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  • 特集・広がる関西の働き方改革(1)

     建設現場における週休2日(4週8休)への取り組みが加速している。関西地区では近畿地方整備局がけん引するように、地方自治体へも着実に広がりを見せる。これまで進まなかった民間建築工事でも施工者が率先して週休2日に挑むケースがあり、業界を挙げた現場の働き方改革が本格的に動き出している。溝口宏樹近畿地方整備局長のメッセージとともに、週休2日に挑む現場の声を集約した。

     

    【国土交通省近畿地方整備局長 溝口宏樹/5割の直轄工事が週休2日達成】

     

     毎年のように日本のどこかで大規模災害が発生し、気候変動により激甚化してきています。2020年は幸いにも近畿管内で大きな災害には見舞われませんでしたが、7月には、九州で球磨川が氾濫し、大きな被害を受けました。私たちの暮らしている地域にも、いつどんな災害がくるかもしれず、災害リスクは大きくなっています。

     

     建設業は、災害の危機が迫ってくると現場に駆け付けて災害に備え、被害が発生すれば直後の復旧作業や復興工事など、地域の暮らしや安全・安心を支えるという大きな役割があります。特に地域の建設業ほど、地域の守り手としての役割は今後ますます重要となっていきます。

     

     しかし、建設業は、近年、若年入職者の減少傾向が続いており、60歳以上の技能者は全体の4分の1を占め、10年後には大半の引退が見込まれるなど、他産業より速いペースで高齢化が進行しています。また、29歳以下の若年層の割合は10%程度となっており、担い手不足が健在化してきています。この背景には、他産業と比べて低い賃金水準や、労働時間が長く休日が十分確保されていないなどの現状があり、これらの課題を改善し、建設業の魅力を向上することが必要となっています。

     

     近畿地方整備局では、週休2日の導入や施工時期の平準化の取り組みを通じて建設業の働き方改革を支援するとともに、建設現場の生産性向上を目指して、i-Construtionの取り組みを進めています。

     

     週休2日の実現に向けた取り組みとしては、労務単価を週休2日に対応させて、3億円以上の規模が大きい工事には、4週8休を求め、規模が小さい工事は、受注者に推奨しています。また、パトロールや緊急対応を行う維持工事は閉所が困難なため、交替制の仕組みを導入するなどしています。

     

     これに伴い工期や経費を補正するなどの環境を整え、直轄では約5割の工事で週休2日が達成できている状況です。

     

     また、施工時期を平準化するためには、発注者の役割が大変重要となります。多くの公共工事は、年度の予算成立を待って入札手続きを進めているため、着工が夏以降となり、その結果、年度前半の閑散期と後半の繁忙期が繰り返され、繁忙期には十分な休日の確保ができず、長時間労働の要因ともなっています。このために、予算や財政部局とも連携し、債務負担行為の活用や、繰越制度、余裕期間の設定など、建設現場の閑散期と繁忙期の差をできるだけ無くし、平準化させていくための取り組みを進めています。

     

     新・担い手3法の施行を受けて、建設業を魅力あるものにする取り組みは、自治体でも徐々に取り組みが広がってきています。しかし、全国に47万ある建設業の登録者数の約7割は中小企業で、その多くは市町村が発注する災害復旧などの工事を担っており、今後、市町村での取り組みが重要となっています。

     

     このため、近畿地方整備局では、週休2日や平準化などの取り組みを管内の市町村発注工事に広げていくために、発注者間で連携し、統一指標や目標値を設定し、自治体職員へのアンケートやヒアリングなどのフォローアップ等を通じて、建設業全体の働き方改革が推進されるように引き続き取り組みを進めてまいります。

     

     コロナ禍での災害対応を通じて、避難所における感染防止対策をはじめ、避難を長期化させないために国土強靱化の取り組みが重要となっています。また、緊急事態宣言下においても、生活等に必要な物流はしっかり機能しており、それを道路が支えていたということも明らかとなりました。これらのインフラ整備を支える建設業の方々にやりがいと魅力が感じられ、将来に希望が持てるような仕事となるように発注者間で連携した取り組みを引き続き進めてまいります。

     

    【日建連 20年度上期フォローアップ報告/4週8閉所は全体の約4割に拡大/コロナ禍でも目標達成へ加速】

     

     「4週8閉所」「4週6閉所」とも着実に進展――。日本建設業連合会の週休二日推進本部(井上和幸本部長)が、2020年12月にまとめた「週休2日実現行動計画に基づく2020年度上半期フォローアップ報告書」によると「4週8閉所以上」が約40%、「4週6閉所以上」は70%超に達し、18年度上期(4週8閉所23.6%、4週6閉所59.7%)と比べてそれぞれ10ポイント以上増加するなど、着実に成果を上げている。地域別の数値はないが、全国各地とも取り組みは進んでいる。

     

     調査期間は20年4月から9月までで、日建連会員企業142社のうち102社から回答を得た。回答率は71.8%。請負金額1億円以上または工期が4カ月以上の事業所(現場)とJV工事のスポンサーを対象とし、現場の数は最終的に土木が6293カ所、建築は6534カ所で合計1万2827カ所に上った。閉所状況は半期(26週)の合計閉所数を、1週当たりの閉所数に換算して算出した。

     

     その結果によると、土木・建築を合わせた全体の4週8閉所以上の達成率は37.9%。19年度上期と比べ約8ポイント伸びている。一方の4週6閉所以上は72.4%。19年度上期比で約4ポイント増加している=図。

     

     「土日閉所を基本とした作業所」では4週8閉所以上が41.3%、4週6閉所以上が76.5%だったのに対し「土日閉所を基本としない作業所」は4週8閉所以上が27.2%、4週6閉所以上が59.5%にとどまる。

     

     工種別で見ると土木の4週8閉所以上が44.1%、4週6閉所以上が78.7%。建築は4週8閉所以上が31.9%で、4週6閉所以上が66.3%だった。民間主体の建築よりも公共主体の土木の方が、閉所率が高い状況が依然として続いていることがわかる。

     

     閉所率の分布(最頻値)は、4週8閉所以上は土木が30%以上60%未満の範囲に半数以上が集中している。建築は「ゼロ」が25社ある一方で、30%以上の企業も増加傾向にある。4週6閉所以上となると土木は80%以上、建築が50%以上に多く分布する。

     

     20年度通期でみるとコロナ禍が閉所状況にどのように影響するかは不透明だが、計画の目標達成に向け、日建連は今後も取り組みを加速させる方針だ。

     

     調査にあわせ寄せられた会員企業の感想からは、週休2日促進が一筋縄ではいかない状況も垣間見える。「民間工事においては多くの施主は週休2日に対し関心が薄く契約工期設定が厳しい」「(20年10月の)改正建設業法施行以前に受注した工事、特に鉄道事業で開業日が決められている工事については工程確保、前倒しを厳しく求められている。4週8閉所の実施が困難な状況で、発注者側にも理解を得にくい実情がある」といった声があったり、「規制等、集中工事および渇水期工事については週休2日の実施は困難」「供用時期が公表された路線の事業についての土曜閉所は事実上困難」「鉄道工事の特殊性から、当分は週休2日について土日にこだわらないこととした」という意見もあった。

     

     また、コロナウイルスの影響について「例年よりゴールデンウィーク休暇が長期となる傾向があった」「工期厳守に縛られて現場を閉所できない状況もあった」といった意見が寄せられた。

     

     「週休2日実現行動計画」では、週休2日を建設業界に定着させるため「週休2日は土日閉所を原則」「日給月給の技能者の総収入を減らさない」「適正工期の設定を徹底する」「必要な経費は請負代金に反映させる」「生産性をより一層向上させる」「建設企業が覚悟を決めて一斉に取り組む」などの基本方針を設定。具体的には工事の進捗状況共有や工期ダンピングの排除、後工程の施工期間に配慮した適正工期設定といった取り組みを始め、優良協力会社に対する下請け発注の平準化や社員化・月給制への移行支援、また重層下請け構造の改善や建設キャリアアップシステムの普及促進なども含まれている。

     

     工期に関する基準については、20年10月施行の改正建設業法で適正な工期設定が求められた。これを受けて新たに「工期に関する基準」が制定、著しく短い工期での請負契約が禁止された。違反した場合には国土交通大臣などが工事発注者に対し勧告を行うことができると明記されている。

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    掲載日: 2021年2月15日 | presented by 建設通信新聞

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