省エネが主眼/経産省
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>経済産業省は、2021年度から新規着手するISO(国際標準化機構)関係の国際標準化開発とJIS(日本産業規格)開発の実施テーマ53件を決めた。国際標準化開発関係は41件、JIS開発関係が12件となる。このうち国際標準化開発関係5件とJIS開発関係1件は、省エネルギーなどに関する開発実施テーマとなっている。建設分野・建設関連分野としては、「SDGs(持続可能な開発目標)の達成を実現するレジリエントなコンクリート構造物の整備に関する国際標準化」「耐候性鋼の大気暴露試験方法とその評価法に関する国際標準化」「建築一体型太陽光発電に関する国際標準化」「建築用断熱材の長期断熱性評価方法に関するJIS開発」などがある。
国際標準原案の開発・提案やJIS原案開発の事業期間は、原則21年度から23年度までの3年以内。期間内に国際標準提案かJIS原案を作成、制定を目指す。国際標準化はISOへの提案後、24カ月か36カ月の審議期間が決まり、標準化内容を審議して5カ国以上の賛成で規格化となる。経産省では2月以降、実施テーマの開発を担う事業実施者を公募で決める。
◆強靱コンクリで持続可能に
国際標準原案開発のうち、戦略的国際標準化加速事業の「SDGsの達成を実現するレジリエントなコンクリート構造物の整備に関する国際標準化」は、▽レディーミクストコンクリートの発注方法・使用材料・製造管理▽コンクリート構造物の地震後継続利用のための性能評価▽コンクリートとモルタル用合成短繊維▽セメント系材料を使う補修補強工法▽コンクリート構造物のライフサイクルマネジメントにおける施工段階のマネジメント--の5項目に関する国際標準を開発する。
開発する国際標準によって、全世界のコンクリート構造物の高品質化・長寿命化・強靭化、環境性・社会性、経済性のサステイナビリティーを向上し、SDGsのうち特に「持続可能な都市」「インフラ、産業化、イノベーション」「持続可能な生産と消費」の達成に貢献する。
◆土木インフラ長期使用へ
「耐候性鋼の大気暴露試験方法とその評価法に関する国際標準化」は、日本が創案した耐候性鋼の耐食性試験法とその評価法を国際標準化する。標準化によって、世界での土木インフラ長期使用とトータルコストを低減化するとともに、日本固有の耐候性鋼材の市場拡大にもつなげる。耐候性鋼は塗装などを省略でき、コストやメンテナンス費用を低減化できる長寿命でトータルコストパーフォマンスが優れた構造用材料。
◆建築一体太陽光で主導権
「建築一体型太陽光発電に関する国際標準化」では、屋内窓面設置型太陽電池の設計基準や融雪型太陽電池モジュールに対する設計安全性規格、BIPV(建材一体型太陽電池)モジュールの意匠性の耐候性評価方法、垂直設置モジュールの発電量推定方法などを国際標準化する。関係技術の国際標準化の主導権を日本が獲得する狙いもある。壁面や窓設置型などのBIPVは、製造・設置コスト、立地制約を克服する技術。経産省によると、国際標準化に当たっては、複数業界の横断的連携が必要で、国際規格策定段階からさまざまな国や機関との良好な関係構築が必須とし、研究機関などの中立機関を通じて国際標準化することが有効という。
◆建物外皮の断熱性確保
「建築用断熱材の長期断熱性評価方法に関するJIS開発」は、「JIS A9521」で定めている断熱材の断熱特性や機械特性などの長期耐久性評価方法を開発する。同方法の開発によって、建築物運用エネルギーの30%程度を占める空調エネルギーに深く関係する建物外皮の断熱性能を確保・維持する。透明性があり客観的な試験法・指標を構築し、断熱材の耐用年数に一定の基準を設定するため、建築物利用者は購入時の指標となる。メーカーは長期耐久性を保有する製品開発に活用でき、設計・施工段階では、地域や環境を踏まえた設計によって品質を向上する。
◆日本製品の市場獲得
「アジアモンスーン地域における暴露試験結果の国際標準化」では、日本が主導し、タイやベトナムと連携しながら湿潤環境地域での暴露試験結果を集約して、寿命予測に寄与できる腐食速度式などを国際標準化する。現在の金属と合金の大気腐食性に関するISO規格は、欧州の乾燥状態に近い環境での測定を想定した腐食速度式を採用していることから、日本から東南アジアにかけての湿潤で海塩の影響が大きい環境にはそぐわないといわれている。このため、日本主導の国際標準化で対象国・地域のインフラ寿命を予測するとともに、高性能・高品質な日本製品の市場拡大にもつなげる。
◆新たな金融市場を拡大
「災害等へのレジリエンスを高めるファイナンスに関する国際標準化」は、日本の防災・レジリエンスの海外展開を見据えレジリエンス向上への投資にかかわることを国際標準化し、新たな金融市場を拡大する。国際社会では『仙台防災枠組』に沿って、防災活動を実施しているものの、防災への事前投資は、事後的な補償を中心とする欧米と価値観の相違がある。また、APEC(アジア太平洋経済協力)では「エネルギーレジリエンスにかかる原則」を策定、エネルギーレジリエンス向上への投資を求めている。こうしたことを背景に国際標準化を進める。
◆スランプなど区分見直し
「レディーミクストコンクリートの品質および環境性能の向上に関するJIS開発」では構造物の品質確保、性能多様化への要求に応えるためレディーミクストコンクリートのスランプ、スランプフロー、呼び強度などの区分を見直しする。回収骨材やスラッジ水などのリサイクル材の利用を推進し、資源循環による低炭素社会の実現にもつなげる。「JIS A5308」は、国内規制や調達基準への導入、認証制度の運用、民間取引や社内規格で使っている。
このほか、▽環境水中のマイクロプラスチックの測定法に関する国際標準化▽水道水鋼製配管の腐食試験法ガイドラインの国際標準化▽物流における自動認識技術(電子タグ等)利活用のためのデータ共通化に関する国際標準化▽水素ステーションでの高圧水素環境で使う金属材料の強度・耐久性などの特性を簡便に評価できる試験方法の国際規格化などの「金属の機械試験に関する国際標準化」▽温室効果ガスの排出・削減量の算定・報告・検証に関するJIS開発--なども新規テーマになっている。
残り50%掲載日: 2021年2月9日 | presented by 建設通信新聞