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  • 連載・次世代建設経営戦略研究講座(9)-激変の時代に向け経営戦略の再構築を考える-

    【寄稿・次世代建設産業モデル研究所所長 五十嵐健氏/国際基準とIT化への対応が産業の未来を拓く/BIMクラウド活用による維持管理の効率化】

     

     「令和のストック利活用時代」をテーマに始めたこのシリーズも3月で1年を迎える。この1年、コロナ禍もあり企業活動にはさまざまな制約はあったが、デジタル革命は確実に進行している。

     

     その中で現在、今年度で終了する第4次社会資本整備重点計画の後継となる第5次の計画が進んでいる。これはインフラ施設を土木・建築に設備を含めた全体を社会資本としてとらえ、その建設から維持管理までのプロセスを一貫したシステムとして構築することを目指している。

     

     これまで建設産業における業務は大きく土木・建築に分けられ、さらにそれをつくる建設業と活用維持管理をする施設管理者に分かれ、それぞれが全体最適を目指して活動してきた。しかし今後はこの統括スキームがストック利活用時代の基本的な産業の枠組みになる。その形は4月には示されると思われる。

     

     こうした産業プロセス統一の背景には、ストック型社会とデジタル革命進行への対応がある。日本でも近年、インフラ施設の高度化とストック量の増加によって建設と維持管理の事業規模が対等になり、その経済効果も整備と利活用が半々になってきている。

     

     伝統産業である建設産業には従来から継承してきたさまざまな見えない壁があり、それがデジタル対応の障害になっているが、これを国際基準やIT時代の変化に合わせることで日本企業の新たな発展につながる。

     

     特に5G(第5世代移動通信システム)時代の建設産業で期待される分野としては、自動運転車による安全性・利便性の向上とインフラ管理への情報技術の活用による国土強靱化がある。豪雪や豪雨災害は年々激しさを増し日本の重要課題になっているが、現地個別対応が中心となるその活動面において、5G時代の到来によるパソコン処理能力の飛躍的な向上はその強力な推力になる。

     

     前回3G、4G、5Gの各段階におけるパソコン活用の進化を図示したが、それを見ると5G時代にはその進化がクラウドによる履歴情報の蓄積とAI(人工知能)解析の方に移行する。それはとりもなおさず日本産業の復権につながると考えている。

     

     欧米の大手企業は以前から科学的経営を目指し、AIやデータマイニングの活用に注力してきた。これが行動心理学やマーケティング&金融工学の活用につながっている。一方、日本はこれまで広いモノづくりの分野で、その生産管理や性能管理の部分で効率的な情報システムの確立・活用を行ってきた。そうした要素技術を組み合わせて、組織的に運用していけば、5Gの時代のシステム構築も夢ではないだろう。

     

     使用期間の長い土木構造物や建物の維持管理の分野で、長期間の維持管理記録や改修履歴の解析・学習にデータマイニングを活用すれば、構造物の性能向上や維持管理の効率化に役立つと述べたが、今回はその事例を紹介したい。

     

     それにより、周回遅れの状態にある4G時代のグローバル企業の活躍を凌駕できる期待がある。これまで述べてきたソニーやトヨタの5G時代に向けた戦略はまさにそれを目標としている。

     

     私たちも、既存ビルの維持管理の高度化と省力化を目指して「オーナーズBIM研究会」を立ち上げ、ささやかな研究活動を続けてきたが、まだ最初の1年間なのにもかかわらず期待以上の成果を上げることができた。

     

     これは複合賃貸ビルの維持管理データをAIに学習させ、そのマイニング分析をBIMで行い、リアル作業の高度化活動を組み合わせる実証研究で、その構成内容はインフラ維持管理の効率化プロジェクトと同じである。

     

     その基礎となる不動産クラウドである「@プロパティ」は既に20年前から実用化されて改良を重ねており、いまでは業界のデファクトスタンダードになっている。モデルに使ったビル管理のデータも25年の詳細な記録がしっかり保管されている。それをAIに学習させ、BIMモデルを作りデータマイニングするシステムは早稲田大学で行った。担当した若手研究者の能力は高く期待以上の成果が出た。また、BIMの活用による可視化の有効性も検証できた。

     

     実際に取り組んでみて、5G時代の日本の活躍可能性が高いことを確信できた。関心のある方は第7回建築BIM環境整備部会(2月12日開催)の資料を閲覧願いたい。

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    掲載日: 2021年3月10日 | presented by 建設通信新聞

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