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  • ドローンで崩壊斜面撮影/防災事業で全国初/無人地帯で自動飛行

    【作業時間短縮・安全性向上/近畿整備局】

     

     近畿地方整備局は、全国で初めて防災事業でのドローンのレベル3飛行に取り組んでいる。23日には奈良県十津川村で斜面崩壊現場を撮影した。作業員が直接向かい、撮影するよりも大幅に時間を短縮できるほか、安全性の向上にも期待がかかる。同局は、今回の結果を基にマニュアルをとりまとめ、全国への展開を図る。

     

     ドローンの飛行は4段階に分けられており、レベル1が目視内の手動操縦、レベル2が目視内の自動飛行、レベル3が無人地帯での目視外自動飛行、レベル4が都市部を含む有人地帯での目視外自動飛行となる。今回のレベル3飛行は、物流分野では実績があるが、防災事業では全国初の試みとなった。実際の航行には技術的なハードルと航空法の制約が大きく実現していなかった。

     

     撮影に使用したドローンは中継機と撮影機の2機。どちらも自律制御システム研究所が製造する「ACSL―PF2」を使用した。飛行速度は毎秒10m、カメラなどを搭載した状態で25分の飛行が可能だ。毎秒10mの風まで対応できる。920メガヘルツの機体制御情報と5.7ギガヘルツの映像情報を中継機を介し、送受信する仕組みとなる。

     

     現場は、2011年台風12号の紀伊半島大水害により、深層崩壊が発生した同村の栗平地区。山奥の険しい地形だが、直線的に電波を送受信する必要があることと、航空法では目視外で自動航行する場合、対地高度が150m未満に制限されるため、中継機が必要となる。中継機は目視範囲内の対地高度300m地点に留め、電波が届く高さを確保した。

     

     実際の飛行は、崩壊斜面の全体撮影を含め、6㎞の行程を15分で終了した。作業は同局紀伊山系砂防事務所から業務委託を受けた中電技術コンサルタントが担当した。通常、作業員が徒歩で向かう場合は往復だけで約2時間かかるという。

     

     これまでは、出水後にヘリコプターでおおよその状況を確認した後、現地に作業員が向かっていた。レベル3飛行が可能となったことにより、土砂災害の発災後、斜面の崩壊状況をすぐに確認できる。ヘリコプターよりも撮影対象に近づけることもメリットとなる。カメラを専用のものに切り替えれば、3次元データも取得でき、通常の施設点検にも生かすことができる。

     

     将来的にはドローン2機とパソコン2台、作業員2人の体制で作業できることを目指す。既にレベル2飛行までのマニュアルは整備しており、今回の結果を基にレベル3飛行もマニュアルに盛り込む。同局大規模土砂災害対策技術センターの柴田俊氏は「技術的には手軽にできるようになった。これからは航空法の制限が課題となるので、事例を増やし、安全性を担保したい」と意気込みを示す。

     

     栗平地区の大水害で崩壊した土砂量は2384万6000m3、河道閉塞によって発生した湛水池は満水時に722万8000m3に達した。現在は、砂防堰堤を整備しており、2号堰堤を中和コンストラクションが施工中だ。

     

     同事務所管内では、ICT建機による無人化施工にも取り組んでおり、20年2月には地域建設企業を対象とした無人化施工訓練も実施した。21年度には自動化施工に挑戦する見通し。

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    掲載日: 2021年3月25日 | presented by 建設通信新聞

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