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建設論評・建築の発注者の課題(上)
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>建築の発注方式の多様化が進んでいる。多様化故に問題も複雑化し、さまざまな混乱が起こってきているように思う。最近のいくつかの事例でも審査が中断するような事態も起こっている。とりわけ、DB(デザインビルド=設計施工一括)に対する問題は、設計者にとっては悩ましい問題として捉えているばかりか、発注者の利益を損なうことにもなりかねない問題でもあるからである。
公共工事については、利益相反を起こさない設計施工分離が建前になっていたが、民間等の発注状況にも見られる設計施工一体型で「進めるためのメリット」を受けて、次第に発注者は、設計者と施工者を同時に決めて、両者の共有すべき課題を最大化させるという名目で、いわゆるDBという発注方式が多く採用されることになってきた。欧米で発案されたDBは日本に導入されて久しいが、欧米では設計者の独立性は極めて高く、DBといえども、設計者と施工者の立場や役割はそれぞれに担保されているのが現実である。
DBの日本での採用では、当然日本型があってもしかるべきであろう。日本への導入のきっかけは、これをメリットというべきなのか、工事の入札の不調回避(想定価格内に抑えること)と工期厳守を確実化し、設計者と施工者を同時に選ぶという発注方式が、昨今の日本でのDBの主要な考え方である。
しかしながら、こうした発注者の考えは、工事をスムーズに進行させ着地させるための外形的技術的手法に過ぎない。発注者が望む建築の内容や品質を問うものではない。ここに設計者のみならず、発注者の思いが反映しきれない問題が発生していると考える。
発注者のDBに対する捉え方の迷いなのか、受諾者に期待する課題が見えないばかりか、審査体制の不備もあって、極めて多くの羅列的課題が散りばめられ、発注者の真意が見えないばかりか、受諾者は戸惑うばかりであるというのが現実である。
DBには基本設計を事前に設計者が行い、後に設計者と施工者が一体になって進める方式と、当初から、すべての設計行為と施工が一体になって進める方式がある。そもそも日本での基本設計の定義や、客観的裏付けとなる根拠はないために、設計行為自体を分離(基本と実施)することが曖昧(あいまい)さを残していることにもさらなる議論があるところである(現在、国土交通省で検討が進んでいるBIMのワークフローにおいて基本設計と実施設計のラップした考えがそうした矛盾を回避する試案が試みられている)。設計に求める課題と施工(技術)の問題を同時並列に評価することの難しさが認識される中、プロポーザル(選定)の段階で、設計に求める課題や技術のレベルと工事価格などを同列に評価する物差しがいかに困難であるのか、むろん審査側の難しさと、同時に応募者の側も困難を強いられている。とりわけ、設計者は建築の内容と品質について最大の回答を心掛けているからである。それは公共建築に求められる最も重視される課題でもあるからである。故に、それぞれには高い専門性の見識をもった審査体制が不可欠となるのは当然である。(児)
残り50%掲載日: 2021年2月25日 | presented by 建設通信新聞