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  • 作業時間減で労務費割増/国交省が現場への移動時間で対策/土木工事費積算要領を改定

    【都道府県・政令市にも参考送付】

     

     時間外労働の上限規制と関連して問題となっていた現場までの移動時間の取り扱いで、国土交通省は新たな対策を打ち出した。18日に『土木工事工事費積算要領及び基準の運用』を改定し、資機材などの日々の回送で作業時間が減少する場合に別途、積算で考慮することを明記した。働き方改革への対応と作業時間の確保のはざまに立たされていた中小建設企業に、両立する糸口が示された。

     

     土木工事工事費積算要領及び基準の運用の改定は2021年度から適用する。18日に地方整備局などに通知するとともに、同省ホームページで公表した。各都道府県・政令市に参考送付し、市区町村には都道府県からの周知を依頼している。

     

     改定内容のうち、工事費の積算の直接工事費の注意事項に、「常時作業帯の設置が困難な地域での路上工事において、現場条件により資機材等の日々回送が発生することで作業時間に影響を及ぼす恐れがある場合の積算については、別途考慮すること」という記載を追記した。

     

     実際に作業時間が確保できないと認められる場合の対応として同省が想定するのは、労務費の補正だ。直轄の基準では、移動時間を考慮した作業時間に応じた労務費の設計変更が規定されている。1日の作業時間が7時間から7.5時間以下の場合は1.06、4時間から7時間以下の場合は1.14の補正割増し係数を設計労務単価の基準額に乗じることとしている。

     

     例えば、直接工事費が約1億円の砂防・地すべり工事で、時間的制約を著しく受ける場合(1.14補正)は、工事価格で約200万円(1.3%)増加する。

     

     直轄の基準で対象としているのは、山間部など現場条件によって作業時間に制約を受ける工事のほか、交通量の混雑する時間帯を避けた施工を行う場合としているが、今回の改定で盛り込まれた日々の回送による影響でも適用は可能との解釈を示している。

     

     直轄工事でそうした事態が生じた場合に対応するという意味に加え、多くの自治体が参考としている基準に明確に位置付けることで、受注者が対応を求めた場合の根拠とすることができるようになる。

     

     自治体発注工事を多く受注する中小建設企業からは、働き方改革と関連して移動時間に関する課題が指摘されていた。建設現場の作業時間は一般的に午前8時30分から午後6時まで(朝礼、規制撤去を含む)で、休憩時間を除くと丸々8時間働いており、仮に前後の移動時間が労働時間と判断されれば、毎日の往復計2時間以上がそのまま時間外労働となってしまう。

     

     現場に技能者が運搬する資材などがない職種であれば、自宅・現場を直行・直帰させて“通勤時間”とする対応も可能だが、小型クレーンオペレーターなど現場に直行・直帰できない職種は多い。

     

     勤務時間を8時間以内に抑えようとすると、その分、作業時間を削らざるを得なくなり、日進量の減少や効率性の低下による経費増大、最終的には工期に間に合わないといった課題に直面していた。

     

     今回の対応によって、移動時間の取り扱いに端を発する時間外労働問題が一気に解決された訳ではないが、国交省として中小建設企業が抱える課題に向き合った1つの結果と言える。時間外労働規制の建設業への適用が迫っていることはもちろん、中長期的な担い手確保の観点からも、受発注者双方が継続して解決策を模索していく必要がある。

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    掲載日: 2021年2月19日 | presented by 建設通信新聞

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