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  • 建設論評・建築設計事務所の未来

     世界のグローバル化がますます勢いを増している。それを強く後押ししているのがデジタル化である。新型コロナウイルス感染症の拡大も、それをさらに推し進めている。

     

     もはや国家という枠組みではこうした現実を捉え切れない状況になりつつある。民間企業がデータを抱え込み、巨大化する。結果として、GAFAMのような強力なIT企業が出現し、国家でさえ、その勢いを抑え込むことが出来ないほどの強い影響力を持つようになっている。時には国家が所有する情報やデータよりも多くを持つことができるのである。

     

     中国でも同様で、共産党の立場さえも揺るがしかねない状況が起こり始めている。例えば、金融会社アント・グループが昨年11月に予定していた株式上場が延期され、独禁法違反の疑いで調査を受けた事件である。その原因は、同社の親会社アリババの創業者ジャック・マー氏による、中国の金融システムを批判する発言が共産党の逆鱗(げきりん)に触れたためと言われているのも、企業による金融イノベーションに対する焦りの表れなのであろう。いまや巨大IT企業がもくろむのはモノを作ることではなく、新たなグローバルスタンダードへ向けた自らに有利なシステムの構築である。言わば1つの社会としてのコミュニティーの構築であり、そして、それがいまや都市のレベルまでに拡大しつつある。例えば、企業が街全体を運営する例も見られるようになった。

     

     中国ではファーウェイやアリババが、そうした事業を手掛けているが、日本でも、自動車メーカーのトヨタが富士山麓に、これからの交通機関の姿に合わせてAI(人工知能)を駆使する実験的な都市「ウーブン・シティー」の構築を発表した。

     

     こうした現実は何を物語っているのだろうか。自治体が担ってきた行政の役割を超えて、デジタル社会・空間にふさわしい都市の姿、そのあり方に迫ることなのではないか。

     

     一方、都市や建築の専門家である建築設計事務所も、そうした大型化・拡大化に進む傾向がある。都市を成立させる多くの要素を包含する、より広範囲なソリューションに応える体制づくりが不可欠だとする考えである。いままで建築設計事務所が担ってきた建築デザインに加え、その前後にまでフィールドを広げなければ、市場での存在感を増すことはできないと考えているからであろう。

     

     確かに、市場はデザインの根拠となる専門性を必要とする。とりわけ重要なアセット(資産)マネジメントの局面において、デザインが価値を左右することもあるからだ。その意味では、フィールドの拡大は市場ニーズをとらえるという意味からも必要になる。

     

     そうした分野に進出するかはそれぞれの事務所の判断ではあるが、拡大化の傾向が強まっていることは確かであろう。しかしながら、そうした拡大化は、本来のコア(核)を希薄化するのではないか。何が重要であるかは市場が決める。しかし設計者の存在は、設計者自らの意志で成り立っている。その強い意志がなければ、建築設計の専門家などは、市場からは不要とされる。(界)

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    掲載日: 2021年2月15日 | presented by 建設通信新聞

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