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Focus・取締役会
// 本文の表示 画像がセットされていない場合は、画像分の余白ができてしまうのでtxtクラスは使わない。 ログインしていない場合も画像は表示しない。?>【新たな対応への決断 期限迫る/監督と業務執行の役割明確化/上場建設100社超 統治指針改訂横目に】
東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)改訂へ向けた金融庁などによる有識者会議の議論を横目に、会社法で定められた会社の運営や意思決定などを行う株主総会や取締役、代表取締役、取締役会、監査役など「機関」を組み合わせる「機関設計」の変更を視野にした定款変更が相次いでいる。企業統治指針改訂で、監査役の独立性担保として独立社外取締役・役員数拡大を求める可能性が高く、最終的には2022年4月から新たに発足する「プライム市場」にも影響を与えるかもしれないからだ。
3月上旬、金融庁と東証が開いた企業統治指針改訂へ向けた有識者会議で議題の1つとなったのが、監査(業務と会計)の信頼性と内部統制やリスクマネジメント。会議出席者からは取締役会や監査役会が行うべき責務として体制整備強化を求める声が相次いだ。
その中で現行の体制についても「監査役は役員人事の一環として決めている」「経営を監督する役割の監査役の人事が執行側にある」など監査役の独立性に疑問を呈する意見も続いた。
金融庁が提示した資料によれば、東証1部企業のうち1447社とほとんどの上場企業は「監査役会設置会社」であることが浮き彫りになった(20年9月時点)。建設企業もほとんどが監査役会設置会社だが、大手や準大手ゼネコンの中には任意の指名・報酬委員会を設置するケースもある。
会社法上の機関設計の概要
・取締役会は取締役の職務執行を監督する。また、重要な業務執行の決定は自ら行う必要がある。
・監査役には取締役会での議決行使権限はない。
・東証1部企業中1,447社(2020年9月)一方、取締役会の中に指名委員会や報酬委員会、監査委員会を設置し、取締役会と執行の役割を最も厳しく分けた「指名委員会等設置会社」は63社にとどまった。建設セクターで指名委員会等設置会社に移行している企業はゼロ(日本取締役協会・20年8月時点)。
そもそも通常の企業(監査役会設置会社)の場合、取締役も業務執行する一方で、取締役会が監督、監査役は監査する形。監査役には取締役会での議決行使権限はなく、取締役会は重要な業務執行の決定も自ら行う。このことが、取締役会が最高意思決定機関であると誰もが思っていた理由だ。
しかし、欧米の上場会社のガバナンスの仕組みを参考に導入された「指名委員会等設置会社」での取締役会の役割は、監査役会設置会社とは大きく違う。指名委員会等設置会社では、取締役は3つの委員会(指名・報酬・監査)の活動の中で経営の監督と監査を行うのが役割。取締役会は、重要な業務執行の決定を(代表)執行役に委譲、執行役が業務執行を行う。つまり指名委員会等設置会社で取締役は業務の執行ができないことになる。
ここでポイントの1つとなるのが各委員会の取締役だ。各委員会の人数は3人以上、過半数は社外取締役と決まっている。つまり通常の企業に多い、社内取締役が占める割合が高い監査役会設置会社の取締役会のように、重要な業務の最高意思決定機関とはならない。監査等委員会設置会社の取締役の機能も、指名委員会等設置会社に似ており、取締役会は監督機能が中心となっている。
上場する建設系企業で、監査等委員会設置を念頭にした定款変更や任意で委員会設置を決めるなど取り組みが相次いでいるのは、企業統治指針改訂で取締役会の役割明確化や、監査役・監査役会の独立・客観性担保がより強く求められることが確実であることと、関連して22年4月からの新市場移行へのスケジュールが迫っているからだ。
現在1部上場企業が移行を目指すとみられるプライム市場など3市場への移行基準日は6月末。7月末をめどに新市場区分の上場基準に適合しているかどうかを各企業に通知。その後、9月から12月にかけ上場企業は市場を選択し基準適合の計画書を開示し22年4月から新市場へ移行する。
このため、企業にとって最初のハードルは移行期準備の6月末となる。3月期決算企業が6月下旬の株主総会で定款変更をしたり、ガバナンス強化へ任意の委員会設置など組織見直しを急いでいるのは、新市場移行スケジュールを見据えているからだ。これまでの親子上場解消へそれぞれの事業会社の上場を廃止し、今秋、建設セクターでは初とみられる指名委員会等設置会社として持株会社設立をある建設企業が公表したのも、新市場移行を見据えたものとみられる。
入社後にさまざまな業務を経験、その中で頭角を表した社員が管理職から取締役、さらには社長まで上り詰める「会社双六」は現実にあったし、経営の最高意思決定機関である取締役会のメンバーである取締役は、目指すポストの1つだった。
しかし働き方改革とコロナ禍で拡大するテレワークなどの新たな勤務形態は、欧米型の「ジョブ型雇用」への移行を加速させようとしている。一方で、企業統治のあり方も欧米型にさらに近づく。企業も投資家もグローバル化しているからだ。その中で建設企業はどのような判断を今後していくのか。決断の時期は刻一刻と迫っている。
残り50%掲載日: 2021年3月18日 | presented by 建設通信新聞