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  • 建設論評・合従連衡の悪夢

     建設各社のオリンピック後を見据えた対応が進んでいる。人口減少と需要減少にどのように向き合うか、どのように成長戦略を描くかに対する方向性が像を結びつつある。アフターコロナに意識が偏りがちだが、企業経営の観点からは、こちらが対応の本丸といえる。キーワードはDX(デジタルトランスフォーメーション)だ。この言葉、既に食傷気味とは思うが、まずはおさらいしておこう。

     

     DXは、2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念である。その意は「進化したデジタル技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革すること」とされ、「既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすもの」と規定。しかも、その取り組みは一企業の枠に収まらず、結果は社会的影響を生み出す。つまり社会的影響力をもたらすのがDX、いわゆる革新的技術というわけである。

     

     わが国では18年5月、経済産業省が有識者で構成する「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設置し、ガイドラインがまとめられている。建設分野では国土交通省が21年度から、建設現場の労働生産性向上につなげる技術開発に乗り出す。DXへの注目度は、いまや国家規模に拡大しており、もはやビジネスシーンでは軽視できないものになっている。

     

     技術開発に限らず、企業経営の方向性を左右するのは行政方針というのは定番だが、DXに関しては建設各社の取り組みが行政に先んじている。『建設通信新聞』のデータベースによると、DX関連の記事の最初は16年11月29日付である。翌17年1月には日立ビルシステムの佐藤寛社長(当時)が年頭訓示で「デジタルトランスフォーメーションに挑む年」と言及したのを皮切りに同年中に12件、18年に15件、そして19年には37件と倍増し、20年はさらに399件と10倍強となり、ことしは3カ月で既に266件の記事を配信、DX関連記事が紙面を飾らない日はない状況にある。

     

     建設業界が見据えているのは、人口減少で慢性化する労働者不足を解決する手段として建設現場の生産性を高め、働き方改革を進めて労働環境を改善し、次世代の担い手も確保という近未来である。そのツールの先頭は、現状はBIMなどだが、意識は既にその先にある。換言するなら、ICTやAI(人工知能)など最先端のデジタル技術活用を包含した取り組みがDX対応ということになろうか。

     

     こうした技術革新に備えた異業種との連携も増えている。また、連携を促進しやすくする目的で企業グループを再編する動きも出始めた。単独での対応が難しければ提携やグループ統合などを志向するのは当然の成り行きでもある。

     

     建設業界は長く辛い市場停滞のあおりを受けて体力勝負が常態化し、その結果として合従連衡という厳しい時代を経験した。一方、人口減少に見合った市場規模となるのは当然のことである。受注環境が先鋭化するのは間違いない。その対応の1つがDXであるとするなら、波に乗り遅れた結果として再び合従連衡の悪夢が訪れるかもしれない。 (惠)

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    掲載日: 2021年3月30日 | presented by 建設通信新聞

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