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  • 連載・次世代建設経営戦略研究講座(10)-激変の時代に向け経営戦略の再構築を考える-

    【寄稿・次世代建設産業モデル研究所所長 五十嵐健氏/5G時代に期待される産業の飛躍的進化/インフラメンテ事業の高度化サイクル】

     

     ことしは東日本大震災から10年の節目の年に当たり、ハード面の復興は一定の区切りになる。しかし、先日も震度6強の地震が発生し、気候災害も多発しており、国土強靱化は国の重要課題になっている。

     

     国土強靱化の推進に向けて5G(第5世代移動通信システム)時代のデジタル革命は強力なエンジンになる。今回は今年度のシリーズの最終回として情報技術の進歩によるインフラメンテ事業の進化について考えたい。

     

     現在、作成が進められている第5次社会資本整備重点計画には、▽防災・減災が主流となる社会の実現▽持続可能なインフラメンテナンス▽持続可能で暮らしやすい社会の実現▽経済の好循環を支える基盤整備――の4つの重点目標のほか、新たに「インフラ分野のデジタル・トランスフォーメーション(DX)」「インフラ分野の脱炭素化・インフラ空間の多面的な利活用による生活の質の向上」の2点が加えられた。

     

    4877インフラメンテナンスでの先端技術・データ利活用

     

     インフラ分野へのデジタル情報技術の活用については、DXについて考えたい。

     

     デジタル化というと、日本では技術屋の領域と考えがちだが、欧米ではコンピューターの業務活用は経営分野で、エンジニアはその指示に従っていかに目的にフィットしたシステムを開発するかが課題になる。

     

     エンジニア比率の高い建設産業分野では、従来からPCソフトは社内の技術者が自分の業務ニーズや思考に合わせてつくることが多く、これが汎用性や発展性に欠ける部分最適型のシステムになり、大企業に専門職デジタルワーカー層が少ない要因になっている。そのことが近年では業務効率疎外の要因にさえなっている。

     

     いま日本の企業に必要なのはデータマイニングに強い経営者層である。欧米では既にデータマイニングは経営者の必須能力になっている。それは人の思考回路とPCの思考回路が似ているためで、それを会得するために欧米のビジネスパーソンの間では禅やウェルネスの訓練をする人が増えている。

     

     以前この稿で、5G時代には長時間使う建設構造物の維持管理データ処理の改善が飛躍的に向上し、結果建物の価値や劣化診断、その改善活動に利用することが有望分野だと書いた。それを実感していただくために、インフラメンテナンス事業における先端技術・データの利活用の図をつくった。

     

     これは国交省が2018年に示した「新技術・データを活用したインフラ維持管理の効率化とその展開について」を基に再編したもので、前回載せたBIMクラウド活用による維持管理効率化の社会実験(以下社会実験)の図とほぼ同じ構成になっている。

     

     計画段階でのビッグデータ解析、維持管理の点検・診断にロボットやAI(人工知能)を使うこと、修繕などの対策でICTの導入を重視していることは、橋梁や治水施設の構造には共通点が多く、公共施設で標準化が進んでいるため、計画段階でビッグデータの解析結果が生かしやすいともあるが前回述べたのは単体建物の社会実験事例であり、今後建築物の事例を増やしていけば同様にビッグデータ解析が利用しやすくなると考えられる。

     

     事実、スマートセンサーを活用した建物の残余耐震性判定システムでは、全国の高層建物を一括して処理するシステムの開発が進行中である。

     

     また、社会実験では管理を人手で行い省力化・効率化の検証をしているが、今後その管理がロボット化、自動化されれば、同じ方向に進んでいく。

     

     修繕などについても同様の理由で、将来的にはICTの導入が進むだろうが、いまは実証実験の初年度であり、維持管理データのAI化とその試行分析の段階で、人力に依存する部分が多かった。ただ、つながる5Gの時代には、土木・建築という日本独自の業務区分も解消されることが考えられ、インフラメンテナンス業務の効率化がさらに進むことが期待できる。

     

     以上1年にわたり激変の時代に向けた事業戦略について考えてきた。今後はこの稿の内容を深耕するため、早稲田大学で行っていたプロジェクト研究、次世代建設産業モデル研究会の再開準備を進めております。 (おわり)

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    掲載日: 2021年3月24日 | presented by 建設通信新聞

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