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  • 労務単価引上げで青木国交省局長/持続可能性の分岐点/行政・業界の覚悟問われる

     国土交通省の青木由行不動産・建設経済局長は22日、3月から適用する新たな公共工事設計労務単価について、日刊建設通信新聞社など建設専門紙のインタビューに応じた。新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、前年度を下回った単価は据え置きとした特別措置を念頭に、「(単価算出手法を変更した)2013年度以来で最大の危機だと思っている。持続可能な建設産業であるための分岐点にいる」と強調。「公共事業の事業量が増えるという環境と今回の据置特例を生かして、賃金引き上げの流れを再加速できるかの正念場だ。行政と業界の覚悟が問われている」と業界全体に対応を呼び掛けた。

     

     20年10月に実施した労務費調査では、全体の単価のうち、42%がマイナス改定になるという調査結果だった。18年度と19年度で大幅な事業量の減少はなかったことを考慮すると、先行きの不透明感や民間発注の停滞など新型コロナが影響した可能性が高いと判断した。

     

     青木局長は、「一時的に新型コロナの影響を受けた可能性がある結果を新単価とすると、多くの“マイナス予定価格”をつくることになる。新単価での発注は賃金下落のスパイラルにつながる」と特別措置の導入に至った経緯を説明。「20年第3次補正予算と21年度予算を執行することを考えると、マイナス予定価格では“利益なき繁忙”のような世界になってしまう」との認識を示した。

     

     ただ、問題の根本は特別措置で解消した訳ではない。足元1年間のマイナス予定価格避けられたものの、「42%の地域・業種で賃金レベルが下がったということは事実だ。原因が何であれ、この状況が続けば、かつての『賃金が下落し、労務単価が下落し、利潤が確保できなくなり、さらに賃金が下落する』という“負のスパイラル”に再び陥りかねない」と警鐘を鳴らす。

     

     その意味で青木局長は「13年度以来の最大の危機」や「建設業の持続可能性の分岐点」という強い言葉を使う。「賃金引き上げの流れを再加速できるかが、ことしの最大のテーマだ。行政、元請け、専門工事、技能者のすべての建設産業関係者の覚悟が問われている」と重ねて口にした。

     

     今後の取り組みについては「現在の危機的な状況とそれを乗り越えなければならないことの重要性を行政・業界関係者と共有したい。各団体と連携を密にして、それぞれの立場でこの危機を乗り越える具体的な行動を起こすよう求めていきたい」とした。

     

     「例えば、行政は公共事業量の増加傾向を堅持する。これから数年間(の事業量)は大きい意味を持つ」と力を込めた。適正な予定価格の設定やダンピング(過度な安値受注)対策の強化も挙げた。

     

     元請けには「官民発注問わずダンピングを厳に慎むこと、下請けをたたかずに見積もりを尊重すること」を要請。「場合によっては賃金の引き上げを下請けに指導することも踏み込んでほしい」と求めた。

     

     専門工事には「何と言っても技能者の賃金を上げること。そして、それを見積もりで請求する。(下請企業)単独では難しいことが過去の経験から分かっているので、横の連携を取りながらスクラムを組んで取り組まなければならない」とみる。

     

     建設キャリアアップシステムや標準見積書の改定をこの局面で進めることも重要だとし、「関係者が議論してあらゆる施策を総動員しなければならない。危機的な状況を共有し、新しいフェーズに入れるように努力していきたい」と語った。

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    掲載日: 2021年2月24日 | presented by 建設通信新聞

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