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存在感高まる「持続可能性」/ガバナンス・コード/課題は無形資産など非財務評価/建設業界にも広がる新資金調達
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>上場企業や大会社を中心に影響を与える、東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」の今春の改訂に向けた議論が急ピッチで進んでいる。金融庁と東証による「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンスコードのフォローアップ会議」が舞台。2月に開かれた会議で焦点の1つとなったのは、ESG(環境・社会・企業統治)要素を含む中長期的な持続可能性(サスティナビリティー)を測るための知的財産といった無形資産、いわゆる非財務情報の価値化と重視だ。社会・環境問題への取り組みを重視する建設企業にとっても企業評価向上は受注拡大の追い風と映る。
前回、2018年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂で非財務情報に、ESG要素に関する情報が含まれることは明確化されていた。ただこれまで、ガバナンスや社会・環境問題に関する事項については定性的な説明で、ひな形的な記述や具体性を欠いた記述になっており、付加価値に乏しい場合も少なくないとの指摘が挙がっていた。
改訂するガバナンス・コードで、これまで以上に細かくESG要素を含むサスティナビリティーに関する情報の開示を求めようとしているのは、既に国際的にさまざまな団体がESG情報を開示する枠組みを策定・公表しており、投資家によるESG投資が増加するなど、世界の潮流にもなっていることが理由だ。
非財務情報の具体性を欠いた記述で企業評価をすることが難しいとのこれまでの課題についても状況は変わりつつある。事実、20年9月の世界経済フォーラムは、ESGに関する定量的指標と、推奨される開示に関する報告書を公表した。2月の会合で金融庁は、ことし1月のダボス・アジェンダで日本企業7社を含む61のグローバル企業が推奨された指標に基づく報告に取り組む意思を表明したことを説明した。
2月の会合に参加した経済界のメンバーからは、「(ESGの)国際開示基準づくりが進んでいることは承知している」と前置きした上で、「多様な取り組みに対応できるような検討が必要」との指摘があった。
また別の経済界メンバーは、「今後、無形資産の価値が高まるのは確実。非財務情報の中で知財の開示が必要だ」と、知的財産など非財務情報開示に伴う企業評価に強い期待を寄せた。
そもそも企業の価値評価としては、DCF法(割引キャッシュフロー)やEBITDAマルチプル法(企業価値を会社の収益力で割って比較する手法)などが存在するほか、株主価値評価としては株価がある。しかし、特許だけでなくノウハウや顧客基盤など、流動資産や固定資産に含まれない知的財産は、バランスシート(貸借対照表)に表れない“見えない資産”であり、明確な企業価値評価になりにくかった。
価値評価が難しい無形資産が評価されることは、今後の受注競争で有利に働くとみる建設企業にとっては大きな関心事だ。これまでの資本効率や財務情報重視の流れから、非財務情報が定量評価されることで、ESG投資に力点を置き始めた投資家や金融機関の存在を意識した民間発注者の行動に影響を与える可能性があるからだ。
企業に新たな取り組みを促す、社内でのサステナビリティ委員会の設置に対しても、「委員会設置が盛り込まれた場合、企業は横並びになり結果的にサスティナビリティーの取り組みがレッドオーシャン(激しい競争)になりかねず、配慮が必要」との注文がついたほかは、賛成の意見が大勢を占めた。
既に建設産業界でも、ESG、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みを担保に資金調達する、サステナビリティボンド、グリーンボンド、使途限定ローンなどを活用して資金を調達する動きが民間企業や独立行政法人などに広がっている。
残り50%掲載日: 2021年3月4日 | presented by 建設通信新聞